キャットフードの原材料:えのき(enoki mushroom)
えのきとはヒラタケ科エノキタケ属に属する食用きのこで、日本をはじめとするアジア各地で広く親しまれています。
自然界では、晩秋から冬にかけて広葉樹の枯れ木や切り株などに群生し、茶色くぬめりのある傘と長い柄を持つのが特徴です。
一方、店頭で見かける白く細長いえのきは光を遮った状態で人工栽培されたもので、クセのない風味とシャキシャキとした食感が特徴です。
低カロリーで食物繊維やビタミンB群が豊富で、その他にもキノコキトサンやβグルカンなど高栄養価な成分が含まれています。
えのきが原材料のキャットフードは?
「国産ドッグフードZEN」や「ちょいのせDeli 豚肉ときのこ」など犬用のドライフードやトッピングの原材料にはえのきが使用されていますが、キャットフードや猫製品では確認できませんでした。
これは、猫は肉食動物であるため、
- 植物性の食材(とくに食物繊維)の消化が苦手
- 腸が短く、植物性繊維の吸収に向いていない
という理由が考えられます。
とはいえ、えのきには猫の健康に良い栄養素が豊富に含まれているため、与える量や調理方法をしっかり守ればキャットフードのトッピングや手作りごはんに取り入れることがおすすめといえます。
次項で、猫の健康に効果的なえのきの栄養素や健康効果を解説します。
えのきの栄養素と猫への健康効果
えのきの栄養素
下表は、生のえのき100gあたりの栄養素です。
一般的に、キャットフードやおやつの原材料に使用される場合は生ではなく乾燥させたものであるため、栄養素はさらに凝縮されています。
えのきの栄養素 | ||
---|---|---|
エネルギー | 34 | kcal |
水分 | 88.6 | g |
たんぱく質 | 2.7 | g |
カリウム | 340 | mg |
ビタミンB1 | 0.24 | mg |
ビタミンB2 | 0.17 | mg |
ナイアシン | 6.8 | mg |
ビタミンB6 | 0.12 | mg |
パントテン酸 | 1.4 | mg |
葉酸 | 75 | μg |
ビオチン | 11.0 | μg |
食物繊維 | 3.9 | g |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
中性脂肪やコレステロールを下げるキノコキトサン
キノコキトサンとはえのきに含まれる天然の食物繊維の一種です。
研究では、えのきから抽出されたキノコキトサンを肥満モデルのラットに与えたところ、体重が大きく減少し、肝臓にたまる脂肪も少なくなったなど脂質異常や肥満を改善する効果があったことが分かりました。
また、便に含まれる脂質の量が増えたことから、脂肪の吸収が抑えられていることが分かりました。血液検査でも、中性脂肪や総コレステロール、悪玉コレステロール(LDL)が大きく下がるなど、血中脂質の改善も確認されました。
これらの結果から、キノコキトサンは脂肪の吸収を妨げたり、脂肪の分解を促したりすることで、肥満やメタボリックシンドロームの改善に役立つ可能性があると考えられます。
参考:肥満モデル動物におけるキノコキトサンの抗肥満効果|日本きのこ学会誌
EA6によるガンの発症の抑制
えのきたけには「EA6」と呼ばれる糖たんぱく質が含まれており、がん細胞の増殖や転移を抑える働きがあることが研究で示唆されています。また、免疫機能をサポートする作用も期待されています。
がん予防に期待される代表的植物性食素材にも、えのきが記載されています。
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引用画像:食によるがん予防を目指して|大東肇
ストレスを緩和させるGABAが豊富
えのきにはGABAとパントテン酸が含まれており、心身のリラックスやストレス緩和に役立ちます。
GABAは脳を落ち着かせる働きを持ち、リラックス状態であらわれるα波を促進するとされています。また、副交感神経を活性化させることで、心を穏やかに整える効果も期待されます。
パントテン酸は糖質や脂質の代謝を助け、エネルギーを効率よく生み出す働きがあります。また、ストレスへの抵抗力を高める副腎皮質ホルモンの合成にも関与しており、疲労回復やストレス対策にも役立ちます。
研究では、成人63名にえのきのGABAを摂取させたところ、脳波におけるα波およびβ波の活動が低下することが確認されました。これらの脳波は精神的ストレスに関連しているため、GABAを含むえのきにはストレスの軽減や予防に効果が期待されます。
えのきの与え方と注意点
生のえのきにはフラムトキシンが含まれている
えのきたけには「フラムトキシン」というタンパク質が含まれており、これは溶血作用を持つため、生で摂取すると赤血球を破壊する恐れがあります。
とくに猫は、人間や犬と比べて肝臓の解毒能力が低いため注意が必要です。
フラムトキシンは加熱によって無毒化されるため、猫にえのきを与えるときは蒸す・茹でるなどの加熱調理が推奨されます。
加熱調理し、細かくカットorペースト状
猫はえのきを食べても大丈夫です。
猫に与えるときは必ず加熱し、細かく刻んだものを少量から与えるようにしましょう。
ただし、猫は本来肉食動物であり、きのこ類を消化しづらい傾向があるため、過剰摂取は避けましょう。猫に初めて与えるときは消化に負担がかからないようにするため少量からスタートします。アレルギーや体調変化に注意し、異変があればすぐに中止しましょう。
まとめ
- えのきは猫用製品の原材料ではあまりみられない
- キノコキトサンは中性脂肪やコレステロールの低下効果がある
- 糖たんぱく質EA6はがん細胞の増殖や転移抑制作用がある
- GABAはストレスを緩和する作用がある
- 溶血作用を持つフラムトキシンは加熱することで無毒化される