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猫の人獣共通感染症:クリプトコッカス症(Cryptococcus)
画像引用元:クリプロコッカス症の概要|国立感染症研究所
クリプトコッカス症は、肺、肝臓、腎臓、脳など、体の深部にクリプトコッカス属の酵母様真菌が入り込んで感染を起こす人獣共通感染症です。
日和見菌であるクリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)が代表的な菌として挙げられます。土壌や空気中から存在し、犬、猫からも感染しますが、特にハトなどの鳥類が多く保有しています。
健常者での侵襲性真菌感染症として国内で最も頻度が高く、腎疾患や悪性腫瘍、糖尿病、ステロイド投与などがクリプロコッカス症のリスク因子となります。
クリプトコッカス症の感染経路
クリプトコッカス症は空気中や土壌、植物など自然環境に存在しています。
クリプトコッカス症は空気感染することから、鳥の糞などに含まれる菌を鼻から吸い込んでも感染します。ハトから直接人間に感染することもあれば、猫を介して感染することもあります。
通常、免疫機能が正常に機能している健康な成猫はクリプトコッカス症に感染しても発症しませんが、子猫や高齢猫、猫エイズ(FIV)や猫白血病(FeLV)など免疫不全疾患のある猫や糖尿病などの持病がある猫は免疫力が低いため発症することが多いです。
オス猫の発生が多いようです。
クリプトコッカス症の症状
- 鼻水・くしゃみ
- 鼻筋や顔面の腫れ
- 鼻の変形・肉芽腫
- 目やに
- 呼吸器症状
- 皮下結節
- リンパ節症
- 口腔内の炎症
- 発熱
- 中枢神経症状
くしゃみや鼻水が普通にみられ、鼻の変形、鼻の潰瘍形成や肉芽腫が形成されるのも一般的です。
また、眼に病原を生じたり、脳が侵され、行動の変化やけいれん、運動失調といった中枢神経症状が起こることもあります。
免疫機能不全の疾患があるHIVやAIDS患者が感染すると脳髄膜炎のリスクが非常に高くなります。
クリプトコッカス症の検査・治療方法
クリプトコッカス症の検査
- 血液検査
- 真菌培養検査
- 細菌培養・感受性検査
- 生検・病理組織検査
- FIV/ FeLV検査
- CT検査
鼻水や病変部の組織からの病原体の検出と培養を行って診断します。
ラテックス凝集反応により血液中の抗原を検出することができます。この抗原量は治療によって低下していくため、治療効果の判定に用いられています。
クリプトコッカス症の治療
- 抗真菌薬の投与
治療にはフルコナゾールやイトラコナゾール、フルシトシンなどの経口抗真菌薬を単独あるいは組み合わせて使用します。
クリプトコッカス症の予防方法
クリプトコッカス症はハトの糞などから猫が感染してしまうのを防ぐには完全室内飼いをするのが一番の予防策になります。
免疫力や体力が落ちた人に感染すると発症してしまう日和見感染と考えられているので、日頃から免疫力や体力を落とさないように健康管理を行うこともひとつの方法。
猫白血病や猫エイズなどに感染していると重症化しやすくなるので、他の感染症予防や対策を行うことも重要です。
まとめ
- ハトや鳥類が多く保有する酵母様菌の感染症
- 鼻水や鼻の肉芽腫や変形、眼への異常が現れる
- 空気感染する
- 完全室内飼いと免疫力維持の健康管理が重要