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キャットフードのうま味成分:イノシン酸(Inosinic acid)
イノシン酸の基本情報
イノシン酸(inosinic acid)とは、主に肉類に存在する天然の旨味成分の一つです。うま味は6つの味覚(甘味・酸味・塩味・苦味・)のひとつで、美味しさを生む重要な役割を果たしています。
イノシン酸の他に、うま味成分はグルタミン酸やグアニル酸がありますが、イノシン酸はグルタミン酸を研究していた池田菊苗博士の弟子である小玉新太郎博士によって、大正2(1913)年に鰹の旨味成分(イノシン酸ヒスチジン)として発見されました。
- カツオ(かつお節)
- イワシの煮干し
- サバ
- 鶏肉
- 豚肉
- 牛肉
うま味成分のイノシン酸はどうやって生まれる?
イノシン酸は、動物肉の筋肉中に0.1~0.2%含まれていて、動物の死後に酵素によってイノシン酸に変化します。
生体内でエネルギー通貨として利用される「ATP(アデノシン三リン酸)」という物質は、生体が生きて生命活動を行っている間は、ATP→ADP→AMPへ変化し、最後のAMPまでいくと再合成によってATPに戻り、再度ATP→ADP→AMP→ATP→ADP→AMP…と変化を繰り返します。
生体が死亡すると、AMPはATPに再合成されることなく、AMP→IMPとなります。
この生体死後に行われるのが「熟成」で、熟成によって生成されるのがうま味成分である「イノシン酸(IMP)」です。
猫はイノシン酸のうま味を感じることができる?
猫は舌にある味覚センサー(味蕾)の数が少ないことから、味覚が鈍感だと言われることもありますが、猫は旨味成分を構成しているアミノ酸の感受性は高いので、うま味を感じることができます。
複数のうま味調味料で相乗効果が得られる
以下の猫の舌の味覚受容器による調査では、グルタミン酸ナトリウムとイノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムの間で相乗があることが分かっています。
画像引用元:調理と複合化学調味料 小杉直輝|一般社団法人日本調理科学会
一方神経生理学的見地からも河村、足立らによって猫の舌の味覚受容器を用い、この味覚受容器から信号を脳に送っている神経活動から、グルタミン酸ナトリウムとイノシン酸ナトリウム、又はグアニル酸ナトリウムの問で相乗効果のあることを証明している。この方法は猫の鼓索神経繊維にまでときほぐし、その一本ずつの神経についてどの味覚を中枢に伝達するかを調べ、庶糖による味覚興奮を通報する神経繊維の一部が、それぞれグルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウムによる味覚興奮の通報に関与していることが判明し、この繊維を用いて神経の興奮度によって相乗効果のあることを認めたのである。
キャットフードにはどのくらいイノシン酸が必要?
キャットフードでは猫の生命活動や健康を維持するために必要な栄養素の基準は設定されているので、イノシン酸のようなうま味成分の基準は示されていません。
ただイノシン酸は肉類に多く含まれるので、肉類の多いキャットフードやカツオなどを使用したウェットフードには比較的多く含まれていると考えられます。
また、イノシン酸を調味料として利用する場合は、イノシン酸単体ではなく塩類と結合させた「5′-イノシン酸二ナトリウム」として配合されます。ただペットフードではイノシン酸のうま味調味料は少なく、主にグルタミン酸ナトリウムを利用したものが多く見られます。
まとめ
- イノシン酸はカツオや肉類に多く含まれるうま味成分
- 動物の死後、酵素によって熟成する課程でイノシン酸がつくられる
- 猫もイノシン酸によるうま味を感じることができる