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猫のストルバイト結石(struvite stones、urolithiasis)
ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム結石)は猫が発症しやすい下部尿路疾患のひとつで、猫の発症率は65~75%と言われています。
犬の場合は、細菌感染が原因であることがほとんどと言われていますが、猫の場合は細菌感染が原因であることは稀で、無菌性のストルバイト結石が多く見られます。
猫の尿pHは弱酸性(pH6.2~6.5)が正常とされていますが、ストルバイト結石は、尿pH値が正常値よりアルカリ性に傾くことで形成されやすくなります。以前はストルバイト結石が最も多い結石と言われてきましたが、食事の改善により近年はストルバイト結石の発生は減少傾向にあります。
猫のストルバイト結晶の症状
- 排尿時の痛み
- トイレに何度も行く
- 頻尿
- 尿中に結晶
- 血尿
尿路結石では、炎症(膀胱炎、尿道炎)や排尿時の痛みなどの症状が見られ、陰部を舐める回数が増えたり、何回もトイレに行くといった行動異常を示します。また、尿自体にきらきらとした結晶が見られたり、尿の色が不透明になり、血尿を引き起こすこともあります。
発熱や食欲不振、元気消失といった全身症状はあまり起こらないので、このような全身症状が見られるときには他の病気が原因という可能性も考えられます。
猫のストルバイト結石の原因
猫に多い無菌性のストルバイト結石の場合、以下のいくつかの要因が重なってストルバイト結石が発生しやすくなります。
尿に多量のマグネシウムやアンモニウム、リン酸塩が存在する
ストルバイトは結石はリン酸、アンモニウム、マグネシウムから形成されます。
食物にミネラルとタンパク質が多い場合、尿中にストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム結石)の構成材料が多量に存在するため、ストルバイト結石が形成されやすくなります。
特にマグネシウム推奨濃度は19~35mg/100kcalとされていて、マグネシウム濃度が35mg/100kcalを超えるとストルバイト結石のリスクが上がるとされています。
このため、ストルバイト結石の療法食ではミネラルを総合栄養食の基準よりも下回る量に抑えるなどして、これ以上結石が形成されないよう対策します。
尿pHがアルカリ性(pH7~)になる
また、尿pHが7以上でアルカリ性に傾くと、ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム結石)が形成されやすくなります。
pHがアルカリ性に傾いてしまう要因としては、キャットフードやサプリ、おやつなどを含めた食事、投薬、腎臓病などが原因として挙げられます。
一般的にpHが6.6以下になるとストルバイト結石は形成されにくくなるので、ストルバイト結石になった場合、酸性食品が含まれる食事やサプリなどで尿pHを酸性に傾ける方法が用いられます。
水分摂取が少ない場合に尿の濃縮が強くなる
猫はもともと砂漠地帯など水分があまりない環境で生きてきたため、水分を摂取しなくても尿に老廃物や不要な栄養素を濃縮して排泄できます。
ただその尿を濃縮する能力によって、少ない尿に多くのミネラルが濃縮された状態で長時間滞留してしまうため、結石が形成されやすくなります。
このため水を飲める場所を増やしたり、ウェットフードなどで水分摂取量を増やすことで、尿量・排尿回数を増やし、尿のミネラル濃度を下げて結石の形成に対処できます。これはストルバイト結石に限らずどの結石の対策にも有効な方法です。
猫のストルバイト結石の治療方法
ストルバイト結石用の特別療法食を与える
ストルバイト結石の治療で最もよく行われるのは食事療法です。ストルバイト結石は適切な食事や管理を行えば、約2~4週間程度で溶解するので、診断されたら動物病院で指示されるストルバイト結石用の特別療法食に食事を切り替えます。
ストルバイト結石用の療法食は、尿pHを酸性に傾け、カルシウム・リン・マグネシウムの量を制限することで、尿中のミネラル濃度を下げます。
また、結石用の療法食では塩分を多く含むものが多い傾向にあります。塩気があると飲水量が増えるので、排尿量や回数が増えることで濃い尿がつくられることを防ぎます。また、高塩分食を与えると結石成分の結合を抑制するクエン酸の排泄量が減少することから、体内に留まったクエン酸が結石の悪化を防ぎつつ、溶解方向に繋がることが分かっています。
大きな結石は外科手術で摘出が必要な場合も
この特別療法食は短期間の使用を目的にあたえるもので、しばらくすると小さなストルバイト結石は溶解しますが、大きな結石は外科的に摘出しなければなりません。
このため早期発見で結晶や小さな結石のうちに治療して溶解させることが大切です。
治療後の再発防止対策とフード変更
再発防止にはサポート食や定期的な尿検査
ストルバイト結石は一度治っても繰り返し再発してしまう猫も多いので、総合栄養食の中でもpH値やミネラル量が調整された商品を選んだり、動物病院で指示されたサポート食を継続したり、飲水量を増やすために水飲み場を増やしたり、ウェットフードを取り入れるなどして、尿路結石が形成されないように再発防止対策を行うことが大切です。
くわえて、普段の飲水量や排尿回数、尿結晶のチェックや、定期的な尿検査も必要です。
療法食はいつまで続ける?
ストルバイト結石用の特別療法食は、特にいつまでという具体的な期間はありませんが、尿検査で猫の体内からストルバイト結石・結晶がなくなり尿pHも正常範囲内で安定すれば、獣医師の許可を得て元の総合栄養食に戻して問題ありません。
繰り返し再発してしまう猫には、引き続き療法食を続けるよう指示されることもありますが、ストルバイト結石の治療のために設計されたレシピなので、極端にミネラル量(カルシウム・リン・マグネシウム)を少なくしたり、飲水量を増やすために塩分が多めに配合されたりしています。
中には、再発が心配だからという理由で、自己判断でストルバイト結石用の療法食を何ヶ月も続けてしまう飼い主さんもいますが、療法食はあくまで病気の猫に対して配合されたフードなので、長く続けると今度はミネラルが不足したり、今度はシュウ酸カルシウム結石症の原因になるので、自分の判断で長期的に続けるのはやめましょう。
まとめ
- ストルバイト結石は尿路に結石が形成される病気(リン酸アンモニウムマグネシウム結石)
- 猫の65~75%がなる発症率の高い病気
- 猫の尿pHがアルカリ性に傾くと形成されやすくなるが、酸性に傾くと溶解する
- 治療はストルバイト結石用の特別療法食を用いた食事療法が一般的