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キャットフードの原材料:ひじき(hijiki seaweed)
ひじきとは、褐藻類ホンダワラ科に属する海藻の仲間です。縄文時代から食べられていたといわれ、日本人にとっては歴史が深く、馴染みのある食べ物です。ひじきはさまざまな料理で使いやすく、その用途によって乾燥ひじきや茹でたひじきなどが販売されています。
猫はひじきを食べても大丈夫です!乾燥ひじきではなく、茹でたひじきを与えましょう。
この記事では、猫の健康に効果があるひじきの栄養素やおすすめの食べ方、与えるときの注意点、ひじきに含まれる有害化学物質ヒ素についてご紹介します。
ひじきの栄養素とメリット
ひじきはステンレス窯、もしくは鉄窯で作られます。以前までは鉄窯で作られるのが主流でしたが、ステンレス窯の方が耐食性に優れ、異物混入を防ぐことができるため、現在はステンレス窯が推進されています。
下表は、ステンレス窯と鉄窯においての茹でたひじき100gあたりの栄養素です。
ステンレス窯 | 鉄窯 | ||
---|---|---|---|
エネルギー | 11 | 13 | kcal |
カリウム | 160 | 160 | mg |
鉄分 | 0.3 | 2.7 | mg |
β-カロテン | 330 | 330 | μg |
ビタミンK | 40 | 40 | μg |
食物繊維 | 3.7 | 3.7 | g |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
カリウム
カリウムの利尿作用によって、体内の水分量を調節する働きを持ちます。体内の過剰なナトリウムの排出をすることで血圧を適正に維持します。
また尿と一緒にカルシウムが排出されてしまうのを防ぐため、脳卒中や骨粗しょう症の予防に期待できます。
鉄分
鉄分とは、血液中の赤血球を作るヘモグロビンの材料です。ヘモグロビンは体中に酸素を運ぶ働きがあり、鉄分が不足すると酸素が十分に行き渡らなくなるため、結膜や歯肉が白っぽくなったり、歩き方がふらふらしていたり、貧血や疲れやすいなどの症状があらわれます。
β-カロテン
ひじきに含まれているβ-カロテンは抗酸化作用があり、日々の生活環境やストレス、運動不足、睡眠不足などによって体内に蓄積された活性酵素を除去します。細胞の生成や修復を行うため、老化やがん予防に期待できます。
ビタミンK
ビタミンKは骨の形成や丈夫さに関わっているため、骨粗しょう症の予防に役立ちます。
また、ケガなどで出血したときに傷口付近の血を固めて止血する凝固因子を作り出します。
食物繊維
食物繊維を摂取することで腸内環境を整え、便秘の解消に効果的です。猫は水を飲む習慣があまりなく、また毛づくろいで飲み込んだ毛が腸に溜まる傾向にあるという点から、便秘になりやすいといわれています。
また血糖値の上昇の抑制や、コレステロール値の低下などにも効果的なので、ダイエット中や肥満気味の猫におすすめです。
「ひじきは鉄分が多い」は間違い!?
「ひじきは鉄分が多い」「鉄分不足のときはひじきを食べよう」というイメージが強い方も多いのではないでしょうか。
ひじきは「ステンレス窯で作られたか」「鉄窯で作られたか」によってカロリーやミネラル、ビタミンにはほとんど差がありませんが、鉄分量が大きく異なります。猫が食べることができる茹でたひじきの鉄分量は、他の食べ物と比べても特別に多いとはいえません。
鉄分量(mg) | |
---|---|
茹でたひじき(鉄窯) | 2.7 |
茹でたひじき(ステンレス窯) | 0.3 |
パセリ | 7.5 |
牛肉(生・赤身) | 2.8 |
カツオ(生) | 1.9 |
豚レバー | 7.7 |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
これは、ひじき自体に鉄分が多いというわけではなく、ひじきに鉄窯の鉄分が付着したためです。そのため、「ひじきは鉄分が多い」というイメージは間違っているのです。猫に鉄分だけを重点的に与えたい場合は、ひじきではなく豚レバーやパセリの方が効果的です。
ひじきのおすすめの与え方
鉄分は、大豆や豆乳などの大豆製品に多く含まれる「大豆サポニン」と一緒に摂取することで、体内でより吸収しやすくなります。大豆サポニンは鉄分などのミネラル分の吸収をサポートし、貧血の予防、丈夫な体作り、疲労回復などに、より効果を発揮することができます。
おすすめの与え方は、ひじきと大豆のスープです。栄養だけでなく温かいスープも摂取することができ、胃を温めて消化を促進することができます。ぜひご家庭で試してみてください。
ひじきを与えるときの注意点
乾燥ひじきは与えない
猫に乾燥ひじきを与えてはいけません。乾燥ひじきを食べるとお腹の中で膨らみ、消化不良や腸閉塞になる恐れがあります。乾燥ひじきをフードプロセッサーで細かくしてふりかけとして与えるのもおすすめできません。
ひじきは水戻しをして、しっかりと茹でたものを与えるようにしましょう。
人用に調理されたひじきは与えない
スーパーのお惣菜コーナーで売られているひじきの煮物や、ご家庭で作る人間用のひじき料理は、猫にとっては塩分や糖分などの過剰摂取となり、健康に害を及ぼす恐れがあります。猫にひじきを与えるときは、味付けがされていないものを与えるようにしましょう。
海藻に含まれるヒ素。ひじきは大丈夫?
ヒ素は有害化学物質の一種で、短期間に過剰摂取すると下痢や嘔吐、ショック、皮膚の角化、腎不全などの症状があらわれ、最悪の場合は死に至ります。
ヒ素は海藻に多く含まれていますが、その中でもひじきに多く含まれています。心配される方も多いですが、手作り食やおやつ、キャットフードにトッピングなどのように、食べ物を通して摂取した少量のヒ素による健康被害は心配する必要はありません。
下表は、日本ひじき協議会が発表した、ひじきに含まれるヒ素の量です。
- ヒジキに含まれるヒ素の総量:54.84(μg/g)
- 水戻し(30分)で流出する量:24.65(μg/g)
- 水戻し後のヒジキに残るヒ素量:30.19(μg/g)
日本ひじき協議会の研究によると、乾燥したヒジキを水戻しすると総ヒ素量の約45%(約30μg/g)が水に流れ出すことが分かりました。
ひじきに限らずですが、短期間の極端な過剰摂取などを避ければ、とくに問題はありません。「どうしても心配」「できるだけヒ素の摂取を抑えたい」という場合は、ヒ素は水溶性なので水洗いや水戻し、茹でこぼしなどをすることでヒ素を減らすことができます。
まとめ
- 猫に与えるのは茹でたひじきで、乾燥ひじきは与えてはいけない
- 食物繊維が多いひじきは、便秘気味や肥満気味の猫におすすめ
- ひじきに含まれるヒ素は、短期間の極端な過剰摂取を避ければ健康に害はない