山芋(Japanese Yam)
山芋はヤマノイモ科ヤマイモ属に分類されます。日本では古くから食べられてきた馴染みのある食べ物で、「山のうなぎ」といわれるほどの高い栄養価を持っています。生で食べるとシャキシャキ、加熱するとホクホクと、食感の違いも楽しめる食材です。
山芋はキャットフードの原材料として使用されているのはほとんどみかけませんが、おやつやふりかけの原材料として使用されることがあります。
山芋の栄養素や与えるメリット、おすすめの与え方、注意点をご紹介します。
山芋の栄養素とメリット
下表は長芋(生)、大和芋(生)100gあたりの栄養素です。
長芋 | 大和芋 | ||
---|---|---|---|
エネルギー | 64 | 119 | kcal |
炭水化物 | 13.9 | 27.1 | g |
カリウム | 430 | 590 | mg |
ビタミンB1 | 0.1 | 0.13 | mg |
ビタミンC | 6 | 5 | mg |
食物繊維 | 1 | 2.5 | g |
アルギニン | 200 | 590 | mg |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
カリウム
カリウムはミネラルの一種で、体中に最も多く存在します。体内の水分量や血圧の調整して一定に保ったり、神経刺激の伝達やエネルギー代謝などさまざまな働きを持ちます。またカルシウムが尿と一緒に排出されてしまうのを防ぐため、骨粗しょう症や脳卒中の予防に効果的です。
体内のカリウムが不足すると、低カリウム血症になる恐れがあります。カリウムが不足する原因は、偏った食生活でカリウムを十分に摂取できていないこと、腎臓や副腎の機能低下、体調不良などで下痢や嘔吐が続くことで多量のカリウムが排出されると、体内のカリウムが不足してしまいます。
猫はカリウムが不足することは稀といわれていますが、シニア期に入ると腎臓機能が低下して低カリウム血症になりやすいので注意が必要です。
ビタミンB1
ビタミンB群は8種類あり、サポートし合いながら作用します。ビタミンB1は食べ物の糖質をエネルギーに変換したり、分解する働きを持ちます。疲労物質を作りにくくし、脳と神経を正常に保ちます。
糖質が多いキャットフードや、普段おやつやつまみ食いなどで糖質の摂取量が多い場合は、体内のビタミンB1が不足してしまいます。
ビタミンC
ビタミンCは強い抗酸化作用を持ちます。体内の活性酵素を除去して細胞の生成・修復を行うことで、老化やがん予防につながります。またコラーゲンを生成し、関節やケガの治癒力の向上、免疫力の向上、皮膚や粘膜の健康維持などの効果もあります。
猫はブドウ糖からビタミンCを肝臓で生成し、貯蔵することができます。しかし肝臓機能が低下しているシニア猫や妊娠・授乳中の母猫は、適正のビタミンC摂取量に満たない場合があります。
食物繊維
食物繊維の腸内環境により、善玉菌を増やして、悪玉菌の繁殖を抑えることができます。
猫は水を飲む習慣があまりないこと、また毛づくろいで口に入った毛が腸に溜まることなどの理由から、便秘になりやすい傾向にあります。
アミラーゼ
アミラーゼはジアスターゼともよばれる酵素です。人の唾液の中にはアミラーゼが含まれていますが、猫には含まれていません。そのため、食べ物からアミラーゼを摂取することで栄養効果が期待できます。
山芋に含まれるアミラーゼは、でんぷんを分解する働きを持ちます。じゃがいもやサツマイモなどの芋類は生で食べると消化不良などを引き起こしますが、山芋はアミラーゼが豊富に含まれているため、生で食べても大丈夫な珍しい芋です。
猫に必要不可欠な栄養「アルギニン」
山芋は長芋、大和芋、つくねいも、いちょういも、自然薯などを総称したものです。栄養価に大きな違いはありませんが、アルギニンの含有量に関しては大きな差があります。
アルギニンとはたんぱく質を構成する非必須アミノ酸の一種で、猫にとってとても重要な働きをします。アルギニンは成長ホルモン分泌の促進や筋肉組織の強化、免疫力の向上などさまざまな働きがあります。
また、アンモニアを尿素に無解毒して尿素に変換(尿素回路)します。アンモニアを低減することから、疲労回復としても期待できます。たんぱく質からエネルギーを得ている猫は尿素回路をフル稼働させているため、他の動物よりもアルギニンを多く必要になります。
しかし猫は、アルギニンの生成に必要となるシトルリンとオルニチンを体内で生成することができません。そのため食べ物から十分にアルギニンを摂取できないと体内にアンモニアが蓄積し、アンモニア中毒を引き起こします。これを高アンモニア血症といいます。症状が悪化すると肝性脳症を発症する恐れがあります。
総合栄養食であるキャットフードを食べていればアルギニンは不足することはありませんが、食欲が落ちている子やシニア猫は十分なアルギニンを摂取できない場合があります。
山芋のおすすめの与え方
猫に山芋を与えるときは、すりおろすことがおすすめです。
山芋に含まれるアミラーゼは、細胞が壊れることで分解酵素の働きが強まるといわれています。そのため山芋をカットするのではなく、すりおろした方が効果を発揮します。またアミラーゼは熱に弱いという性質からも、生のまますりおろして食べることがおすすめです。
猫に山芋を与えるときの注意点
シュウ酸カルシウムによる痒み
山芋に含まれるシュウ酸カルシウムの結晶によって、山芋に触れると痒みを生じます。人だけでなく猫もそうで、触ると皮膚を刺激して痒みを伴います。皮膚疾患を持っている猫はとくに注意しましょう。
シュウ酸カルシウムは山芋の皮に近い細胞に多く含まれているため、猫に山芋を与えるときは中心部分のみにしましょう。
自然薯は与えない
山芋の種類によって粘り気に大きな差があり、とくに粘り気が強いのが自然薯です。猫は喉が細く弱いので、自然薯は喉に詰まらせたり窒息を引き起こす危険性があります。
与えすぎると肥満に
山芋は炭水化物が豊富に含まれ、また他の野菜類や芋類の中ではカロリーが高いため、与えすぎると肥満の原因となります。キャットフードにトッピングやたまのご褒美として与え、週1日程度にしましょう。
まとめ
- 山芋の種類によって、アルギニン含有量に大きな差がある
- 猫は尿素回路をフル稼働させているため、他の動物よりもアルギニンを多く必要となる
- 猫に山芋を与えるときは、中心部分をすりおろしたものがおすすめ