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キャットフードの原材料:ホタテ(scallop)
ホタテとは正式には帆立貝(ホタテガイ)とよばれるイタヤガイ科の二枚貝です。キャットフードに原材料としてホタテを使っていたり、おやつにホタテ味のものがあったり、猫はホタテを好みます。
今回はホタテの貝柱に含まれる栄養素やメリット、与えるときの注意点をご紹介します。
猫にホタテを与えるメリット
下表は、加熱したホタテ100gあたりの栄養素です。
加熱したホタテ | ||
---|---|---|
エネルギー | 123 | kcal |
水分 | 67.8 | g |
たんぱく質 | 23.8 | g |
脂質 | 0.3 | g |
食塩相当量 | 0.4 | g |
カルシウム | 13 | mg |
マグネシウム | 56 | mg |
鉄分 | 0.3 | mg |
葉酸 | 41 | μg |
ビタミンB12 | 2.1 | μg |
グリシン | 2600 | mg |
タウリン | 670~1000 | mg |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
タウリンは疲れを軽くする
タウリンとは、人間用の栄養ドリンクとして使われるおなじみの成分です。血圧の正常化、視力低下の予防、中性脂肪値やコレステロール値を減らす作用を持ち、体の疲れを軽くします。
ホタテに含まれるタウリン量は100gあたり670~1,000mgです。北海道立水産試験場の研究報告によると、北海道のオホーツク地域で獲れたホタテのタウリン量は900~1,100mgだそうです。これは栄養ドリンクに含まれるタウリン量に匹敵するといわれています。
猫は体内でタウリンを作ることができないため、キャットフードには必ずタウリンが入っています。体内で必要なときに必要な場所で作用し、不要となったタウリンは排出されるため過剰摂取になる危険性はありません。キャットフードをきちんと食べていれば不足することはありませんが、食欲が落ちている場合やキャットフードへの食いつきが悪い場合はタウリン摂取量が不足し、タウリン欠乏症を発症します。
グリシンは睡眠を深くする
グリシンは犬猫用の歯磨き粉に含まれている成分です。心地よい睡眠を促進し、睡眠を深くする働きがあります。
ホタテに含まれるグリシンは、すべての食べ物の中で第30位というトップクラスの含有量を誇ります。ちなみに、ホタテの貝柱の煮干しは7300mgと第2位の含有量ですが、人間用の加工品なのでカロリーが高く調味料が入っているため、猫に与えてはいけません。
高たんぱく・低カロリー・低脂質
ホタテは他の食材と比べて、高たんぱく・低カロリー・低脂質です。
100gあたり | エネルギー(kcal) | たんぱく質(g) | 脂質量(g) |
---|---|---|---|
ホタテ | 123 | 23.8 | 0.3 |
豚肉(もも・赤肉・生) | 133 | 21.9 | 5.3 |
牛肉(もも・赤肉・生) | 176 | 21.3 | 10.7 |
鶏卵(全卵・生) | 142 | 12.2 | 10.2 |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
肉食動物である猫にとって、たんぱく質の摂取はとても重要になります。ホタテに含まれるたんぱく質量は、たんぱく質を多く含む肉類にも負けないほどです。高たんぱく・低カロリー・低脂質なうえに塩分も少ないので、ダイエット中の猫におすすめの食材です。
葉酸は「造血のビタミン」
葉酸とはビタミンB群の仲間で、赤血球を作るため「造血のビタミン」ともよばれています。貧血の予防やDNAの合成、細胞の生成や再生をサポートします。
葉酸は蓄積に限度があるので、過剰な分は排出されてしまいます。そのため、細胞分裂が活発に行われる成長期の猫や妊娠・授乳中の猫は、赤ちゃんの成長のために食べ物から葉酸を摂取する必要があります。
猫が食べられるのはどの部位?
猫には貝柱がおすすめ
ホタテには貝柱、生殖巣、外套膜(ヒモ)、中腸腺(ウロ)、蝶つがい、眼などの部位があります。
猫が食べても大丈夫なのは、ホタテの貝柱とヒモです。必ず加熱してから与えてください。焼くよりも茹でる方がおすすめです。ゆで汁も一緒に与えることで、香りがたって食欲促進が期待できます。
またホタテに含まれるタウリンは、加熱によって作用が失われることはないのも嬉しいポイントです。
ホタテのヒモは細かくカットする
ヒモは貝柱と同じように旨味が凝縮しているため、猫が食べても大丈夫です。必ず加熱してから与えましょう。ヒモは歯ごたえがあって硬いので、与えるときは必ず細かくカットしてください。
猫にホタテを与えるときの注意点
生殖器、エラ、ウロには毒が含まれている
人間の場合は貝柱とヒモの他に、生殖巣とエラも食べることができますが、生殖巣とエラには猫にとっては毒となる成分が含まれているので与えてはいけません。
またウロには貝毒とよばれる毒が入っているため、人間も猫も食べることができません。絶対に与えないようにしましょう。
生のホタテは与えない
生のホタテに限らず、ハマグリやアサリ、しじみなどの貝類に含まれているチアミナーゼは、ビタミンB1を破壊する酵素です。ビタミンB1は食べ物の糖質を分解しエネルギーに変換する働きを持ちます。ビタミンB1は体内で合成することができないため食べ物から摂取しなければならないのですが、生のホタテを食べるとビタミンB1がどんどん欠乏してしまいます。
チアミナーゼは加熱すると死滅するので、猫に与えるときは必ず焼いたり茹でてから与えるようにしてください。
加工品、水煮缶は塩分が多い
人間用のおつまみのホタテ貝柱やヒモの干物などのホタテの加工品は、絶対に与えてはいけません。塩分や調味料などが入っているため猫には害となり、体調を崩してしまいます。おねだりされても与えないようにしましょう。
また、ホタテの水煮缶に入っているホタテの貝柱は塩茹でしたものです。身だけでなく汁も旨味たっぷりで美味しいのですが、塩分が多く保存料が入っているため猫の健康には悪影響となります。
「猫に貝類を与えると耳が落ちる」と言われる理由
「猫は猫舌」や「猫はグルメ」など、猫には食べ物に関わるさまざまなウワサがあります。いくつもあるウワサの中で、今回着目するのは「猫に貝類を与えると耳が落ちる」。
このウワサは、結論から言うと半分事実です。
これは「光線過敏症」といって、アワビやサザエ、トコブシなどのミミガイ科の貝を食べるとピロフェオホルバイドαという成分が紫外線と反応して活性化することで、炎症が起きます。被毛が少なく皮膚が薄い耳に痒みや腫れがあらわれ、症状が悪化すると耳を頻繁に掻きむしるほどの炎症が起こり、壊死してしまったり耳が取れてしまうことがあります。このような症状から、「猫に貝類を与えると耳が落ちる」といわれるようになりました。
ホタテはアワビやサザエなどと同じ貝類ですがイタヤガイ科なので、光線過敏症になることがありません。
まとめ
- 猫が食べても大丈夫なのはホタテの貝柱とヒモで、与えるときは必ず加熱する
- ホタテは高たんぱく・低カロリー・低脂質なのでダイエットにおすすめ
- 生のホタテには、チアミナーゼとピロフェオホルバイドαという毒が入っている