キャットフードのタウリン。猫はタウリンを欠かせない!なぜ必要?不足したら?

キャットフードのタウリン。猫はタウリンを欠かせない!なぜ必要?不足したら?

猫に欠かせない栄養素タウリン(taurine)

鈴木さん
 ほとんどのキャットフードにはタウリンという成分が含まれていますよね。タウリンは、猫にとって重要な栄養素なのでしょうか?
猫田
 タウリンは脳や心臓、目、肺、肝臓、骨髄など、生命維持に関わるほとんどの組織に豊富に存在している栄養素です。猫にとって、タウリンは欠かしてはいけないものです。
この記事ではタウリンが猫にとってなぜ重要なのか、不足するとどうなるのか、とくに必要になるのはどんな子なのかをご紹介します。

タウリンとは?

タウリンは必須栄養素

 

タウリンは、別名「アミノエチルスルホン酸」といいます。キャットフードではアミノ酸の一つとして記載されることが多いですが、厳密にはアミノ酸には分類されません。

タウリンは必須アミノ酸に匹敵するほどの重要な作用を持っています。そのため、猫の必須アミノ酸10種にタウリンを合わせた11種とされています。

昔は今ほど猫やペットフードの栄養・改良が進んでおらず、タウリンも猫の栄養素として重要視されていませんでした。しかしそのころ、原因不明の心臓病で亡くなる猫が多く、獣医師が研究したところタウリンの不足によるものということが判明しました。そのため、タウリンは猫にとって重要な栄養素となりました。

猫はタウリンを合成できない

人間や犬は体内でタウリンを合成する酵素を持っていますが、猫はその合成する酵素をほとんど持っていません。

もともと猫は肉食動物で、野生の獲物(生肉や魚)から十分な量のタウリンを摂取していました。そのため体内でタウリンを合成する必要がなく、進化したといわれています。

現在の猫も肉食動物としての食性を持ち続けているため、タウリンが含まれている食べ物を摂取することが必要となります。

日本のキャットフードでは、ペットフードの栄養基準やラベル表示に関する基準を定めているアメリカの団体AAFCO(米国飼料検査官協会)によって、キャットフードにタウリンを入れるよう栄養基準が定められています。

  • ドライフード:0.1%以上
  • ウェットフード:0.2%以上

タウリンの栄養効果は?

タウリンの栄養効果

  • 疲労感の軽減
  • 血圧の正常化
  • 視力の衰えを防ぎ、網膜の成長のサポート
  • 中性脂肪値や悪玉コレステロール値の減少
  • 血糖値の調整に必要なインスリンの分泌に関わる
  • 肝臓の解毒能力のサポート
  • 肝細胞を保護し、再生を促す
  • 肝臓の胆汁酸の分泌を促し、消化やエネルギー代謝のサポート

このようにタウリンは一つの器官に作用するのではなく、体のあらゆる器官に存在して効果を発揮します。

猫田
 人間用の健康食品や栄養ドリンクにも、「タウリン○○mg配合」と大きく記載される成分としておなじみですよね。疲労回復ができてファイトが出てきそうなイメージが強いですが、これはタウリンが肝臓の働きをサポートし、食べ物をエネルギーに変換しているのです。

必要なときに、必要な器官で、必要な量だけ作用する

タウリンは必要なときに、必要な器官で、必要な量だけ作用します。タウリンを過剰摂取してしまったとしても、必要な量以上は尿として体外に排出されます。

AAFCOが定めたタウリンの栄養基準に上限がありませんが、多くを摂取すれば良いというわけではありません。継続的な過剰摂取はしないようにしましょう。

タウリンはどんな食べ物に含まれている?

タウリンは肉類や魚介類に多く含まれ、あさりやホタテなどの貝類や、イカやタコなどにも含まれています。手作りごはんを猫に与えるときは、これらの食べ物を取り入れてみましょう。

しかし生食は中毒を引き起こす恐れがあるので、必ず十分に加熱して与えてください。

猫はタウリンが不足するとどうなる?

猫はタウリンが不足すると「タウリン欠乏症」になり、さまざまな病気を引き起こす恐れがあります。タウリンは体のあらゆる器官に存在し作用するため、不足するとあらわれる症状もさまざまです。命に関わる症状もあるため、タウリンが不足しないよう食べ物からの摂取は十分に意識しなければなりません。

拡張型心筋症

心臓はほとんどが心筋とよばれる筋肉で構成されていますが、その筋肉の収縮力が低下することで、血液を全身に循環させることができなくなる心臓病です。

初期症状はほとんどが無症状で、進行すると元気や食欲の消失、口を開けて呼吸をする、よだれが出るなどの症状があらわれ、悪化すると心不全となります。

鈴木さん
拡張型心筋症は、きちんとタウリンを摂取するようになった現在では激減しています。過去の原因不明の病気が現在では解明され、栄養や食べ物によって予防できるようになったのは素晴らしい功績ですね。

進行性網膜萎縮症

進行性網膜萎縮症は、眼球の内側にある網膜が薄くなり、視力障害が起こる病気です。遺伝性網膜変性症、遺伝性網膜症ともよばれます。網膜萎縮が起こると水晶体が変性し、白内障や緑内障、ブドウ膜炎になる恐れがあります。

犬の場合はほとんどが先天性な遺伝によるものですが、猫の場合は後天性が多くみられます。しかし、ペルシャやアビシニアンは遺伝的に発症しやすいといわれています。

これらの病気は一度発症すると回復が難しいため、予防が非常に重要となります。 

タウリンがとくに必要なのはどんな子?

日本のほとんどのキャットフードには、AAFCOの栄養基準に則ってタウリンが最低基準が含まれています。そのためタウリン不足による病気の発症は激減していますが、下記のような猫はタウリンが不足している可能性があります。

  • キャットフードへの食いつきが悪い子
  • おやつばかりを食べていて、食生活に偏りがある子
  • 継続的に手作りごはんを食べている子
  • 体調不良などで下痢や嘔吐を繰り返している子
  • 内臓機能の低下により、十分に消化・吸収できないシニア猫
  • 細胞分裂や増殖が活発な成長期の子猫
  • 胎児の成長のために細胞分裂や増殖が活発な妊娠・授乳中の猫

まとめ

  • タウリンは生命維持に関するあらゆる器官に存在し、作用する
  • タウリンは猫の必須アミノ酸に匹敵するほどの作用を持つ
  • ほとんどのキャットフードにはタウリンが含まれている
  • キャットフードを食べていればタウリンが不足することはほとんどない
  • タウリンが不足している恐れがある子は注意が必要

ABOUTこの記事をかいた人

古川菜々

愛玩動物飼養管理士2級、ペットセラピスト、ペット看護士、愛犬飼育スペシャリスト、キャットフード勉強会ディレクターとして、キャットフードに関する情報を提供しています。帝京科学大学アニマルサイエンス学科卒業。文章を通して猫ちゃんの魅力を発信し、また多くの飼い主さんの悩みや不安を解決することで、飼い主さんと猫ちゃんの幸せのお手伝いになれれば嬉しいです。