キャットフードの難消化性デキストリン。猫の腸内環境を整える目的でサプリメントでよく使われていますが、どのような原材料なのでしょうか。
難消化性デキストリンとは
難消化性デキストリン(indigestible dextrin)とは、食物繊維源としてキャットフードや猫用サプリメントにも配合される原材料です。
プレバイオティクスとして機能性に優れ、これまでの使用実績から安全性も認められています。そして原材料としての使いやすさも高い評価を得ているため、世界で利用されています。
難消化性デキストリンはトウモロコシのデンプンから作られます。
まずトウモロコシのデンプン微量の塩酸を加えて加熱し、α-アミラーゼやグルコアミラーゼの消化酵素によって得られた食物繊維の部分を分離、精製します。最終的に白い粉末状に乾燥させられ製品として販売されます。低粘度で甘味は砂糖の10分の1、またアレルギーの原因となるグルテンタンパク質は基本的に含まれていませんので、アレルギーの心配はほとんどありません。
特定保健用食品(トクホ)としての許可実績もあり、米国食品医薬品局(FDA)より安全性が認定されており、生活習慣病予防でも注目されています。
難消化性デキストリンの効果
- 整腸作用
- 食後血糖値・中性脂肪の上昇抑制作用
- 内臓脂肪の蓄積低減作用
- ミネラル吸収促進作用
- 腸管免疫賦活作用
- 腸内菌叢改善作用
- GLP-1分泌促進作用 など
食後の血糖値・中性脂肪上昇の抑制作用
画像引用元:難消化性デキストリンの特性と用途|農畜産業振興機構小腸で5~10%がグルコースとして吸収されますが、50%は大腸でビフィズス菌などの腸内細菌に資化され、残り40%は糞便中に排泄されます。
難消化性デキストリンは利用されにくい炭水化物であり、炭水化物と一緒に摂取すると、炭水化物の消化酵素による分解によって生じるグルコースの血中輸送が緩やかになり、その結果、食後の急激な血糖値上昇を抑制する働きがあることがわかっています。
また、難消化性デキストリンは、食後脂肪の吸収を抑制し、便中への脂肪の排泄を増加させ、食後の血中中性脂肪の上昇を抑制する作用があります。
このため食品でも、難消化性デキストリンを炭水化物源の置き換えるなど低糖質食品への応用も注目されています。
整腸作用
難消化性デキストリンは、胃や小腸で分解されず大腸まで届き、腸内の細菌に直接利用され、腸内環境を整える整腸作用があります。
去勢雄成ネコに試験飼料3種(プロバイオティクス資材として、セルロースを成分の主体とした候補資材A、フラクトオリゴ糖、難消化性デキストリンのそれぞれを添加した飼料)とプロバイオティクス資材を含まない対照飼料を30日間給与した。糞の総DNAと短鎖脂肪酸の濃度を測定するとももに、16S rRNAコード領域のシーケンスによって細菌叢を解析した。いずれのプロバイオティクス資材を給与しても糞の短鎖脂肪酸濃度は変化しなかった。一方、主成分分析とクラスター解析の結果からはフラクトオリゴ糖あるいは難消化デキストリンを給与すると腸内細菌叢の斉一性が高くなることが示唆された。
引用元:プレバイオティクス資材の給与がネコの糞の細菌叢に及ぼす影響 ペット栄養学会誌 Vol.24 No.2 October 2021
難消化性デキストリンのデメリット。副作用、危険性は?
名称や製造工程を見ると、安全面に不安を覚える方もいるかもしれませんが、これまでの使用実績や安全性の認定等を総合してみても、難消化性デキストリンは安全性が高い原材料なので、危険性はない原材料とされています。
ただどんな原材料でも過剰摂取は体に問題を引き起こします。難消化性デキストリンは、過剰摂取すると、食物繊維源が過剰となるため、下痢や吐き戻しの原因となります。便秘の猫の場合、与えすぎると便秘をさらに悪化させてしまう危険があるので、与える量には注意しましょう。
また、猫の場合、炭水化物でお腹がいっぱいになるとタンパク質を十分に摂取できなくなってしまうので、難消化性デキストリンのサプリメントを沢山与えてしまうと、満腹状態なのに栄養失調状態になる可能性があるので注意しましょう。
まとめ
- トウモロコシデンプンから作られる水溶性食物繊維
- プレバイオティクスとして腸内細菌に直接利用される(整腸作用がある)
- 血糖値や中性脂肪の上昇を抑制する作用がある
- 安全性が高く、副作用や危険性も心配ない