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鳥インフルエンザ発生による影響は家禽産業だけでなく、ペットフード産業にも及びます。鳥肉を主原料とするキャットフードが輸入停止・販売終了に追い込まれるなど、飼い主さんの間で不安が広がっています。
今回は鳥インフルエンザにおけるキャットフードへの影響や、飼い主さんがするべきことについて解説します。
鳥インフルエンザ(bird flu)とは
鳥インフルエンザの概要
鳥インフルエンザはインフルエンザウイルスの一種が鳥類に感染して発症する疾患で、家禽(鶏や七面鳥など)に多くみられます。とくに「高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型やH7N9型)」は非常に高い感染力を持ち、飼育環境で急速に広がることがあります。
感染経路は、主に感染した鳥の排泄物(糞便)や分泌物(鼻水、唾液など)を介して鳥から鳥へと感染します。ウイルスはこれらの物質中で長時間生存し、汚染された飼料や水、鳥同士の接触を通じて広がります。感染した鳥は呼吸困難や死亡率の高い症状があらわれます。
日本でも発生している
高病原性鳥インフルエンザについては、我が国の近隣諸国において継続的に発生しており、これらの近隣諸国から渡り鳥が飛来してウイルスを持ち込む可能性があるほか、人や物を介した侵入も考えられることから、今後も我が国に侵入する可能性は高い。我が国においては、平成16年から野鳥及び家きんにおいて断続的に感染が確認され、平成22年冬から平成23年春にかけては、野鳥や家きんのみならず、動物園等における飼養鳥においても感染が確認された。
環境省の報告によると、日本の近隣諸国では鳥インフルエンザが継続的に発生しており、渡り鳥の飛来や、人や物によってインフルエンザウイルスが持ち込まれる可能性があるとしています。
また日本でも継続的な鳥インフルエンザの発生が確認されています。
鳥インフルエンザは猫や人にも感染する?
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(一部抜粋)ウイルスは変異することで他の動物にも感染するようになることがあります。鳥から人への感染が繰り返されると、ウイルスが人の体内で増えることができるように変異してしまい、さらに人から人へ容易に感染できるように変異する可能性もあります。新型インフルエンザウイルスはこうした経緯によって発生するだろうと予想されています。
引用元画像:鳥インフルエンザと新型インフルエンザ|厚生労働省
海外では人への感染事例も
鳥インフルエンザウイルスは人の細胞には感染しにくいため、人への感染率は低いとされています。
しかし海外では高病原性インフルエンザウイルス(H5N1型やH7N9型)による人の死亡事例が報告されています。感染した鳥やその排泄物、分泌物に直接触れることで感染し、高熱や呼吸器症状を示し、重症化すると肺炎や多臓器不全を引き起こします。致死率は50%程度といわれています。
現時点では高病原性インフルエンザウイルスは人から人への持続的な感染能力を持たないとされていますが、変異により感染力が高まる可能性が懸念されています。
参考:ヒトから分離された牛由来高病原性 H5N1鳥インフルエンザウイルスの病原性と感染伝播性|東京大学 国立国際医療研究センター
韓国で猫に感染事例
2023年7月、韓国ソウル市の動物保護施設で保護されていた猫40匹のうち38匹が高熱や食欲不振などの症状を示し、短期間で死亡しました。そのうち2匹から高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)の感染が確認されています。ウイルスに汚染されたキャットフードの摂取が疑われていますが、詳細な感染経路は明らかになっていません。
猫は通常、鳥インフルエンザウイルスに対して高い抵抗性を持っていますが、感染した鳥を捕食したり、ウイルスに汚染された環境に接触したりすることで感染する可能性があります。
現在のところ、猫から人への鳥インフルエンザ感染は報告されていませんが、感染した猫と密接に接触することで感染リスクが高まる可能性があります。
鳥インフルエンザ発生によるキャットフードへの影響
キャットフードの主原材料として使用される肉類には、鶏肉、牛肉、豚肉、羊肉、鹿肉、ウサギ肉などさまざまなものが挙げられますが、その中でもとくに鶏肉は高タンパクで低脂質、味にクセが少ないため猫の嗜好性が高く、キャットフードの主原料として多くのメーカーで使用されています。
そのため、キャットフードの原材料の原産国で鳥インフルエンザが発生した場合、キャットフードへの影響は下記が考えられます。
原材料の供給停止
鳥インフルエンザの発生により、感染が確認された家禽(鶏や七面鳥など)は防疫措置として大量に処分され、また生産の制限が行われます。その結果、鳥インフルエンザ発生地域からの家禽製品の輸出入が禁止・制限され、家禽を原材料とするキャットフードの供給が停止する場合があります。
