目次
キャットフードの原材料:きのこ類(mushrooms)
子実体を有する菌類全般
きのこ類とは、子実体(胞子を形成する器官)を有する菌類全般を指します。自然界では枯れ木や落ち葉を分解し、土壌の栄養循環に貢献しています。
栄養面では、低カロリーで食物繊維が豊富なため、腸内環境の改善や便通の促進に役立ちます。また、βグルカンやビタミンDを含み、免疫力の向上や抗酸化作用、骨の健康維持に効果が期待されています。
腸内環境の改善は免疫力を高める

引用:犬の腸内環境が多様なほど、健康度が高いことが明らかに!|アニコムのデータをもとに作成
アニコムホールディングス株式会社が「腸内フローラ×健康」の関係性について分析したところ、犬の腸内環境が多様なほど健康度が高いことが分かりました。先天的だけでなく、後天的な要素によっても変化するという結果も得られました。
これは犬の研究結果ですが、猫にも同様の健康効果があると考えられます。
キャットフードの原材料に使用されるきのこ類
きのこ類は、その高い健康効果からキャットフードやおやつ、サプリメントの原材料に使用されることがあります。
しいたけ、舞茸、しめじ、きくらげ、マッシュルームなど身近なものから、アガリクスや霊芝、冬虫夏草などの珍しいきのこ類が配合されていることも。また手作りごはんの材料の一つとしても、高栄養価で手軽であるため、きのこ類を使ったレシピがよくみられます。
下表は、猫用製品の原材料に使用されるきのこ類の主な栄養素と健康効果の一覧です。どの栄養素も栄養価や健康効果が高いものですが、特にオレンジ色の栄養素は猫の健康維持・向上に有効的なものです。
きのこ | 栄養素 | 特徴 |
---|---|---|
しいたけ![]() | ・βグルカン ・エルゴチオネイン ・エリタデニン ・レンチナン ・食物繊維 | ・免疫力向上 ・コレステロール低下 ・抗ウイルス作用 ・腸内環境改善 ・生活習慣病予防 |
舞茸![]() | ・βグルカン ・エルゴチオネイン ・MDフラクション ・カリウム ・ビタミンB2 | ・抗腫瘍作用 ・血糖値調整 ・免疫力向上 ・脂肪燃焼促進 ・心血管疾患予防 |
えのき | ・βグルカン ・ビタミンB1 ・ビタミンB2 ・食物繊維 | ・抗酸化作用 ・疲労回復 ・腸内環境の改善 ・生活習慣病予防 ・ダイエット |
しめじ![]() | ・βグルカン ・オルニチン ・ビタミンB2 ・食物繊維 | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・腸内フローラ改善 ・抗ストレス ・動脈硬化予防 |
マッシュルーム | ・エルゴチオネイン ・ビタミンB群 ・セレン | ・免疫調整 ・肝機能改善 ・抗がん作用 ・腸内環境改善 ・骨の健康維持 |
エリンギ | ・βグルカン ・エルゴチオネイン ・食物繊維 ・ビタミンB群 | ・抗酸化作用 ・免疫力向上 ・血圧の調整 ・腸内環境改善 ・脂質代謝の改善 |
きくらげ![]() | ・βグルカン ・ビタミンD ・食物繊維 | ・貧血予防 ・骨の健康維持 ・美肌効果 ・抗菌作用 ・免疫強化 |
山伏茸![]() | ・βグルカン ・エルゴチオネイン ・ヘリセノン ・エリナシン ・食物繊維 | ・認知機能向上 ・ストレス軽減 ・免疫賦活作用 ・胃腸機能改善 ・抗酸化作用 |
霊芝![]() | ・βグルカン ・トリテルペノイド ・ガノデリン酸 ・ポリフェノール | ・抗炎症作用 ・抗ウイルス作用 ・血圧調整 ・コレステロール低下 ・ストレス軽減 |
アガリクス![]() | ・βグルカン ・ポリフェノール | ・抗がん作用 ・免疫活性化 ・抗酸化作用 ・アレルギー軽減 ・抗菌作用 |
たもぎ茸![]() | ・エルゴチオネイン ・ポリフェノール | ・抗酸化作用 ・肝機能向上 ・腸内環境改善 ・認知機能維持 ・免疫バランス調整 |
冬虫夏草![]() | ・βグルカン ・コルジセピン ・アデノシン ・ポリフェノール | ・持久力向上 ・抗疲労作用 ・血糖値調整 ・免疫バランス調整 ・抗炎症作用 |
チャーガ (カバノアナタケ) | ・βグルカン ・トリテルペノイド ・メラニン ・ポリフェノール | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・抗がん作用 ・免疫力向上 ・血糖値の安定化 |
ハナビラタケ | ・βグルカン ・エルゴチオネイン ・ビタミンC ・トレハロース | ・免疫調整 ・血圧調整 ・骨の健康維持 ・動脈硬化予防 ・胃腸機能改善 |
サルノコシカケ | ・βグルカン ・トリテルペノイド ・ポリフェノール ・食物繊維 ・ビタミンB群 | ・抗炎症作用 ・抗がん作用 ・免疫力向上 ・血糖値の調整 ・肝機能の向上 |
ザイレリア | ・βグルカン ・食物繊維 | ・血糖値調整 ・コレステロール低下 ・抗炎症作用 ・抗疲労作用 ・生活習慣病予防 |
メシマコブ | ・βグルカン ・トリテルペノイド ・ポリフェノール ・食物繊維 | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・抗がん作用 ・免疫力向上 ・肝機能の向上 |
カワラタケ | ・βグルカン ・トリテルペノイド ・カワラタケ多糖体 ・ポリフェノール ・食物繊維 | ・抗酸化作用 ・免疫力向上 ・腸内環境改善 ・肝機能の改善 |
きのこ類の栄養素と猫への健康効果
βグルカンの免疫力向上
βグルカンとはきのこ類に豊富に含まれる多糖類の一種で、猫の免疫細胞に働きかけ、マクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞を活性化することで免疫機能を強化し、病原菌やウイルスへの抵抗力を高めるとされています。
また、抗炎症作用や抗腫瘍作用、腸内環境の改善、コレステロールの低下など多くの健康効果を持っています。
βグルカンはきのこ類の中でも、特に舞茸に豊富に含まれていることが分かりました。

