キャットフードの原材料:山伏茸(yamabushi mushroom)
山伏茸(やまぶしたけ)とは白く房状に成長するきのこで、見た目が僧侶の法衣「山伏」の装飾に似ていることが名前の由来とされています。表面はふわふわとした針状の突起が特徴で、成長すると20㎝ほどにもなります。
主に秋ごろに広葉樹の枯れ木に自生しますが、人工栽培も行われています。乾燥品や粉末としても流通され、料理や加工食品に利用されることが多いですが、キャットフードや猫用サプリメントの原材料として使用されることもあります。
山伏茸が原材料のキャットフード例
山伏茸はさまざまなキャットフードやウェットフード、猫用サプリメントの原材料に使用されています。
原材料欄には山伏茸のほかに、山伏茸エキス、山伏茸粉末、乾燥山伏茸などと表記されます。
- 和漢みらいのキャットフード
- POCHI DHAローヤル
- ヤマブシタケ粉末 天然ピュア原料
- 太陽食品 バイタルワン 犬猫用
など
山伏茸の栄養素と猫への健康効果
多くの健康効果がある
山伏茸には猫の健康維持・向上に欠かせないβグルカンやエルゴチオネインなどの抗酸化成分を豊富に含み、免疫力向上や抗炎症作用が期待されます。
また、ヘリセノンやエリナシンという成分が神経成長因子(NGF)を活性化し、認知機能の改善に役立つとされています。
下記は山伏茸の猫への健康効果です。( )内はその健康効果で主に活躍する栄養素や成分です。
- 脳機能向上・認知症予防(ヘリノセンやエリナシン)
- 神経成長因子の合成促進作用(ヘリノセンやエリナシン)
- 免疫力の向上(βグルカン)
- 抗がん作用(βグルカン)
- 血糖値の調整(βグルカン)
- 抗酸化作用(エルゴチオネイン)
- 腸内環境の改善(食物繊維)
ヘリセノンやエリナシンの認知機能の改善
山伏茸に含まれるヘリセノンやエリナシンは脳の神経成長因子(NGF)の産生を促進・活性化する成分であり、認知機能や学習能力の向上に寄与すると考えられています。
出生直後のラットにエリナシンAを毎日経口投与(体重1kg当たり8mg)し、5週目に脳の各部位のNGF量を比較したところ、嗅球と大脳皮質ではコントロールと差が無かったが、青斑と海馬中のNGF量は大きく上昇していた。これはNGF合成促進物質が動物実験でも効果を示した世界で初めての報告であった。
また、ラットを用いた別の動物実験[ヘリセノンC(1)とエリナシンA(7)を使用]では、きのこ毒であるイボテン酸を注入することによるアルツハイマー型認知症モデルラットや人工的に血管を詰まらせる脳血管性認知症モデルラットに対して、これら化合物は明らかに記憶の保持、学習能力の向上に効果を示した。
出生直後のラットにエリナシンAを毎日経口投与し、5週目に脳内のNGF量を測定した結果、嗅球と大脳皮質では変化がなかったが、青斑(覚醒やストレス反応、注意力の調整に関与する神経核)と海馬(記憶の形成や空間認識に関与する器官)では神経成長因子(NGF)量が大幅に増加していたことが分かりました。
また、ヘリセノンCとエリナシンAを用いたラット実験では、アルツハイマー型および脳血管性認知症モデルに対し、記憶保持と学習能力の向上に明確な効果が認められました。
これらの研究により、神経成長因子(NGF)の増加は認知機能や学習能力の向上だけでなく、神経伝達物質のバランスの調整や、ストレス耐性の向上、アルツハイマー病などの神経変性疾患への応用が期待されています。
βグルカンによる免疫力の向上
山伏茸由来のβグルカンは、マクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、免疫力を向上する働きがあるとされています。
マクロファージは免疫システムの第一線で働く細胞で、ウイルス感染細胞や病原体などの異常細胞を認識すると、さらに免疫細胞を活性化させる物質(サイトカイン)を分泌し、体全体の免疫反応を強化する役割を果たしています。
ナチュラルキラー(NK)細胞は免疫細胞の一種で、ウイルス感染細胞やがん細胞などの異常細胞を認識するとパーフォリンやグランザイムという特殊なタンパク質を放出し、細胞の自然死(アポトーシス)を誘導します。
エルゴチオネインの抗酸化・抗炎症作用
- 強力な抗酸化作用
- 抗炎症作用
- 免疫力の向上
- 疲労回復
- ミトコンドリア保護
- 皮膚や被毛の健康維持
エルゴチオネインとは強力な抗酸化作用を持つアミノ酸の一種で、特にきのこ類や一部の細菌・真菌に多く含まれています。体内では合成されず、食事から摂取する必要があります。
細胞を酸化ストレスから保護し、老化防止や神経・肝機能の維持、疲労回復、炎症抑制作用も期待されており、長寿や生活習慣病予防の観点から研究が進められています。
山伏茸の与え方と注意点
トッピングや手作りごはん
山伏茸が原材料のキャットフード(ドライ・総合栄養食)はほとんどありませんが、ウェットフードやサプリメントの原材料ではよく見かけます。
そのため、猫に山伏茸を与える場合は普段のキャットフードにトッピングしたり、おやつとして与えたり、手作りごはんに取り入れてみましょう。
山伏茸は一般のスーパーでも販売されることがありますが、流通量が少なく、鮮度が重要であるため、産地に遠い地域ではほとんど見かけないかもしれません。山伏茸を手作りごはんに取り入れたい場合は、オンラインショップや産地直送の通販サイトを利用するのがおすすめです。
アレルギーや副作用の危険性は?
山伏茸には猫にとって中毒となる成分は含まれていないため、猫は山伏茸を食べても大丈夫です。
山伏茸を食べて猫がアレルギーを発症したという報告はありませんが、可能性はゼロではありません。猫に与える場合は少量からスタートし、嘔吐や下痢、体調不良など異変がみられたら獣医師に診てもらいましょう。
まとめ
- ウェットフードや猫用サプリメントの原材料に使用される
- ヘリセノンやエリナシンは認知機能や学習能力の向上に期待される
- マクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞により免疫力が向上
- 猫に山伏茸を与える場合はキャットフードにトッピングかおやつ