


そうなんです。分離不安は集団で生活する習性がある犬に多い行動ですが、猫にも多くみられます。
分離不安は飼い主さんの対策によって予防することができるため、猫の行動やサインを見逃さず、猫の心の健康を守るために必要なサポートをしてあげましょう。
今回は猫の分離不安について、特徴や行動、飼い主が注意すべき点を解説します。
分離不安とは
猫は一般的に独立心が強い動物で、留守番が得意な猫も多い傾向にあります。
しかし飼い主がいなくなると強い不安やストレスを感じ、体調を崩したり過剰に鳴いたり、家具や物を壊す猫もいます。
この状態を「分離不安」といい、不安障害の一つです。
分離不安になる原因

環境の変化
猫が分離不安になるのは、環境の変化がきっかけとなることが多いです。
例えば、
- 新しい家族やペットが増えた
- 引っ越し
- 家族やペットの死
- 近所で工事をしている
- 留守番中に雷や地震など怖い思いをした
- 家の前が交通量や人が多い
などが挙げられます。
猫は環境の変化に非常に敏感であり、生活空間や日常のリズム、新しい住環境に伴う匂い、音の違いなどにより不安やストレスを感じやすくなります。
飼い主への強い依存
猫が飼い主に強い愛情を持っている場合や、猫にとって飼い主の存在が主要な安心要素となっている場合、飼い主がいなくなることが強い不安の原因となることがあります。
これは特に、飼い主が一人暮らしの場合によくみられます。また、過去に捨てられた経験や、飼い主の死別などを経験した猫も、飼い主への依存が強い傾向にあります。
- 常に飼い主を追いかける
- 常に飼い主の行動を監視
- 鳴き声での要求が多い
- 飼い主が側にいないと食事やトイレができない
- 飼い主以外の人への警戒心が強い
子猫時代の社会化の不足
幼少期に十分な社会化がされていない猫や、早期に母猫や兄弟猫から引き離された猫は、不安を感じやすい傾向があります。
社会化は母猫への甘え方や、兄弟猫とのケンカの仕方、甘噛みの仕方、コミュニケーションの取り方など多くのことを経験できる時期です。この社会化の触れ合いや経験が不足していると安心感や自立心を学ぶ機会が失われ、成長後に不安や孤独感を抱えやすくなります。
また、環境の変化や新しい経験に対する適応能力が低下することもあります。特に飼い主への依存が強くなりやすいため、社会化の不足は分離不安の大きな要因となります。
- 初対面の人や動物に威嚇したり攻撃的になる
- 体を触られることに敏感で、触れようとすると逃げる
- 安全な隠れ場所を常に探し、不安を感じるとすぐに隠れる
- おもちゃに興味を示さず、人と遊ぶことにも消極的
飼い主との時間が増えた
近年では飼い主が在宅で仕事をしたり、リモートワークなどで自宅にいる時間が増えていることも、猫の分離不安の原因の一つとも考えられています。
このように飼い主が自宅で過ごす時間が増えることで、猫と遊んだり撫でることが増え、猫は飼い主に常に近くにいることを期待するようになります。その結果、飼い主への依存が強くなり、数分の外出でも不安を感じやすくなる可能性があります。
分離不安の特徴

猫が分離不安を抱えている場合、以下のような特徴がみられることがあります。
過度な鳴き声
飼い主が外出しようとすると、普段よりも大きな声で鳴き続けることがあります。「寂しいと思ってくれてるのかな?」と嬉しくなる気持ちも分かりますが、これは単なるコミュニケーションではなく、飼い主に戻ってきてもらいたいという強い要求や不安の表れです。
この鳴き声は特定のパターンで繰り返される場合が多く、猫自身が抱えるストレスや寂しさを反映していることがあります。特に飼い主と密接な関係を持つ猫ほど、この行動が顕著に現れる傾向があります。
家具や物を壊す
ストレスが高まると、猫は爪とぎや噛みつきで家具や物を破壊する行動をとることがあります。これは猫が自身のストレスを解消するための手段としてよく見られる行動です。特に飼い主の不在中に孤独感や不安感が強まると、この行動が顕著になります。
また、破壊行動を通じて、自分の存在をアピールしようとしている場合もあります。
トイレの失敗
トイレの使い方が普段と異なる場合も、分離不安の兆候といえます。
特に飼い主の持ち物やベッドに排泄する場合は、猫が飼い主への強い依存心や不安を表現しているサインです。この行動は、飼い主の注意を引きたいという心理から発生する場合が多いです。
食欲不振または過食
飼い主がいない間に全く食事を取らなかったり、逆に過剰に食べる行動を見せる場合があります。
食欲不振は、不安が強いために胃腸の機能が低下している可能性があります。逆に過食の場合は、ストレス解消の手段として食べることに依存している可能性があります。
過剰な毛づくろい
猫は強い不安を感じると、過剰に毛づくろいを行うことがあります。過剰な毛づくろいは自分を落ち着かせるための行動であり、場合によっては毛が抜けるほど執拗に行うこともあります。
このような行動は分離不安だけでなく、その他のストレス要因や皮膚疾患が関係している場合もあるため注意が必要です。
分離不安になりやすい猫種

