キャットフードの水溶性食物繊維:イヌリン(Inulin)
イヌリンはキャットフードに含まれる水溶性食物繊維の一種です。
イヌリンは多糖類の一種なので甘みがあり成分的には炭水化物や糖類に分類されますが、胃や小腸で分解吸収されることなく大腸で初めて代謝されるため、栄養学的には糖質ではなく食物繊維に分類されています。
同じ食物繊維でもセルロースなどの不溶性食物繊維とは少し働きが異なりますので、もし不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の違いが気になる方は以下の記事をご覧ください。
ちなみに、フラクトオリゴ糖はイヌリンから作り出すことができます。オリゴ糖は単糖がいくつか結合した少糖(ほとんど二糖類)なので、イヌリンを加水分解するとオリゴ糖が作られます。エネルギーにならないのでダイエット食品にも利用されています。
イヌリンが豊富な食べ物
- チコリ
- ごぼう
- キクイモ ※
イヌリンは食材ではキクイモを始めとするキク科植物、チコリ、ごぼうなどに豊富に含まれています。
キャットフードでもイヌリンを多く含むチコリやごぼう、イヌリンを含むサプリメントが配合されることがあります。
猫におけるイヌリンの働きと効果
腸内の善玉菌の増殖を助ける(プレバイオティクス)
イヌリンは水溶性食物繊維として善玉菌の増殖を助け、腸内環境を整える働きがあります。
イヌリンは大腸内で発酵され短鎖脂肪酸となることで善玉菌の栄養源となります。善玉菌が過ごしやすい環境を作ることで、便通の改善や、大腸癌・炎症性腸疾患の予防に効果があるとされています。
また、腸内には免疫細胞が集中しているので、腸内環境が整うことで、正常な免疫力の維持や免疫反応であるアレルギー疾患の改善効果も期待されています。
血糖値の上昇を抑制
イヌリンには血糖値上昇の抑制する働きがあります。
水溶性食物繊維は胃や小腸で消化されず、粘性や保水性が高いので、体内で水分を吸収してジェル状になることから、他の食べ物も巻き込んでゆっくりと消化管を進み、血糖値の急速な上昇を防ぐ働きがあります。
また、満腹感を持続させつつ、イヌリン自身もエネルギー源とならないので、ダイエットにもおすすめです。
インスリンの分泌活性化
また、イヌリンには糖代謝を行うインスリンの分泌を活性化させる働きがあるとされています。
イヌリンは腸内細菌によって発酵されると短鎖脂肪酸(SCFA)を産生します。短鎖脂肪酸(SCFA)は血糖降下作用のある「GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)」の分泌を促進し、インスリンを介した血糖値コントロール機能を改善させる効果も期待されています。
中性脂肪を低下させ肥満防止
イヌリンは血中の中性脂肪を低下させることで肥満の防止効果の可能性が報告されています。
画像引用元:健康な男性ボランティアの腸内環境と血中脂質に対する、イヌリンを含むすぐに食べられる朝食用シリアルの消費の影響|NCBI
イタリアのミラノ大学で行われた調査によると、健康な成人男性12人を対象に毎朝食べていた朝食代わりにイヌリンを含むシリアルを4週間代替したところ、血中コレステロールと中性脂肪が試験終了時に有意に減少したことが分かりました。
イヌリンの副作用や注意点は?
過剰摂取は軟便や下痢の原因に
イヌリンに限らず水溶性食物繊維は過剰摂取しすぎると、腸内ガスが排泄されず体内に滞留しやすくなります。ガスが溜まることで、腹部膨満が起こりお腹が張るようになります。
さらにあまりにも過剰なイヌリンは、エネルギーが吸収が抑制され過ぎて本来必要だった栄養素の吸収が阻害される可能性があります。
イヌリンが豊富なキク科・ネギ科植物に注意
イヌリンは、キクイモなどのキク科植物に豊富に含まれますが、キク科の植物にはアレルギー性皮膚炎を引き起こす可能性がある「セスキテルペンラクトン」というアレルゲン物質が含まれています。
また、同じくイヌリンが豊富な玉ねぎ・にんにく・ニラなどネギ科植物は、猫に溶血性貧血などの中毒症状を引き起こす危険な食べ物です。
イヌリンが豊富だからといって与えた方がいい食べ物とは限らないので注意が必要です。
まとめ
- 粘性・保水性の高い水溶性食物繊維の一種
- チコリやごぼうなどに豊富
- 腸内環境を整え血糖値の上昇を抑制
- キク科植物・ネギ科植物には注意