キャットフードの成分:アルギニン(arginine)
アルギニンとはタンパク質を構成するアミノ酸の中で最も塩基性の高い(アルカリ性)アミノ酸です。
アルギニンは人の必須アミノ酸ありませんが、猫にとっては非常に重要な役割を果たす必須アミノ酸の一つとなっています。
食品では鶏肉、レバー、ナッツ、大豆、玄米、エビ、牛乳、ニンニク等に多く含まれていますが、このうちニンニクや牛乳は猫にはNGなので、レバーや肉などの動物性食品が主な供給源となります。
猫におけるアルギニンの重要な働きと作用
アミノ酸分解で発生するアンモニアの無毒化
アルギニンはタンパク質(アミノ酸)をエネルギーとして利用する際に発生するアンモニアを無毒化するために必要なアミノ酸です。
タンパク質を構成するアミノ酸は肝臓でブドウ糖とアミノ基に分解され、この時にアンモニアが蓄積されます。アンモニアは毒性が強いため、無毒化して「尿素」に変える必要がありますが、この時に尿素回路(オルニチン回路)に必要なアミノ酸が「アルギニン」です。
特にタンパク質から主要なエネルギーを得ている猫は尿素回路をフル回転させているため、アルギニンが他の動物より多く必要になります。
血管拡張作用
L-アルギニンには血管拡張作用があり、アルギニンが代謝される時に発生する一酸化窒素が血管の筋肉を緩めて血管を拡張させ、しなやかに保ちます。
また、ここ最近の報告で血流調節機能があることが明らかにされ、現在も研究が行われています。血流の改善や心臓への負担を減らす作用が期待できます。
免疫力を高める
アルギニンは感染症や外傷、手術などの病気にかかった時に補給することで、傷の治りを早めたり、合併症などの発生率を低下させる作用があると言われています。
キャットフードに必要なアルギニン量
ドライタイプのキャットフードには成長期の猫で1.24%以上、成猫期の猫で1.04%以上のアルギニンが必要になります。ドッグフードの場合、それぞれ1.0%以上、0.51%以上と猫より必要量が少なく、成猫だけで見ると2倍も数値が異なります。キャットフードのアルギニンの上限値はありません。
猫のアルギニンの欠乏症
尿毒症(高アンモニア血症)を発症
アルギニンが欠乏すると猫の体内で発生するアンモニアの無毒化が行えなくなるため、猫は短時間で尿毒症を発症してしまいます。総合栄養食のキャットフードを与えていれば欠乏することはありません。
まとめ
- アルギニンは必須アミノ酸
- アンモニアを無毒化するために必要なアミノ酸
- タンパク質の分解とアンモニア発生が多い猫には特に重要
- 欠乏すると短時間で尿毒症を発症