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国産ペットフードは危険?日本でも安全なフードが増えてきた!
一昔前まで、日本で製造された国産ペットフードは、発癌性や変異原性などが危険視される合成添加物や、4Dミートや不特定の動物原料など不安要素をはらんだ原材料が使用され、穀物などでカサ増しした低タンパク質で安価な商品が非常に多く出回っていました。
しかし現在、危険や不安要素をはらんだ国産ペットフードは以前よりかなり少なくなったように感じます。
まだ十分とは言えませんが、動物の安全や健康に配慮し、原材料のトレーサビリティがしっかりとれた品質の高い原材料を使ったペットフードを製造する企業も増えており、昔から製造していた歴史の長いペットフードも、飼い主さんの希望に合わせて原材料や成分などレシピの改良を行ったり、新ブランドを立ち上げるなどして時代の流れに合わせてペットフードを変化させています。
このため、現在もオールドスタイルを貫いているのは、一部の大手メーカーだけのように見受けられます。
日本の動物愛護への意識や管理が一昔前より向上したことが一因
この理由のひとつに、平成21年6月1日から「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法)が施行されたことや、時代の流れとともに動物たちが一緒に暮らす大切な「家族」「パートナー」「友人」として認められるようになったことが挙げられるかと思います。
数十年前までは、一度飼った犬や猫を、家庭や金銭的な事情などから簡単に捨てたり、劣悪な環境で多数の犬や猫を飼育しているケースも珍しくありませんでした。
しかし現在は動物虐待はもちろんのこと、ペットの遺棄や飼育放棄、また、避妊去勢をせず飼育できないほど繁殖させる行為はより大きな問題として捉えられるようになり、日本の動物飼育への意識や考え方も変わってきています。
また、周辺住宅への音・匂いの配慮など、飼育者一人一人の管理意識が高まったことで、動物と入店OKのお店やペット飼育可の賃貸物件が増えてきたりと、動物と人間が共存しやすい社会が少しずつ近づいてきているように感じます。
動物への意識は向上はしたもののまだヨーロッパには及ばず
以前と比べて動物の地位は向上し、日本人の意識が変わってきたことも事実ですが、日本はまだまだペット先進国、ペットフード先進国とは言えるほどではありません。
日本ではペットフードが食品とは別の物として分けて考えられ、同じ基準で規制されるわけではなく、また、ヨーロッパのように一般の犬や猫がキャリーバッグに入らずに電車やバスに乗車したり、人と同じように自由にどこへでも行けるわけではありません。
また、日本では一部の人の理解は高まっているものの、国民全体で動物への意識が高くなっているとは言い難く、法的にも犬や猫はあくまで個人の「所有物」であり、ペットが傷つけられれば傷害罪ではなく「器物破損」の罪に問われ、動物が食べるペットフードは「雑貨」として扱われます。
このように、公的な機関や国民全体で動物の地位が向上しているとは言えず、日本の動物愛護への意識や関心は徐々に高くなってきているものの、ヨーロッパとはまだ差がある状態と言えます。
日本(国産)のペットフード事情
日本で新興メーカーがドライフードを製造するのは難しい!
日本では、ドライフードをつくるために必要な「エクストルーダー」を所有している企業が少なく、国内でエクトルーダーを所持しているのは、すでに多くのペットフードブランドを展開する大手のメーカーで、大手メーカーは自社製品の製造を優先するため製造ラインに空きがないため、国内でドライフードのOEM(受託)製造を行う製造工場はほとんどありません。
このため、日本であらたにペットフードをつくりたい!と思った企業は、いきなり自社でエクストルーダーを購入して自社工場をつくるか、エクストルーダー以外の機械でペットフードを製造することになります。
エクストルーダーがなくても押し出し式の機械でドライフードを製造すること自体は可能ですが、1回の稼働に対する生産数が少なく、何トンも製造するには何日も機械を稼働させる必要があり、非効率で原価も高くなりやすくなります。
日本企業が海外のペットフード工場へ委託製造し、日本へ輸入する
上記のように、国産ペットフードを製造する場合、いくつか問題や制限が出てくるので、国内ではなく海外の大きなペットフード工場へ依頼し、製造したフードを日本に輸入販売する方法をとられる方もいます。
この方法を実践すると、海外の工場とのやりとりや契約が必要になる他、海外からの輸送費や関税などもかかり、販売できるまでにかなりの時間も労力がかかることから、こちらもこちらでかなりハードルは高いです。ただ、この方法で一度製造が可能になればエクストルーダーで1度に大量の製造が可能になり、海外販売などの展開もしやすくなります。
調理した食事を冷凍して届けるフレッシュフードも注目
また、ここ最近「フレッシュフード」という調理した食事をそのまま冷凍して届けるという新しいジャンルのフードが人気です。
フレッシュフードは調理したものを冷凍して届けるので、ドライフードで行う材料を混ぜて粒上に成形し加熱乾燥させる必要がなく、エクスロルーダーなしで製造できます。また、フレッシュフードの場合、冷凍するため、加熱や保存による栄養損失が少なく、完全無添加を実現できるのも大きな利点です。
ただ、価格が高く、自宅の冷凍庫の容量を圧迫してしまう欠点もあり、また猫の場合、嗜好性や食べムラ、栄養添加の問題から、猫用のフレッシュフードを販売するメーカーはほとんどありません。
国産ペットフードの「無添加」の定義について
日本での「無添加」は本当に無添加?
