

オレンジやブドウなど一部の果物には猫にとって中毒となる成分が含まれています。
しかしベリー類には中毒となる成分が含まれておらず、また強い抗酸化作用があるため、猫の健康維持・向上にとってメリットが大きいといわれています。
キャットフードの原材料:ベリー類
ベリー類には多くの健康効果がある
猫はベリー類を食べても大丈夫です。
ベリー類は果物の中でもキャットフードや猫用おやつ、猫用サプリメントの原材料に使用されることも多いです。
ベリー類には抗酸化作用や目の健康維持、免疫力の向上、腸内環境の改善などあらゆる健康効果がありますが、特に注目すべき健康効果は尿路の健康維持です。
猫は下部尿路になりやすい
猫は下部尿路疾患(Feline Lower Urinary Tract Disease:FLUTD)になりやすい動物です。
それは、猫は水を飲む習慣が少ないこと、またオス猫は尿道が細長く、尿結石や粘液栓が詰まりやすいことも、下部尿路疾患の発症の原因の一つと考えられています。
特にストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石、特発性膀胱炎などが多くみられます。
キャットフードに配合されるベリー類
ベリー類はさまざまなキャットフードや猫用おやつ、猫用サプリメントの原材料に使用されています。
ベリー類 | 栄養素 | 健康効果 |
---|---|---|
カウベリー![]() | ・ビタミンC ・アントシアニン ・プロアントシアニジン ・アルブチン ・食物繊維 ・フラボノイド | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・尿路感染症の改善 ・腸内環境の改善 ・認知機能の維持 ・視力保護 |
ラズベリー![]() | ・ビタミンC ・アントシアニン ・食物繊維 ・ラズベリーケトン | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・腸内環境の改善 ・抗がん予防 ・脂肪燃焼促進 |
マルベリー![]() | ・ビタミンC ・アントシアニン ・食物繊維 ・レスベラトロール ・鉄分 | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・腸内環境の改善 ・視力保護 ・貧血予防 ・心血管疾患の予防 |
ブルーベリー![]() | ・ビタミンC ・ビタミンK ・アントシアニン ・プロアントシアニジン ・アルブチン ・食物繊維 ・ポリフェノール | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・腸内環境の改善 ・骨の健康維持 ・血液凝固の調整 |
クランベリー![]() | ・ビタミンC ・プロアントシアニジン ・アルブチン ・食物繊維 ・ポリフェノール ・キナ酸 | ・尿路感染症の改善 ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・腸内環境の改善 ・尿のpH調整 ・心血管疾患リスク低減 |
ザクロ![]() | ・ビタミンC ・食物繊維 ・ポリフェノール ・カリウム ・プニカラギン | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・血圧調整 ・腸内環境の改善 |
カシス | ・ビタミンC ・ビタミンE ・カリウム ・アントシアニン ・食物繊維 ・ポリフェノール | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・血行促進 ・視力の保護 ・免疫力の向上 |
チョークベリー | ・ビタミンC ・カリウム ・アントシアニン ・食物繊維 ・ポリフェノール | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・腸内環境の改善 ・血圧調整 |
ボイセンベリー | ・ビタミンC ・アントシアニン ・食物繊維 ・ポリフェノール ・エラグ酸 | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・腸内環境の改善 ・抗がん作用 ・視力保護 |
エルダーベリー | ・ビタミンC ・アントシアニン ・食物繊維 ・ポリフェノール ・フラボノイド | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・腸内環境の改善 ・抗ウイルス作用 |
