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キャットフードの原材料:冬虫夏草(Cordyceps sinensis)
なんとも不思議なきのこ
冬虫夏草(とうちゅうかそう)とはオフィオコルジケプス属のきのこの一種で、昆虫の幼虫に寄生し、その体内で成長する寄生性のきのこです。
冬虫夏草の胞子は、冬の間にコウモリガなどの蛾の幼虫が地中に潜っているときに体内に侵入し、菌糸を伸ばして幼虫の体の中で栄養を吸収しながら増殖します。
気温が上昇する春~夏になると、菌糸が成熟して体外へ伸び始め、やがて細長い棒状の子実体(きのこ)を形成します。

冬虫夏草を食べても大丈夫?
冬虫夏草は虫草、サナギダケ、ハナサナギタケ、チベット冬虫夏草、コルディセプスなどさまざまな呼び名があります。
なんともユニークなきのこですが、人や猫は冬虫夏草を食べても大丈夫です。
中国やチベットでは滋養強壮や免疫力向上に効果があるとされ、漢方薬やお茶として珍重されています。野生の冬虫夏草は希少で高価ですが、近年は人工培養も進んでいます。
またキャットフードや猫用サプリメントの原材料にも使用されており、人と同様、老化防止や免疫力向上、抗炎症作用などの健康効果が期待されています。
冬虫夏草が原材料のキャットフード例
原材料には昆虫を使用する?
一部の研究機関メーカーでは、自然界の冬虫夏草の成長を再現するために、コウモリガなどの幼虫を培養基として利用することがあります。具体的には幼虫に冬虫夏草の菌を感染させ、人工環境で成長させる方法です。
ただし、キャットフードの製造においては、原材料に使用される冬虫夏草は昆虫を使用せずに培養されたもの(人工培養品)が一般的です。
大豆や小麦、玄米などの穀物培地を使った培養が主流で、液体培養で菌糸体のみを増殖し、粉末化またはエキス化して使用されます。
冬虫夏草が原材料のキャットフード例
冬虫夏草はさまざまなキャットフードやおやつ、サプリメントの原材料に使用されています。
冬虫夏草は希少性が高く、特に天然ものは高価なため、冬虫夏草が配合されているキャットフードやサプリメントは他のキャットフードに比べて価格が高い傾向があります。
原材料欄には、冬虫夏草の他、冬虫夏草エキス、冬虫夏草粉末、冬虫夏草発酵エキス、コルジセプスシンネンシス、免疫サポート成分(冬虫夏草配合)などと表記されます。
- アニマルズアパスキャリー【冬虫夏草・霊芝ブレンド】
- ガナシン ペット用有機冬虫夏草サプリメント
- Forema Nature 冬虫夏草-鹿
- ペット用冬虫夏草サプリメント プライオ など
冬虫夏草の栄養素と猫への健康効果
高栄養価の栄養素が豊富
冬虫夏草には
- ミネラル(亜鉛やカルシウムなど)
- アミノ酸(アルギニンやグルタミン酸など)
- 多糖類(βグルカンやガラクタンなど)
- アデノシン
- コルジセピン
- 不飽和脂肪酸(リノレン酸など)
など高栄養価の栄養素が豊富に含まれています。
それにより、さまざまな健康効果が期待されます。
- 免疫力向上
- 抗腫瘍作用
- 抗酸化作用
- 抗炎症作用
- 血糖値調整
- 抗疲労作用
- 肝機能向上
- 呼吸機能改善
- 睡眠の質向上
- 抗ストレス作用
- 老化防止
- 腸内環境の改善
その中でも特にコルジセピンは抗腫瘍作用や抗酸化作用、免疫力向上、神経保護作用が強いとされ、猫の健康に大きく寄与します。
コルジセピンとは?
