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キャットフードの原材料:サワラ(spanish mackerel)
サワラはサバ科に分類され、体長50cmまでをサゴシ、70cmまでをヤナギ、70cm以上のものをサワラと呼ばれる出世魚です。見た目やあっさりした味から白身魚と思われがちですが、実は赤身魚というギャップが面白い魚です。
サワラはキャットフードの原材料として使用されたり、フィッシュミールや複数の魚と一緒に使用されることが多いです。また、サワラパウダーでフレーバーを付けているキャットフードもあります。
この記事では、猫にサワラを与えるメリットや栄養素、おすすめの与え方や注意点をご紹介します。
サワラが原材料のキャットフード:アーガイルディッシュ/ワトルキャット
サワラが原材料として使用されているキャットフードは、アーガイルディッシュ/ワトルキャット(Aegyle Dishes/Wattle CAT)です。
アーガイルディッシュはオーストラリアのペットフードメーカーで、アーガイルディッシュ/ワトルキャットの主な原材料はカンガルー肉とラム肉ですが、オーストラリアで主流な魚であるサワラも使用されています。
たんぱく質が36%でありながら脂質は11%、100gあたり348kcalで、とてもヘルシーなキャットフードです。避妊・去勢した猫や太りやすい体質の猫、運動量が少ない猫におすすめのキャットフードです。
サワラの栄養素とメリット
サワラは栄養価が高く、中毒となる成分が含まれていないので、猫はサワラを食べても大丈夫です。サワラはスーパーなどでも安易に購入できるので、ぜひ与えてみましょう。
生のサワラにはアニサキスなどの寄生虫が付着している可能性があるため、猫にサワラを与えるときは必ず加熱処理しましょう。
下表は、サワラ/焼き100gあたりの栄養素です。
エネルギー | 184 | kcal |
たんぱく質 | 23.6 | g |
脂質 | 10.8 | g |
カリウム | 610 | mg |
ビタミンD | 12.0 | μg |
ビタミンB2 | 0.34 | mg |
エイコサペンタエン酸(EPA) | 360.0 | mg |
ドコサヘキサエン酸(DHA) | 1200.0 | mg |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
カリウム:血中濃度を調整する
カリウムは体内に溜まったナトリウムの排泄を促します。それにより塩分の取りすぎを抑制して血中濃度を調整したり、血圧を下げる効果があります。体内に摂取しすぎたカリウムは、腎臓の働きにより尿とともに排出されます。
総合栄養食であるキャットフードを食べていれば不足することはありませんが、嘔吐や下痢などが続いている場合は十分な量のカリウムが吸収・消化されず、低カリウム血症となる恐れがあります。
また、腎臓病や心臓病を持つ猫は腎臓機能が十分に機能しないため、体内にカリウムが蓄積されると高カリウム血症を引き起こす恐れがあります。
ビタミンD:カルシウムの吸収を補助
ビタミンDは骨や歯の発達や維持に必要な脂溶性ビタミンです。猫は体内でビタミンDを生成することができないため、食べ物からビタミンDを摂取しなければなりません。
ビタミンDは、カルシウムの吸収をサポートする働きを持ちます。そのため、一緒に摂取することで骨がより丈夫なものになることが期待できます。
ビタミンDが不足するとカルシウムが吸収しずらくなり、骨粗しょう症などの骨の病気を引き起こす恐れがあります。総合栄養食であるキャットフードを食べていれば不足することはありませんが、キャットフードへの食いつきが悪い子や食欲が落ちている子などは、ビタミンDが不足してしまう恐れがあります。
ビタミンB2:さまざまな生化学反応に関与
ビタミンB2は猫の皮膚の健康維持や、被毛の質を高める働きがあります。
また脂肪からエネルギーを生成したり、体内の余分なたんぱく質を分解して排出など、体内のさまざまな生化学反応(生命維持、細胞増殖のための化学反応)に関与しています。
エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)
エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸は不飽和脂肪酸とよばれる脂質です。「脂質は体に悪いのでは?」というイメージが強いですが、血液をサラサラにする効果がある良質な脂質です。魚以外で豊富に含まれている食べ物はあまりないため、意識して摂取したい栄養素です。
血中コレステロールや中性脂肪の減少により、血栓形成や動脈硬化、認知症の予防に期待できます。また脳や網膜の発達に有効的であるため、子猫のうちから意識して摂取したい栄養素です。また、抗アレルギーや抗炎症の作用を持っています。
参考:PURINA Institute「ペットフード中の必須脂肪酸」
生のサワラを与えるのは絶対NG
スーパーなどでサワラが生食用で販売されていないのは、鮮度が落ちるのが早いためです。新鮮なサワラが手に入ったとしても、下記の理由により猫に生のサワラを与えることは絶対にNGとなります。
アニサキス中毒
生のサワラにはアニサキスなどの寄生虫が付いていることがあります。アニサキスは長さ2~3cmの白色の太い糸のようなもので、サワラに限らずさまざまな魚介類に寄生しています。寄生している魚介類が死亡して鮮度が落ちると、内臓から筋肉に移動します。
生きたアニサキスを食べると食後数時間で下痢や嘔吐、激しい腹痛などを引き起こします。アニサキスは加熱処理や冷凍処理で死滅させることができます。
ヒスタミン中毒
サワラに限らず、鮮度が落ちている魚を食べることでヒスタミン中毒を引き起こす恐れがあります。
魚の体内には、たんぱく質を構成するアミノ酸の一種ヒスチジンが含まれています。ヒスチジンは猫の皮膚の健康に効果がありますが、高温多湿の環境や長時間の常温保存などにより鮮度が落ちると、ヒスタミンという成分に変化します。
ヒスタミンは食中毒となる成分で、食べると下痢や嘔吐、皮膚の赤みや痒み、元気消失などの症状があらわれます。
ヒスタミンは加熱処理・冷凍処理しても活性が失われません。サワラを購入したらすぐに冷蔵庫に保存し、猫に与えるときは鮮度を確認して加熱処理してください。またヒスチジンは血合いの部分に多く含まれているので、食中毒のリスクを避けるためにも血合いの部分は与えないようにしましょう。
チアミナーゼ
サワラに限らず、ほとんどの生魚にはチアミナーゼという酵素が含まれており、体内のビタミンB1(チアミン)を破壊する性質があります。ビタミンB1は神経系の機能を正常に保つ栄養素で、不足するとビタミンB1欠乏症(別名チアミン欠乏症)になる恐れがあります。
ビタミンB1欠乏症になると食欲不振や嘔吐、足の麻痺、歩行困難、腹部屈曲などの症状があらわれます。
チアミナーゼは加熱処理することで活性を失うことができるので、猫に与えるときは必ず加熱処理しましょう。
サワラのおすすめな与え方
素焼き、または茹でる
猫にサワラを与えるときは、生ではなく必ず加熱処理が必要となります。フライパンで焼くときは油を敷かずに、素焼きにしましょう。少量の油でも猫の健康には害となります。またアルミホイルで包んで蒸したり、茹でることもおすすめです。必ず粗熱を取ってから猫に与えましょう。
加熱処理したサワラはふっくらとして口当たりがよく、香りも立つので食欲促進に効果があります。臭みや苦味も取れているので、嫌がらずに食べてくれるでしょう。
トッピングやおやつとして
総合栄養食以外のもの(トッピングやおやつ)としてサワラを猫に与えるときは、1日の総カロリー量の10%以内にしましょう。カロリーや脂質は低いですが、与えすぎると肥満の原因となったり、病気を引き起こす原因となります。
まとめ
- 猫にサワラを与えるときは、必ず加熱処理をする
- サワラの不飽和脂肪酸は良質な脂質で、中性脂肪の減少や抗アレルギーに効果がある
- 生食はアニサキス中毒やヒスタミン中毒、ビタミンB1欠乏症のリスクがある