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キャットフードの原材料:グレープフルーツ(grapefruit)
グレープフルーツは柑橘類の一種で、甘酸っぱい風味とジューシーな果肉が特徴の果物です。主にアメリカや南アフリカなど温暖な地域で栽培され、黄色やピンクの果肉を持つ品種があります。爽やかな香りと栄養価の高さから、健康食品やジュースとして広く利用されています。
主な栄養素としてビタミンCやカリウム、食物繊維が豊富で、抗酸化作用や免疫力向上、消化促進に役立つとされています。またフラボノイドなどのポリフェノールを含み、心血管の健康をサポートする効果が期待されます。
一方で、グレープフルーツには猫にとって中毒成分が含まれているため、その健康効果や安全性に懸念があります。
この記事では、キャットフードの原材料としてグレープフルーツを使用する目的や健康効果、安全性や危険性について解説します。
グレープフルーツそのものの使用は推奨されない
中毒成分や光毒性物質が含まれている
グレープフルーツそのものには、猫にとって中毒となる「リモネン」や光毒性物質「ソラレン」が含まれています。そのため、キャットフードに使用される場合は極めて少量であるか、加熱や加工が施されています。
しかし猫への健康リスクを考えると、グレープフルーツそのものをキャットフードの原材料に使用するのは推奨されません。
リモネンやソラレンについては後述で解説します。
グレープフルーツ抽出物は殺菌効果
一方で、グレープフルーツ抽出物は果実や種子から特定の有効な成分(ポリフェノールやフラボノイドなど)を抽出したものを指します。
グレープフルーツ抽出物にリモネンが含まれているかどうかは、製造方法や用途によって異なります。
皮や精油を使用して抽出されたグレープフルーツ抽出物にはリモネンが含まれていますが、果肉や種子からポリフェノールやフラボノイドだけを抽出した場合はリモネンは除去されています。キャットフードやサプリメントの原材料で使用される場合は猫への安全性を考慮し、リモネンが含まれない形で製造されることが一般的です。
原材料にグレープフルーツを使用しても大丈夫?と心配される方も多いかもしれませんが、グレープフルーツ抽出物であれば問題はないかと思います。
また、グレープフルーツ抽出物は食中毒の原因となるノロウイルスに対して不活化効果を有することが研究の結果が出ています。
参考:グレープフルーツ種子抽出物および配合製品中の合成殺菌剤の調査
参考:鳥インフルエンザウイルス不活化剤、鳥インフルエンザウイルス不活化剤の製造方法及び鳥インフルエンザウイルス不活化スプレー剤
グレープフルーツが原材料のキャットフード、化粧品
グレープフルーツが原材料のキャットフード例
グレープフルーツはさまざまなキャットフードの原材料で使用されています。原材料欄にはグレープフルーツ、グレープフルーツ抽出物、グレープフルーツエキスなどと表記されています。
原材料に使用しているグレープフルーツがそのものなのか、抽出物なのかは原材料欄の記載だけでは判断できないことが多いです。猫の健康リスクを考えると、原材料欄には「抽出物」として明記されているものを選ぶと良いでしょう。心配な場合はメーカーに問い合わせてみてください。
- ナウフレッシュ グレインフリー アダルトキャット
- アディクション キャット チキンシュプリーム
- ヒルズサイエンスダイエット シニアトータルケア チキン
化粧品にも使用される
また、グレープフルーツは犬や猫の飼い主さん向けの化粧品としても原材料で使用されています。
グレープフルーツの栄養や猫への健康効果
グレープフルーツとグレープフルーツ抽出物は元となる素材が同じであるものの、含まれる栄養素には以下のような違いがあります。
グレープフルーツ
グレープフルーツは果肉、果汁、皮の果実全体の栄養素を持っています。人間にとっては栄養価が高い食べ物ですが、猫にとっては有害成分が含まれているため注意が必要です。
- ビタミンC:免疫力が向上する抗酸化物質
- 食物繊維:腸内環境を整える
- フラボノイド:抗酸化作用や抗炎症効果
- クエン酸:疲労回復を助ける
- 天然糖分:エネルギー源となるが、過剰摂取は肥満の原因となる
- 水分:果汁の90%以上を占め、水分補給に活用できる
グレープフルーツ抽出物
グレープフルーツと比べるとビタミンCや食物繊維、クエン酸、糖分などはほとんど含まれていませんが、フラボノイド(ナリンギン、ヘスペリジン)やポリフェノールが豊富に含まれ、抗酸化作用や抗炎症作用が特化しています。
中毒成分リモネンとソラレンについて
リモネン
リモネン(limonene)とはグレープフルーツの皮や他の柑橘類の果皮に多く含まれるモノテルペン化合物で、柑橘系特有の香りを生み出す成分です。
リモネンはさまざまな栄養が含まれており、人間にとっては安全ですが、猫がリモネンを摂取した場合は嘔吐や下痢、神経症状(震えや嗜眠)を引き起こす可能性があります。またリモネンが皮膚に付着すると皮膚炎を引き起こす恐れもあります。
そのため、キャットフードやサプリメント、猫用製品ではリモネンの使用が避けられることが一般的です。
ソラレン
ソラレン(Psoralen)とはグレープフルーツなど柑橘類、セリ科の植物に含まれる光感作性物質で、紫外線に対して敏感に反応する特性を持っています。紫外線にさらされると活性化し、皮膚の炎症や色素沈着、場合によっては火傷に似た症状があらわれることがあります。
とくに猫はソラレンの代謝が苦手で、肝臓や腎臓にダメージを与える可能性があります。
まとめ
- グレープフルーツそのものを原材料に使用するのは懸念点がある
- グレープフルーツ抽出物は有害成分は除去されている
- グレープフルーツ抽出物はノロウイルスに対して不活化作用がある
- リモネンとソラレンが猫にとって中毒となる