猫の慢性腸症(CE)とは
慢性腸症( CE、ICE:Idiopathic Chronic Enterocolitis)とは、腸に炎症が起こり、およそ3週間にわたり下痢や嘔吐などの消化器症状が続く病態を総称して言います。
慢性腸症は、腸症の種類によって原因は異なりますが、中には原因不明のものもあります。また、治療方法や完治が可能かどうかについても、下記で紹介するどの種類に該当するかによって変わってきます。
猫の慢性腸症の症状
- 下痢
- 軟便
- 嘔吐
- 食欲不振
- 体重減少
- 体重増加
- 血便 など
症状については、基本的には下痢や嘔吐、食欲不振などが挙げられます。また重症化すると、腸の炎症がひどくなって出血し、黒っぽい血便が見られることもあります。
猫の慢性腸症の検査
画像引用元:獣医師両開発株式会社 VMDP
慢性腸症は他に大きな病気の合併症として併発している場合もあるため、上記以外の症状や異変も現れる可能性があります。
慢性腸症かどうかを判断する時は、身体検査、血液検査、糞便検査、画像検査、内視鏡検査など複数の検査によって総合的に判断していきます。
猫の症状が、膵臓や肝臓、内分泌代謝の異常、また腫瘍や感染症、異物の誤飲誤食、腸閉塞などによるものであればその治療を行い、根本的な解決へ向けて対処します。
しかし、検査や病状、猫の様子を見ても、結果的に原因が分からなかったものについては、「慢性腸症」と診断され、下記のような治療が行われます。
慢性腸症の種類
慢性腸症の概念、定義はここ10年の間で大きく変わっていますが、2021年現在の考え方では以下の種類に分類されています。
抗菌薬反応性下痢(ARD)
抗菌薬反応性下痢は、抗菌薬の治療によって症状が改善する腸症のことを言います。一見、細菌感染や寄生虫が原因のように誤解されやすい病名ですが、消化管の細菌感染はありません。しかし抗菌薬を投与すると症状はおさまり、抗菌薬の投与をやめると再発するのが抗菌薬反応性下痢の特徴です。
原因や詳しい仕組みはわかっていないものの、腸管内で細菌が急激に増加や、腸粘膜の細胞が障害を受けている、免疫異常、閉塞性疾患や運動性低下、膵外分泌不全、胃酸の分泌減少や消化管のバイパス手術などが発症の原因として考えられています。
食事反応性下痢(FRD)
食事を変更することで症状が改善する腸症です。食事反応性下痢は、免疫反応が関与する「食物アレルギー」も含まれます。
また、食事反応性下痢は、食物アレルギーと、免疫反応が関与しない「食物不耐症」に分けることができます。食物不耐症はその食べ物を消化するために消化酵素を持っていないために起こしてしまう下痢で、牛乳を飲んでお腹を壊す「乳糖不耐症」は食物不耐症の例に挙げられます。
炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患とは、腸管粘膜の炎症を特徴とする慢性腸障害を引き起こす原因不明の病気です。こちらの方が聞き慣れている方も多いかもしれません。
炎症性腸疾患は、上記のように、抗生剤の投与や食事の変更による改善は難しく、根治する(根本的に治す)治療法は見つかっていません。
IBEの場合、治療は抗炎症薬や免疫抑制薬の投与によって症状を緩和するところから始まり、ステロイドなどの投薬を行います。もしステロイドの投薬でも症状に改善が見られない場合は、他の薬剤へ変更したり、検査結果を見直して他の方法を試すような流れとなります。
まとめ
- 慢性腸症(CE)とは下痢や嘔吐が長期間続く疾患の総称
- 膵炎や他の臓器の病気と併発している可能性がある
- 原因や治療法が確立していない炎症性腸疾患(IBE)が最も厄介