引用:食用きのこにおけるβ-グルカンについての一考察のデータをもとに作成
エルゴチオネインの強い抗酸化作用
エルゴチオネイン(Ergothioneine)は、主にきのこ類に豊富に含まれる強力な抗酸化成分です。体内に長期間蓄積されやすいのが特徴で、持続的に抗酸化作用を発揮します。細胞の酸化ストレスを抑えることで老化の進行を遅らせたり、生活習慣病のリスクを低減したりする働きが期待されています。
特にたもぎ茸には、エルゴチオネインがしいたけの約7倍、βグルカンがアガリクスの約2倍含まれています。研究によると、たもぎ茸の抗酸化作用は、他のきのこ類と比較しても非常に高く、抽出温度に関わらず安定した活性を示すことが確認されています。

出典:糖脂質を主とするきのこの機能性成分の効率的生産技術と素材加工技術の開発|北海道立総合研究機構食品加工研究センターのデータをもとに作成
きのこ類が原材料のキャットフード例
主に乾燥したものを使用
キャットフードの原材料に使用されるきのこ類は、主に乾燥させたものが使用されることが一般的です。乾燥させることで水分が除去されて栄養素が凝縮されるため、同じ重量あたりの栄養価が高まるためです。
乾燥しいたけ | 生しいたけ | ||
---|---|---|---|
カロリー | 258 | 25 | kcal |
タンパク質 | 21.2 | 3.1 | g |
脂質 | 2.8 | 0.3 | g |
炭水化物 | 62.5 | 6.4 | g |
食物繊維 | 46.7 | 4.6 | g |
ビタミンD | 17.0 | 0.3 | μg |
例えば、乾燥しいたけと生しいたけを比べると、タンパク質や食物繊維、ビタミンDの含有量が増加することが分かります。
また、乾燥させることで保存性が向上し、キャットフードの品質を長期間維持することが可能になります。
このように、きのこ類は猫にとって高い健康効果を持ちますが、きのこ類を使用したキャットフードは多くありません。
きのこ類が原材料のキャットフード例
猫が毒きのこを食べてしまわないように注意
基本的に、人が食べているきのこであれば猫が食べても問題はないといわれていますが、屋外に出る猫は、毒きのこを食べてしまう可能性があるので注意しましょう。
- クサウラベニタケ
- ドクツルタケ
- コレラタケ
- テングタケ
- ベニテングタケ など
えのきやエリンギ、マッシュルームなど見た目が似ているきのこもあります。きのこ狩りなどで一般の方が採集したきのこは見分けが付かず、毒きのこで食中毒を起こす可能性があるので十分に注意しましょう。
まとめ

キャットフードに含まれるきのこ類のβグルカンは、猫の腸内の免疫細胞を活性化し、免疫力を高め、感染症予防やアレルギー軽減に寄与します。また、抗酸化作用があり、老化防止にも期待できます。
きのこ類がキャットフードの原材料に使用されるのは多くありませんが、高い健康効果を誇ります。