また原材料がインフルエンザウイルスに汚染されていないことを確認するための検査や認証プロセスが必要になり、この手続きの遅れが供給停止を引き起こすことがあります。
キャットフードの販売終了
原産国の鳥インフルエンザ発生に伴い、キャットフードメーカーでは家禽類を使用したキャットフードの生産が停止、または縮小されます。その結果、いつも買っていたキャットフードが販売終了となり、手に入らなくなるという事態になってしまいます。
製造コストの増加
鳥インフルエンザ発生により原材料が供給できなくなると原材料の代替を調達しなければならないため、コストが増加します。
鳥インフルエンザ発生により販売終了したキャットフード例
鳥インフルエンザの発生により、家禽類(鶏肉や七面鳥など)を使用したキャットフードが販売終了になる事例が報告されています。
【2024年12月】ニュージーランド:Butch
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引用元画像:Butch(ブッチ)公式サイト
2024年12月、ニュージーランドでの高病原性鳥インフルエンザの発生に伴い、ブッチ(Butch)はニュージーランドからの家禽肉やその加工品の輸入の一時停止が講じられました。
現在は在庫精査のうえ、数量限定で一部商品を販売しています。
【2023年】カナダ:Canisource
鳥インフルエンザの発生により、カナダのペットフードメーカーであるCanisourceのチキン&ダックを使用したキャットフードも輸入が停止されています。現在も輸入再開の目途は立っていません。
【2022年】カナダ:ロータスペットフード
鳥インフルエンザの影響により、カナダから日本への家禽類を使用したペットフードの輸入が禁止されました。これは、エクストゥルーダー製法や缶詰は適用外で、低温・低圧調理のオーブンベイク製法等に適用されるものです。(中略)家畜感染症と関連のない「フィッシュレシピ」以外の製品を終売とさせて頂く事となりましたのでお知らせ致します。
2022年に発生した鳥インフルエンザの影響により、ロータスではカナダから日本への家禽類を使用したペットフードの輸入が禁止され、フィッシュレシピ以外の製品が販売終了となりました。
キャットフード販売終了時に飼い主がすべきこと
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いつも買っているキャットフードが急に販売終了なんて、不安でどうしたら良いか分からないですよね。
まずは慌てず、今の在庫状況などを確認して、代替キャットフードを探しましょう。
現在の在庫を確認する
いつも買っているキャットフードの原産国で鳥インフルエンザが発生したことが分かったら、まずはキャットフードの在庫を確認しましょう。もし供給が停止している場合、早急に代替キャットフードを探す必要があります。
代替キャットフードを探す
いつも買っているキャットフードの供給が難しい場合、代替キャットフードを探さなければなりません。選ぶ際には下記の点に注意しましょう。
代替キャットフードを選ぶポイント | |
---|---|
原産国の状況 | 原産国が鳥インフルエンザの影響を受けていないか確認する |
栄養バランス | 現在のキャットフードと栄養バランスが似ているものを探す |
他たんぱく源の検討 | 魚類や牛肉、豚肉、植物性タンパク質を主タンパク質としたキャットフードを試す |
アレルギー対応 | アレルギーを持っている場合、代替キャットフードが安全かを確認 |
手作りごはんの注意点
代替キャットフードが見つからない場合、一時的に手作りごはんを検討するのも良いでしょう。
ただし、手作りごはんで総合栄養食のような栄養バランスが取れたごはんを作るのは非常に難しいことです。手作りごはんを検討する場合は、獣医師やペット栄養士に相談し、適切なレシピを作成することが必要です。
キャットフードが販売再開されたら
販売終了の原因が解決してキャットフードが販売再開された場合、製品が安全であることをメーカーの公式サイトや第三者機関の報告で確認しましょう。
また元々のキャットフードの原材料や栄養成分、製造方法が変更されている可能性もあります。いきなり大量購入せず、まずは小容量で試して猫に合うかどうか確かめましょう。
しかし、猫が代替キャットフードに満足している場合は、無理に元々のキャットフードに戻す必要はありません。猫の様子を確認し、獣医師と相談しながら最適な選択をしましょう。
フードローテーションがおすすめ
鳥インフルエンザ発生に限らず、地震や災害など緊急時に役立つのが、キャットフードのローテーションです。普段からローテーションを行うことで、緊急で代替キャットフードを与えなければならない状況でもストレスなく食べてくれるでしょう。
キャットフードのローテーションについては下記の記事をご覧ください。
まとめ
- 鳥インフルエンザ発生によるキャットフードの販売終了は急に訪れる
- 海外では人や猫への感染が確認され、死亡事例もある
- キャットフードが販売終了になったら代替品や手作りごはんを検討する
- 緊急時に備えて、普段からフードローテーションを行うのもおすすめ