コルジセピン(Cordycepin)とは冬虫夏草由来の生理活性物質で、アデノシンに類似した構造を持つ核酸誘導体です。
コルジセピンは強い抗酸化作用や抗炎症作用を持っているため、免疫力の向上だけでなく、細胞のアポトーシス(自然死)を促進することでがん細胞の増殖抑制に寄与する可能性が示されています。
さらに、コルジセピンは抗菌・抗ウイルス作用を持ち、感染症の予防にも効果があります。
コルジセピンによる抗腫瘍効果の研究
福井大学の研究では、冬虫夏草から抽出されるコルジセピンと多糖類の組み合わせが抗腫瘍効果を高める可能性が示されています。
冬虫夏草に含まれる多糖類(βグルカンなど)は免疫賦活作用を持ち、ナチュラルキラー(NK)細胞やマクロファージの活性を高めることが知られています。
コルジセピン単体よりも、多糖類が免疫機能を強化し、コルジセピンが直接的な細胞毒性を示すことで相乗効果が生まれ、がん細胞の抑制作用が増大したと考えられます。
参考:冬虫夏草から抽出されるコルジセピンの多糖類とのシナジー効果による抗腫瘍性の促進|福井大学
腸内環境を整えることは健康につながる

引用画像:犬の腸内環境が多様なほど、健康度が高いことが明らかに!|アニコムのデータをもとに作成
アニコムホールディングス株式会社が発表した「腸内フローラ×健康」に関する調査によると、「犬の腸内環境の多様性が高いほど健康度が高い」ことが分かりました。これは犬による研究ですが、猫にも同様の健康効果があると考えられます。
冬虫夏草にはβグルカンやガラクタンなどの多糖類が豊富に含まれ、腸内の善玉菌を増やすプレバイオティクスとして機能します。これにより腸内環境のバランスが整い、便通の改善や下痢・便秘の予防に効果が期待されます。
腸内環境の改善は後天的な要素でも変化することから、キャットフードやサプリメント、手作りごはんなどで腸内環境を整えることは健康につながるといえます。
特に内臓機能が衰えている高齢猫や、病気や怪我をして免疫力が低下している猫などには毎日のごはんの中で取り入れてみましょう。
猫に冬虫夏草を与えるには?
トッピングや手作りごはん
冬虫夏草が原材料のキャットフード(ドライフード)はほとんどありませんが、サプリメントやウェットフードは販売されています。
猫に与える場合は普段のキャットフードにトッピングしたり、手作りごはんに取り入れてみましょう。
人工培養の冬虫夏草
天然の冬虫夏草は農薬や重金属が含まれている可能性があるため、猫に与えるのはおすすめできません。
そもそも天然の冬虫夏草は希少で高価であり、市場には限られた量しか流通しないため、天然を入手するのは非常に困難です。
猫に冬虫夏草を与える場合は、キャットフードやサプリメント、粉末、エキス、ドリンクとして販売されている人工培養のものを活用しましょう。
猫に冬虫夏草を与える注意点
アレルギーや副作用の確認
冬虫夏草を初めて与える場合は少量からスタートし、食べたあとは猫に異変がないか観察しましょう。嘔吐や下痢、食欲不振などがみられた場合はすぐに中止し、獣医師に相談してください。
好みに合わない可能性
冬虫夏草は独特の香りや風味があり、猫が好まないこともあるため、せっかく高価なキャットフードを購入しても食べてくれないというリスクがあります。
相互作用の懸念がある
冬虫夏草は免疫調整や血流改善の作用があり、免疫抑制剤や血圧降下薬などの特定の薬と相互作用を起こす恐れがあるため、持病のある猫には注意が必要です。
冬虫夏草を猫に与える前には必ず獣医師に相談しましょう。
まとめ
- 冬虫夏草は幼虫に寄生し、体内で成長する寄生性きのこ
- 人や猫が食べても大丈夫で、高い健康効果を持つ
- 猫製品の原材料の冬虫夏草は、昆虫を使用しない人工培養が一般的
- コルジセピン免疫力向上や抗菌、抗腫瘍の効果がある