目次
エリンギ(King Oyster Mushroom)
きのこの王様と称される
エリンギ(King Oyster Mushroom)は、その独特な食感と風味から食卓で広く親しまれています。
キングオイスターマッシュルームと呼ばれる理由は、エリンギがヒラタケ類の中でも最大級のサイズや肉厚な食感、高級感を持つことから、「きのこの王様」と称されるためです。また「オイスター」はヒラタケ類全般の形が牡蠣に似ていることに由来します。
低カロリーで栄養が豊富
また、エリンギは低カロリーでありながら、食物繊維やビタミン、ミネラルを豊富に含むキノコです。
その中でも特にβグルカンと呼ばれる多糖類が免疫機能の向上に寄与し、猫の健康維持・向上に効果的とされています。
エリンギの栄養素と猫への健康効果
下表はエリンギ/生100gの栄養素です。
エリンギの栄養素 | ||
---|---|---|
エネルギー | 31 | kcal |
水分 | 90.2 | g |
たんぱく質 | 2.8 | g |
脂質 | 0.4 | g |
炭水化物 | 6.0 | g |
ナトリウム | 2 | mg |
カリウム | 340 | mg |
鉄 | 0.3 | mg |
ビタミンD | 1.2 | μg |
ビタミンB1 | 0.11 | mg |
ビタミンB2 | 0.22 | mg |
ナイアシン | 6.1 | mg |
ビタミンB6 | 0.14 | mg |
食物繊維 | 3.4 | g |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
猫への健康効果
- 免疫力の向上:βグルカン、エルゴチオネイン
- 腸内環境の改善:食物繊維
- 抗酸化作用:エルゴチオネイン、セレン
- 抗炎症作用:βグルカン、エルゴチオネイン
- 抗肥満作用:βグルカン、エルゴチオネイン
- ダイエット効果:低カロリー・低脂肪
- 嗜好性アップ:加熱することで香りが増す
この中でもとくに効果的といえるβグルカン、エルゴチオネインについて解説します。
免疫力向上のβグルカン

画像:食用きのこにおけるβ-グルカンについての一考察のデータをもとに作成
βグルカンとは多糖類の一種で、きのこ類の中でもエリンギにも豊富に含まれています。
強い抗酸化作用や抗炎症作用があり、免疫細胞を刺激して活性化させることでウイルスや細菌への抵抗力を高め、アレルギー症状の軽減や慢性疾患の予防にもつながる可能性があります。
死亡率が下がる!?エルゴチオネイン

画像:きのこを食べると死亡率が下がる?~アメリカの大規模調査研究論文より~|ホクト株式会社のデータをもとにグラフを作成
エルゴチオネインとは強力な抗酸化作用を持つアミノ酸の一種で、細胞の老化や酸化ストレスから体を守る働きがあります。
近年の研究では、エルゴチオネインの血中濃度が高い人ほど死亡率が低い傾向にあることが報告され、長寿や健康維持に役立つ可能性が示唆されています。
これは人間による研究ですが、猫においても、エルゴチオネインを含む食材を取り入れることで細胞の健康を守り、老化予防や病気リスクの軽減に役立つと考えられます。
抗肥満作用・血糖値の改善
エリンギを使った研究では、太りやすい食事を与えられたマウスにエリンギを食べさせたところ、体重があまり増えず、体の脂肪も少なめに抑えられ、また血糖値のコントロールも改善されていました。
これはつまり、エリンギに含まれる成分が「太りにくい体づくり」や「糖のバランスを整える」働きを持っている可能性があるということです。
猫にも直接同じ効果があるとは言い切れませんが、肥満や糖尿病が気になる子の健康維持のために取り入れてみる価値はありそうです。
猫はエリンギを食べても大丈夫?
食べても大丈夫!ただし生食はNG
猫はエリンギを食べても大丈夫です。ただし、生で与えるのはやめましょう。
生のエリンギにはキトインやプロテアーゼ阻害物質など猫の消化器系にとって負担となる成分が含まれており、猫の胃腸ではうまく処理できない可能性があるためです。
猫に与える場合は必ず茹でる・蒸すなどの加熱調理をし、味付けは必要ありません。初めて与える際は少量から始め、アレルギーや体調の変化に注意することも大切です。
安全でおすすめの猫への与え方
猫は本来、肉食動物であり、高タンパク質の食事を必要とします。エリンギは猫にとって健康効果の高い栄養素を含むものの、主食としてではなく補助的な役割となります。
キャットフードへのトッピングや手作りごはん、たまのおやつとして与えましょう。
- 必ず加熱する(茹でる・蒸す)
- 塩・油・調味料は一切使わず、水だけで調理する
- 細かく刻むか、すり鉢などですりつぶす
- 一度に与える量の目安は1日に1~2g程度
エリンギに含まれる成分の注意点
前述でもご紹介しましたが、キトインとプロテアーゼ阻害物質は猫に与える際に気をつけたい成分です。
キトイン
キトイン(Chitin)とはきのこの細胞壁に含まれる多糖類(食物繊維の一種)で、エリンギの硬めの食感の主な要因でもあります。
猫はキトインを分解する酵素(キチナーゼ)を持っていません。そのため消化が非常に困難で、摂りすぎると腸に負担をかけ、下痢や便秘、嘔吐の原因となる可能性があります。
ただし、キトインは少量であれば食物繊維の一種としての働きを発揮し、腸内を刺激して排便を助ける効果があります。
与える場合は、しっかり加熱+細かく刻む or すりつぶすことが推奨されます。
プロテアーゼ阻害物質
プロテアーゼ阻害物質(Protease Inhibitors)とはタンパク質分解酵素(=プロテアーゼ)の働きを阻害する成分で、特に植物やきのこの一部に自然に存在し、防御機構の一部とも言われています。
猫はタンパク質を主食とする動物のため、生のまま摂取すると、消化不良や嘔吐、食欲不振などの症状があらわれることがあります。
プロテアーゼ阻害物質は加熱で不活性化するため、加熱調理してから与えることが絶対条件となります。
エリンギが原材料のキャットフードは?
エリンギを原材料としたドッグフードや犬用おやつは確認できましたが、キャットフードや猫用おやつにおいては、エリンギはまだあまり使われていません。
しかし、エリンギはβグルカンやエルゴチオネインなどの栄養素を豊富に含み、免疫サポートや抗酸化作用など、猫の健康維持にも役立つ可能性があります。
今後、こうした高栄養価なエリンギがもっと活用され、猫の健康を考えた商品が増えてくれたら嬉しいですね。
まとめ
- 低カロリーでありながら、ビタミンやミネラルが豊富
- βグルカンは免疫力向上の効果がある
- エルゴチオネインは強い抗酸化作用を持ち、長寿に役立つ
- キトインやプロテアーゼ阻害物質は猫の消化器系に負担となる
- 猫にエリンギを与える場合は、必ず加熱処理をする