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キャットフードの原材料:トナカイ(reindeer)
食料や移動手段として重要な存在
トナカイは北極圏やその周辺地域に生息するシカ科の動物で、別名カリブーとも呼ばれます。寒冷地に適応した厚い被毛と大きな蹄を持ち、雪の上でも安定して歩くことができます。夏は苔や草、冬は地衣類(コケ)を主食とし、広範囲を移動する回遊性を持つのも特徴です。
人間とは古くから関わりがあり、北方民族の生活においては食料や移動手段として重要な存在とされてきました。
猫とトナカイが共存する地域がある
フィンランドやノルウェーの北部、ラップランド地方では、猫が家の中で大切なペットとして飼われ、一方で、外の雪原にはサーミ民族などによって半野生的に飼育されるトナカイの群れが放牧されています。
この地域では、室内で静かに暮らす猫と、広大な屋外で生きるトナカイが互いに干渉せず、それぞれの生態を保ちながら共に存在しています。
トナカイが原材料のキャットフード例
キャットフードの原材料としては珍しいトナカイ肉。「新奇たんぱく源」として注目されており、アレルギー対策用のキャットフードにも使用されています。
など
「新奇たんぱく源」とは?
新奇たんぱく源とは、猫がこれまでに摂取したことがない、体にとって「新しい」たんぱく資源のことを指します。英語では「novel protein(ノベルプロテイン)」と呼ばれます。
新奇たんぱく源がキャットフードの原材料に使用される場合、その多くは食物アレルギーの対策として使われます。
猫が特定の動物性たんぱく質(鶏肉や牛肉、魚など)にアレルギー反応を示す場合、過去に摂取したことのないたんぱく質を与えることで、アレルゲンとの接触を避けることができます。
トナカイの栄養素と猫への健康効果
- 高タンパク・低脂肪で筋肉の維持に役立つ
- 鉄分が豊富で、貧血予防や血液作りに貢献
- ビタミンB群が代謝や神経系の働きを助ける
- アレルギーの原因になりにくい
- 野生由来の栄養素で免疫力の維持に貢献する
猫の健康を支える上質なたんぱく源として、特にアレルギー体質の猫や消化に敏感な猫に適しています。
必須脂肪酸やビタミンが豊富で、低脂肪
トナカイ肉は脂肪分がわずか2%と非常に赤身で、牛肉やラム肉よりもはるかに低脂肪です。それでいて、オメガ・オメガ6などの必須脂肪酸を豊富に含み、猫の皮膚や被毛の健康を保ち、炎症を抑える働きがあるとされています。
また、トナカイ肉はビタミンB12の含有量が非常に高く、子牛肉や羊肉の2倍以上。さらに鉄分、亜鉛、セレンなどのミネラルも豊富に含まれ、貧血や免疫機能の維持にも役立ちます。
これらの栄養価の高さは、トナカイが冬に地衣類(コケ)を、夏には緑の植物を食べるという自然な食生活によるものです。地衣類は消化を助け、体内にミネラルを蓄積させる働きがあるため、その恩恵が肉にも反映されています。
参考:Reindeer meat is as healthy as fish
とくに肝臓は栄養の宝庫
また、研究によると、トナカイの肝臓や脂肪、骨髄は肉よりもさらに多くのビタミンやミネラルを含み、とくに肝臓はビタミンA・B群・C、鉄分、セレンなどの宝庫であることがわかっています。トナカイ由来の原材料は猫にとって健康的なたんぱく源になる可能性があります。
参考:Level of selected nutrients in meat, liver, tallow and bone marrow from semi-domesticated reindeer
トナカイ肉キャットフードの注意点
トナカイには多くの栄養や健康効果がある一方で、デメリットもあります。
まず一つは、「新奇たんぱく源=絶対に安全」というわけではないこと。過去に摂取歴がないためアレルギーを起こす可能性は低いとされますが、その動物に対して先天的に過敏反応を起こすこともあります。
また、ジビエ肉以外の肉(鶏肉や豚肉、牛肉など)と比べると安定的な供給が難しい点も挙げられます。野生動物の捕獲の制限量にひっかかったり、一定量以上のキャットフードが生産できず在庫切れになる可能性もあります。
メリットとデメリット、どちらも考慮したうえで、猫に合うキャットフードを選んであげましょう。
ジビエ肉のメリットとデメリットについてさらに詳しい詳細は、下記の記事をご参照ください。
まとめ
- トナカイ肉は脂肪が2%と非常に赤身
- 必須脂肪酸が豊富で、皮膚や被毛の健康維持に役立つ
- ビタミンB12は子牛肉の2倍以上含まれ、貧血予防にも効果的
- セレンや鉄などのミネラルも多く、免疫や代謝のサポートに有効
- トナカイの自然な食生活により、栄養価の高いたんぱく源となる