キャットフードの原材料:ソバ(buckwheat)
ソバ(buckwheat)は古くから食用されきたタデ科ソバ属の植物で、穀物の一種ではありますが厳密にはイネ科植物ではないため疑似穀類に分類されます。
ソバはヘルシーで健康的な主食としても人気が高く、日本では日本蕎麦として食されることが一般的ですが、ガレットやカーシャ、ヘロ、ピッツォッケリなど世界各地で様々な料理に調理されて親しまれてきました。
キャットフードではグレインフリーが主流になってきていることから、最近はソバ含め穀類を一切使用しない製品が多くなっていますが、使用した製品はいくつか確認できました。
- デフ オーガニックキャットフード(ソバ粉)
- アニマルワン マザー 幼猫用 キャットフード(玄ソバ)
- 猫舌シェフのすぅ~ぷ屋さん 黄色のお野菜(玄ソバ)
- エブリ・ニャン チーズリゾット(玄ソバ)
キャットフードでは玄ソバという収穫されたままの状態の殻付きのソバの実が使用されることが多く、精白したものよりもビタミンやミネラル、食物繊維を多く摂取できます。
ソバの栄養素と猫におけるメリット
栄養素 | ソバ粉 | 米 |
---|---|---|
タンパク質 | 10.2g | 6.1g |
脂質 | 2.7g | 0.9g |
炭水化物 | 71.6g | 77.6g |
食物繊維 | 4.4g | 0.5g |
カリウム | 470mg | 89mg |
マグネシウム | 220mg | 23mg |
リン | 390mg | 95mg |
銅 | 0.58mg | 0.22mg |
亜鉛 | 2.2mg | 1.4mg |
ビタミンB1 | 0.35mg | 0.08mg |
ナイアシン | 4.1mg | 1.2mg |
パントテン酸 | 1.54mg | 0.66mg |
カロリー | 334kcal | 342kcal |
ソバは食物繊維やミネラル、ビタミンが豊富
米と比較してもわかる通り、ソバは食物繊維が非常に豊富でヘルシーな食材です。
また、キャットフードでよく使用される玄ソバはさらに通常のソバより食物繊維やミネラル、ビタミンを多く含有しているので、必須栄養素の補給におすすめです。
毛細血管の安定・強化を行うルチンが豊富
ソバには抗酸化作用のあるルチンが豊富に含まれています。また、ルチンはかつてビタミンPと呼ばれていた栄養素で、毛細血管の働きを安定・強化したり、脳出血や出血性の疾患の予防効果があるとされています。
ルチンには破れやすくなった血管を弾力性のある新しい血管にする働きがあります。
そばをゆでた時に出る蕎麦湯にはルチンを含め水溶性ビタミンが溶け込んでいます。また、猫はとろみのある液体を好む傾向にあり、もし好んで飲むようであれば猫の水分補給も兼ねられるため、そばを茹でた時に出る蕎麦湯を捨てずに冷ましておいて、猫に与えてみてもいいかもしれません。
ルチンが特発性乳糜胸(にゅうびきょう)の療養に有効
引用元:ルチンによる治療が奏効した特発性乳糜胸の猫の1例|日獣会誌
特発性乳糜胸と診断された猫に対し、高用量ルチン療法(500mg、1日3回、経口投与)による治療を行った。治療開始後、胸水量は徐々に減少した。さらに29日後にルチンの1日投与量を1,500mgから2,000mgに増量したところ、治療開始後150日目には胸水貯留がほとんど認められなくなり、最終的に治療開始後450日目にルチン投与を中止することができた。現在、治療開始後約2年を経過したが、胸水の貯留や臨床症状は認められていない。以上の結果から、猫の特発性乳糜胸に対して高用量ルチン療法が有効である可能性が示唆された。
2005年の日本小動物獣医学会日獣会誌で、特発性乳糜胸と診断された猫に対して高用量のルチン療法を行うことで、胸水量が減少したこと、その結果から特発性乳糜胸の猫に対しルチンが有効である可能性が示唆されています。
乳び胸とは、胸管のリンパ流量の増加やリンパ管圧の上昇によって、乳白色のリンパ液が胸水として胸腔内に貯留する疾患を言います。胸の中に大量の液体が溜まると、肺を圧迫し呼吸困難を起こし、 放っておくとリンパ液の刺激によって炎症が進み、肺などが硬くなり呼吸ができなくなってしまいます。
上記の結果は1例のみであることから、特発性乳糜胸のすべての猫に同じような効果があるかは分かりませんが、ルチンには抗酸化作用によるフリーラジカル除去作用、またタンパク分解作用やマクロファージ活性増強作用などがあり、それらの作用が乳糜の吸収を促進する働きがあると考えられているようです。
ソバの注意点、アレルギー症状によるアナフィラキシーショックの危険性
そばアレルギーによるアナフィラクシーショック
ソバはアレルギー症状によってアナフィラキシーショックを起こす可能性がある食べ物です。
メリットや効果も多いですが、アレルギーを発症しやすい猫や、他の穀物にアレルギーのある猫の場合は避けた方がいい場合があります。
アナフィラキシーショックは呼吸困難などアレルギー症状に比べて重篤であり命に関わることもあるため、与える場合は少しずつ様子を観察しながら注意して与えましょう。
まとめ
- ソバは厳密には疑似穀類のひとつ
- グルテンを含まず食物繊維が豊富でヘルシー
- ビタミンやミネラルが豊富
- ルチンは抗酸化作用、毛細血管を安定・強化する働きがある
- 特発性乳糜胸に高用量のルチンが有効であることが報告された
- アレルギー症状のアナフィラキシーショックに注意