分離不安になるのは年齢や性別、猫種に限らず、生涯を通じてどの猫種でもあらわれる可能性がありますが、特にオリエンタルの猫種は分離不安になりやすい傾向にあります。
- シャム
- オリエンタルショートヘア
- トンキニーズ
- コーニッシュレックス
これらの猫種は飼い主との関係性を非常に重要視するため、飼い主が長時間家を空けることに強い不安を感じる場合があります。
また非常に頭が良く、知的な刺激や遊びを必要とするため、飼い主が不在の間に退屈を感じるとストレスが蓄積しやすく、結果として分離不安に繋がる可能性があります。
さらに、シャム猫のように声で感情を伝える猫種は、飼い主への呼びかけや不安を表現するために、飼い主がいない間に過度に鳴いてしまう傾向があります。
分離不安になってしまったら…


分離不安は適切な対応を行うことで、軽減したり改善することができます。
分離不安を完全に治すというよりは、時間をかけて徐々に不安を和らげるようにしましょう。飼い主さんの根気強さが重要となります。
飼い主の外出に慣れさせる
まずは、猫に飼い主の外出に慣れさせましょう。
短時間の外出から始めて、徐々に時間を延ばしていくことで猫が飼い主の不在に慣れるようにします。ペットカメラを設置して外出中の猫の行動を観察することも、不安の兆候を把握することに役立ちます。
猫が安心できる環境を作る
猫が安心してリラックスできる環境を作りましょう。
お気に入りのベッドやキャットタワー、隠れ場所を確保します。また、飼い主の匂いがする衣類を置いておくことで安心感を与えることができます。さらに、部屋全体に段差や通路を作り、猫が探索できるスペースを増やすことで気を紛らわせる手助けとなります。
自分で楽しむ時間を作る
飼い主がいない間も猫が不安を感じたり退屈しないよう、自動で動くおもちゃを置いたり、窓から外を眺められる場所を作りましょう。
このような生活環境は、一人で遊んだり、外の刺激を楽しむことでストレスの原因を取り除くとともに、爪とぎ用のアイテムや噛んでも安全なおもちゃを与えることで、猫が気持ちを発散することができます。
獣医師や行動学専門家への相談
分離不安が深刻な場合は、獣医師やペットの行動学専門家に相談することを検討しましょう。必要に応じて、不安を和らげるための薬を処方される場合もあります。
分離不安にならないために

分離不安は、一度なってしまったら完治はなかなか難しいものです。猫が分離不安にならないために、事前に対策しておきましょう。
独立心を育てる
子猫や新しく迎えた猫に対して、可愛くて常に構ってしまう気持ちもありますが、常に一緒にいるのではなく、一人で過ごす時間を作ることを習慣にしましょう。
そうすることで、飼い主が外出しても「一人でも大丈夫」という自信と独立心を育てることができます。
社会化を進める
子猫時代から他の人や動物と触れ合う機会を増やし、慣れさせることで、飼い主以外の存在にも安心感を持たせます。環境の変化や新しい物事に対する耐性を高めるよう、徐々に新しい刺激を与えましょう。
飼い主の外出を「特別」にしない
外出前に「いい子でいてね!」などと声をかけたり撫でたりするなど特別なお別れの儀式をしないようにしましょう。
これにより、外出を特別な出来事ではなく、「日常の一部」「普通のこと」と認識させることができます。
まとめ
- 猫の分離不安は環境の変化がきっかけとなることが多い
- 分離不安は過剰な鳴き声や毛づくろい、トイレの失敗などがみられる
- どの猫でも分離不安になり得るが、オリエンタルの猫種がなりやすい
- 完治というよりは、徐々に不安を和らげることが大切