また、国産ペットフードでは「無添加」のものを求める方が多いかと思います。添加物への知識が高まったことで、気にかける方が増えたことは幸いなことです。
しかし「無添加」といっているものの、中には実際は無添加ではないものも多く存在します。そもそもペットフード、特にドライフードには製造過程で加熱や加工が施され、開封後の保存期間も長いため、犬や猫に必要な栄養を補うために「栄養添加物」等が使用されます。
原材料に含まれる栄養素は、加熱や保存の間にどんどん少なくなってしまうので、原材料に栄養が豊富に含まれていたとしても、総合栄養食かつドライフードで栄養添加物を不使用にするのはほぼ不可能と言われています。
危険でなければ添加物が使用されても無添加と言える
しかし日本ではそういった栄養添加物や他の自然由来の添加物が配合されていても「無添加」という言葉が一般的に使われています。
これは日本では無添加という言葉が「危険とされる添加物は使用していない」という意味であるためですが、そうなると欧米産のペットフードはほとんど無添加と言うことができます。ただ、海外では「無添加」= Additive free という意味になるので、無添加は本当に添加物が一切不使用な場合に使用されます。
判断は各メーカーに委ねられる
「別に危険な添加物が入っていないのであれば、無添加といったって問題ないだろう」と思うかもしれませんが、ここでいう「危険な添加物」もまた定義が曖昧です。
極端な話、発癌性や変異原性(遺伝毒性)の可能性が指摘されていても、実験や調査で発癌性があると証明されていない、発癌性がないと主張する論文もある、犬や猫にとっては危険か分からない、ペットフード安全法の規制は守っている、などの理由から、他のペットフードでは避けられているような添加物も危険にはあたらないと考える場合もあります。
ここまでいうと極端ですが、飼い主さんの中には無添加と言われれば「添加物を一切使用していない」と誤解する方も多く、無添加という言葉に安心する方もいると思いますが、実際そのさじ加減は各メーカーに委ねられているということを忘れてはいけません。
日本のペットフードを規制する法律「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」
メラミン事件がきっかけで2009年に施行
日本では、2009年(平成21年)6月1日から施工された「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法)によって犬・猫用のペットフードが規制の対象となっています。
ペットフード安全法では、原材料や原産国などの表示基準、農薬や汚染物質の規制、製造基準、事業者への検査や罰則などを定めています。
ペットフード安全法がつくられるきっかけになったのが2007年(平成19年)3月にアメリカで起こったメラミン混入事件です。中国で生産された小麦を使用したペットフードに有害物質であるメラミンが混入しており、アメリカでそのペットフードを食べた犬や猫が相次いで死亡し、大規模なリコールとなりました。
日本では被害が出なかったものの、これをきっかけに日本でもペットフードの規制の必要性が検討され、2008年(平成20年)3月に農林水産省と環境省がペットフード安全法の案を提出し、翌年より施行されるに至りました。
ペットフード安全法だけではゆるい?
オーストラリアやカナダのようにペットフードに関する国全体の法規制がない国もあるので、法規制自体がない国に比べれば一歩進んでいるとも言えます。
しかし、日本のペットフード安全法で定められているアメリカやEU、ニュージーランドなどでは、ペットフードや動物用品の法規制を行ったり、食品と同等の規制を行う国もあるため、ペット先進国・ペットフード先進国と比較すると、日本の法規制はまだまだ緩いと指摘されています。
ペット公正競争規約によるAAFCOの成分基準
ただ、日本ではペット公正取引協議会が定めるペット公正競争規約というガイドラインがあり、基本的に日本で販売するペットフードはこの規約に従って製造されています。
この公正競争規約について詳しくは下記の記事で紹介していますが、ペット公正競争規約では、AAFCOの成分基準に従ってその基準をクリアしないと「総合栄養食」という表記をしてはいけない、などペットフード安全法だけでは不十分な部分を補い、より細かい基準を設けています。