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猫はれんこん(lotus root)を食べても大丈夫!
れんこんはスイレン科ハス属の根菜の野菜です。旬は秋~冬にかけてで、複数の穴が空いていることから「将来の見通しが良い」といわれ、おせち料理にも登場する縁起の良い食べ物です。
れんこんは、地面の下にある蓮(ハス)の茎が栄養を得て大きくなった部分をいいます。見た目が根に似ているので蓮根(れんこん)とよばれるようになりましたが、厳密にいうと蓮の茎であり、根ではありません。
この記事では、猫にれんこんを与えるときのおすすめの部分や方法、栄養素やメリット、与えるときの注意点をご紹介します。
れんこんのおすすめの与え方
れんこんを食べたとき、「いつもより柔らかい」「今日は歯ごたえがある」など食感の違いを感じたことはありませんか?
実は、れんこんは部位によって味や食感、栄養素が異なります。猫の好みによって与える部位を変えたり、手作りごはんに取り入れてみましょう。
1節目:生食がおすすめ
1節目は繊維が細く、生で食べることがおすすめです。細かくカットしたり、すりおろしましょう。水分が多く含まれているため、普段あまり水を飲まない猫に水分補給としても活用できます。
またシャキシャキと歯ごたえがあるため、キャットフードにトッピングすることで、キャットフードへの食いつきが悪い猫に食欲促進が期待できます。
2節目:シャキシャキともっちり
2節目は、シャキシャキ感と粘り気のもっちり感の両方の特徴を持つ部分です。
3節目:加熱調理がおすすめ
3節目はでんぷん質の密度が高いため、茹でるなどの加熱調理をするともっちりとした食感になります。また加熱調理により香りが増すので、食欲促進にも期待ができます。
加熱後は、粗熱が取れるまでしっかりと冷ましてから与えましょう。
れんこんの栄養素とメリット
下表は、生のれんこんと茹でたれんこん100gあたりの栄養素です。
れんこん(生) | れんこん(ゆで) | ||
---|---|---|---|
エネルギー | 66 | 66 | kcal |
炭水化物 | 15.5 | 16.1 | g |
カリウム | 440 | 240 | mg |
ビタミンC | 48 | 18 | mg |
水溶性食物繊維 | 0.2 | 0.2 | g |
不溶性食物繊維 | 1.8 | 2.1 | g |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
ビタミンC:強い抗酸化作用
れんこんに含まれるビタミンCは、みかんの約1.5倍です。
ビタミンCは強い抗酸化作用があります。体内の活性酵素を除去し、細胞の生成や修復を行うため、皮膚や被毛の健康維持、がん・老化予防に効果があります。
猫は体内でビタミンCを合成することができるため、ビタミンCが欠乏することはほとんどないでしょう。しかし成長期の子猫や妊娠・授乳中の母猫、合成能力が低下しているシニア猫は、通常よりもビタミンC摂取量を多く取らなければなりません。
ビタミンCは熱に弱いですが、れんこんに含まれるでんぷんがビタミンCを熱から守るため、加熱調理してもほとんど失われません。
食物繊維:腸内環境の改善
れんこんには水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が含まれており、1節目よりも3節目に多く含まれています。
- 水溶性食物繊維:水に溶けてとろみを出し、ゲル状に固まる
- 不溶性食物繊維:水分を吸収して膨らみ、腸を刺激して便を固める
猫は水を飲む習慣があまりないこと、また毛づくろいで毛玉が胃の中に溜まりやすいことなどから、便秘になりやすいといわれています。れんこんは便秘気味の猫に与えると効果を発揮するでしょう。
しかし、食物繊維は体内で消化吸収することができないため、与えすぎると消化不良により嘔吐や下痢になる恐れがあります。使う部位や頻度を変更することで、食物繊維の摂取量をコントロールするようにしましょう。
タンニン:止血作用
れんこんにはタンニンとよばれるポリフェノールの一種が含まれています。れんこんを切ったときに黒く変色するのは、タンニンによるものです。
タンニンは止血作用や炎症抑制作用があり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防に効果があります。
「れんこんのネバネバ成分はムチン」は間違い!
ムチンは動物界だけに存在する成分
胃液のような動物粘液の主成分が糖タンパク質で、それをムチンと呼ぶことは科学的に正当であるが、唯一わが国だけでは、野菜や根菜類全般の「ねばねば成分」をムチンと呼ぶ誤った用法が蔓延しており、消化器官の健康解説、調理レシピ、食材や健康食品の効能紹介、地方特産野菜広告など、媒体を問わず、多数の掲載例がある。科学的には、ムチンは動物界だけに存在し、植物やキノコ類には見出されていないのが現状である。(中略)山芋の粘液成分は、マンナン(多糖類、食物繊維の一種)とタンパク質の混合物であるとされた。
「れんこんのネバネバ成分はムチン」という誤った情報が日本中に広まっています。これは山芋やオクラもれんこん同様です。
れんこんのネバネバ成分が胃腸の保護や免疫力の向上、消化促進などムチンと似た健康効果を持つこと、またれんこんや山芋、オクラは健康に良いネバネバ食材として認識されやすく、それがムチンと関連付けられたことが、間違って広まったと考えられます。
れんこんのネバネバ成分はペクチンや多糖類
れんこんのネバネバ成分は水溶性食物繊維の一種であるペクチンで、主に野菜や果物に多く含まれています。
ペクチンは腸内の善玉菌を増やして腸内環境の改善をしたり、血糖値の急上昇を防ぎ、食後の血中コレステロールの低下などの効果があります。またビタミンCも含まれているので、抗酸化作用や美肌効果、風邪予防にもなります。
ペクチンの粘り気は胃腸の保護にも役立ち、とくに胃腸が弱いときに食べるのが効果的です。
猫にれんこんを与えるときの注意点
アク抜きは水で
れんこんを調理するとき、酢水にさらすことで苦味やえぐみを取り除き、変色を防ぐことができます。しかし酢には塩分や糖分が含まれているので、酢を食べると体調不良になる恐れがあります。
また酸っぱい匂いがれんこんに移り、食べなくなる可能性があります。れんこんをアク抜きするときは、酢水ではなく水にさらすようにしましょう。
与えすぎは肥満の原因に
れんこんには糖質であるデンプンが豊富に含まれているので、野菜の中でも比較的カロリーが高いものです。猫は糖質をエネルギーに変換することができ、猫にとって糖質は筋肉を動かしたり疲労を回復するのに欠かせない栄養素です。
しかし摂取しすぎたエネルギーは脂肪となるので、猫の運動量に合わせてれんこんを与えましょう。
れんこんを与える頻度は1~2週間に1回程度にし、キャットフードへのトッピングやおやつとして活用しましょう。
与えすぎは肝臓・腎臓障害の恐れが
れんこんに含まれるタンニンは止血作用や炎症抑制作用がありますが、過剰摂取すると肝臓障害や腎臓障害につながる恐れがあります。
腎臓病を患っている猫には与えない
腎臓病を患っている猫は、腎臓機能の低下によりカリウムを十分に排出することができません。そのため、カリウムを過剰摂取すると高カリウム血症になる恐れがあります。
れんこんにはカリウムが豊富に含まれているので、腎臓病を患っている猫には与えないようにしましょう。
まとめ
- れんこんは生でも茹でても食べても大丈夫
- れんこんの部位によって食感や栄養素が異なる
- れんこんの栄養素は老化予防や腸内環境の改善に期待できる
- 過剰摂取は肥満になったり、肝臓や腎臓障害の恐れがある