ブラックベリー | ・ビタミンC ・ビタミンK ・アントシアニン ・プロアントシアニジン ・食物繊維 ・ポリフェノール | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・腸内環境の改善 ・抗ウイルス作用 ・骨の健康維持 ・血液凝固の調整 |
ベリー類の猫への健康効果
上記で挙げたベリー類は、猫にとって多くの健康効果があります。
特にアントシアニン、プロアントシアニジン、アルブチン、キナ酸は猫の健康維持・向上に大きく関与するといえます。
アントシアニン
アントシアニンとはポリフェノールの一種で、強い抗酸化作用を持つ天然色素です。
ベリー類以外にもリンゴや苺、ナス、シソなどの鮮やかな赤色や紫色の色素成分はアントシアニンで構成されています。その中でも特にカシスに豊富に含まれ、カシスの深い紫色の色素のもとになっています。
- 抗酸化作用(老化・がん予防)
- 抗炎症作用(炎症や生活習慣病のリスク低減)
- 視力保護作用(眼精疲労の軽減)
- 脳機能の向上(記憶力や認知機能の向上)
- 血流の改善(高血圧や動脈効果の予防)
- 血糖値の調整(糖尿病の予防)
このようにアントシアニンは多くの健康効果を持つため、日常的に摂取することで猫の目や脳、血管、代謝、免疫などの健康を幅広くサポートすることができます。
プロアントシアニジン
プロアントシアニジン(Proanthocyanidins:PACs)とはベリー類に含まれるポリフェノールの一種です。
特にクランベリーに含まれるA型プロアントシアニジンは尿路感染症の予防に効果があるとされています。大腸菌などの細菌が尿路粘膜に付着するのを阻止する作用を持ち、細菌の侵入を防ぐと考えられています。
研究では、クランベリー摂取により尿路感染症のリスクが26%低下することが示されました。これは人による研究ですが、猫にも同様の健康効果があると考えられます。
アルブチン
アルブチンとはベリー類に含まれる天然の美白成分です。メラニン生成を抑制する美白効果や抗酸化作用・抗炎症作用があるため人用の化粧品やスキンケア製品の原材料によく使用されていますが、猫に対しても皮膚の健康維持や炎症の緩和、酸化ストレスから細胞を保護する効果が期待されています。
またアルブチンには利尿作用もあり、尿路内の老廃物や細菌の排出が促進されることで猫の尿路感染症の予防にも寄与します。
特にオスの猫は下部尿路になりやすいので、アルブチンの摂取は予防に効果的といえます。
キナ酸
キナ酸は有機酸の一種です。抗酸化作用や抗炎症作用、肝機能のサポート、疲労回復などの作用がありますが、特に注目すべき健康効果は尿路感染症の予防です。
キナ酸は体内で代謝されると安息香酸に変化し、尿とともに排出される際に尿のpHの低下(尿の酸性度が高まる)が発生します。これにより細菌が尿路に付着・増殖しにくい環境を作り、特に大腸菌による尿路感染症のリスクを低減すると考えられています。
参考:クランベリージュースの効用-日常飲用水で尿路感染症予防を期待できるか-|土屋 紀子
ベリー類の与え方と注意点
トッピングや手作りごはん
ベリー類は多くのキャットフード(総合栄養食)やウェットフード、おやつ、猫用サプリメントの原材料に使用されています。
猫にベリー類を与えたい場合は、ベリー類が配合されている製品を与えるか、普段のキャットフードにベリー類をトッピングしたり、手作りごはんに取り入れることがおすすめです。
過剰摂取は腎臓へ負担となる
キナ酸が安息香酸を経て尿とともに排出される際に、尿のpHの低下(尿の酸性度が高まる)が発生しますが、長期的・日常的に過剰摂取をすると尿の酸性度が高まりすぎてしまい、猫の腎臓に大きな負担となる恐れがあります。
尿路の健康維持・向上、感染症の予防には適量の摂取が重要となります。
甘味料や添加物を含むベリー類はNG
猫は本来肉食動物であり、果物を消化するのが得意ではありません。そのため、過剰に与えると消化不良や下痢を引き起こす可能性があります。
特に甘味料や添加物を含む市販の加工されたベリー類には糖分が豊富に含まれているため、糖尿病や肥満の発症リスクが高まります。猫に与えるのは避けましょう。
キャットフードのベリー類の配合量であれば問題ありませんが、与える際は適正給与量を守ることが大切です。
ベリー類が原材料のキャットフード例
原材料欄にはベリー類の名前のほか、○○ベリーパウダー、○○ベリー粉末、乾燥○○ベリーなどと表記されます。
など
まとめ
- キャットフードや猫用おやつの原材料によく使用される
- ベリー類は猫の下部尿路の健康維持・向上に効果的
- ベリー類は抗酸化作用や視力保護など多くの健康効果がある