キャットフードの酢(ビネガー)。猫が食べても大丈夫?原材料の使用目的と注意点

キャットフードの酢(ビネガー)。猫が食べても大丈夫?原材料の使用目的と注意点

キャットフードの原材料:酢(vinegar

酢とは、糖質を含む食材を原料としてアルコールを酢酸発酵させて作られる調味料で、主成分は酢酸です。穀物酢、米酢、リンゴ酢、バルサミコ酢など原料や製法により種類が異なります。

酢には抗菌作用や酸化防止効果があり、保存料としても利用されます。また消化を促進し、腸内環境を整える働きが期待されることから、健康食品やダイエット食材としても注目されています。

しかし、キャットフードの原材料としてはほとんど見かけません。

この記事ではキャットフード原材料に酢を使用する目的や健康効果、注意点をご紹介します。

酢が原材料のキャットフード

酢がキャットフードの原材料に使用されるのは稀です。原材料欄には酢ではなく、ビネガーと表記されることもあります。酢が原材料のキャットフードは下記以外では見つけることができませんでした。

キアオラの公式サイトには、酢を原材料に使用する目的はフレーバーの一種と公表しています。使用している酢について穀物酢、米酢、リンゴ酢など記載がないため、どのような酢を使っているのかは定かではありません。

酢を原材料に使用する目的

キャットフードの酢(ビネガー)。猫が食べても大丈夫?原材料の使用目的と注意点

細菌の繁殖抑制と保存性の向上

酢の主成分である酢酸は、天然の防腐作用があります。酸性度が高い酢を添加することでカビや細菌の繁殖を抑制したり、酸化を防いで劣化を遅らせる効果があります。そのため、キャットフードの保存性を向上させることが期待できます。

風味の調整

酢の酸味はキャットフードの風味を調整する目的でも使用されます。酸っぱい味や匂いを苦手とする猫は多いですが、猫の嗜好性によっては酸味がわずかに加わることで食欲が促進されることもあります

食いつきが落ちている猫におすすめです。

pHバランスの調整

酢をキャットフードに配合することでpHを調整し、酸性側に傾けることができます。

猫の尿においてpHバランスは重要な要素であり、尿がアルカリ性に偏るとストルバイト結石が形成されるリスクが高まります。酢を添加することでキャットフードを酸性側に傾け、尿のpHバランスが保たれることが期待されます。

消化促進

酢には消化をサポートする働きがあるとされています。酢に含まれる酢酸は胃酸の分泌を促進し、消化酵素の働きを活性化する効果があるため、食物の分解を助ける効果があります。

また、酢は腸内のpHバランスを調整し、腸内環境を整える働きも期待されます。これにより消化不良や便秘の予防につながります。

酢はキャットフードの原材料であまり使用されないのはなぜ?

猫は酸っぱい食べ物を好まない傾向

酢にはさまざまな健康効果やメリットがありますが、キャットフードの原材料としてほとんど使用されない理由は、猫は酢のような酸っぱい食べ物や匂いを好まないという特性のためです。

猫は甘味を感じる味覚受容体を持たないため酸味に対して敏感に反応し、不快と感じることが多いです。これは自然界で猫が腐敗した食べ物を避けるための本能的な防御反応ともいわれています。

酸っぱい匂いは腐敗の兆候と誤認される可能性があり、猫にとって拒否すべき対象となるのです。そのため酢の匂いを嗅ぐと猫が嫌がったり、近づかないことが多いです。ただし個体差があり、中には酢の匂いや味に興味を示す猫もいます。

猫 好きな食べ物 嫌いな食べ物

猫の好きな食べ物と苦手な食べ物!アミノ酸が多い食べ物が好きで刺激が強い食べ物が苦手

2020年6月9日

他成分や製造工程で代替可能

酢には保存性向上やpHバランスの調整、消化促進などの効果がありますが、これらの目的は他の成分や製造工程で代替することが可能です。

例えば、キャットフードの酸化防止が目的であればビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質が使用されることが多く、消化促進には酵素やプロバイオティクスが用いられることが多い傾向です。また尿路健康サポートにはミネラルバランスの調整が主流です。

飼い主さんの認識とニーズ

飼い主さんの間では「犬は酢を食べて大丈夫?」という懸念があるため、キャットフード選びにおいて不安感を抱いてしまう恐れがあります。これを避けるため、酢を使用しないメーカーが多い傾向です。

与えるときの注意点

初めは少量から試す

キャットフードの原材料に酢が使用される目的は、猫の栄養補給というよりも、キャットフードの保存性や食いつきの向上、pHバランスの調整です。

そのため、酢を与えれば与えるほど良いというわけではありません

酢を含むキャットフードが猫に合わない場合もあるため、初めて与えるときは少量から試してみることをおすすめします。

給与量を守る

キャットフードに使用される酢の量は通常ごく少量であり、猫の健康に悪影響を及ぼすことはほとんどないといえるでしょう。

しかしキャットフードは毎日食べるものなので、給与量をきちんと守らないと体内で蓄積されて過剰摂取となり、胃腸に負担がかかる可能性があります。とくに胃腸が弱い猫や高齢猫は注意が必要です。

人間用の酢は与えない

猫に人間用の酢を与えることは避けましょう。

舐めたのが少量であっても胃腸に大きな刺激を与え、吐き気や嘔吐、下痢などの軽い胃腸症状を引き起こす恐れがあります。とくに空腹時に摂取した場合、胃壁への刺激が強くなることがあります。

また味付けされた酢や濃度の高い酢は、塩分過多や香辛料による症状(過剰な喉の刺激や中毒)も懸念されます。

まとめ

  • 酢はキャットフードの原材料としてほとんど使用されない
  • 酢は細菌の繁殖抑制や高い保存性、pHバランスの調整などのメリットがある
  • 人間用の酢は与えない

ABOUTこの記事をかいた人

古川菜々

帝京科学大学アニマルサイエンス学科卒業。愛玩動物飼養管理士2級、ペットセラピスト、ペット看護士、キャットフード勉強会ディレクターとして、猫ちゃんの生態や栄養、病気、キャットフードなどの情報を提供しています。文章を通して猫ちゃんの魅力を発信し、また飼い主さんの悩みや不安を解決することで、猫ちゃんと飼い主さんの幸せのお手伝いになれれば嬉しいです。