キャットフードのパントテン酸(ビタミンB5)。ATPを作る補酵素として働く

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キャットフードの栄養素:パントテン酸(ビタミンB5)

キャットフードのパントテン酸(pantothenic acid)は、糖や脂肪酸の代謝における重要な反応に関わる必須栄養素です。かつてはビタミンB5とも呼ばれていました。

パントテン酸は様々な食材に含まれています。パントテン酸の語源が「どこにでもある酸(ギリシャ語)」という言葉が由来しているくらいなので、日常生活の中で不足や欠乏は非常に稀ですが、パントテン酸は生命活動に必要不可欠なエネルギーを取り出すための重要な反応に関与しています。

パントテン酸が豊富な食品

特に含有量が多いのは以下の食品です。

  • 乾燥酵母
  • レバー
  • 大豆
  • 干し椎茸
  • 鰯 など

パントテン酸は大体の食品に含まれていますが、大豆やトウモトコシ中のパントテン酸は吸収性が高いことが分かっています。ただ、麦類に含まれるパントテン酸の吸収性は60%程です。

キャットフードでは栄養添加物としてパントテン酸カルシウムが用いられることがあります。

パントテン酸の複合体:補酵素A(CoA)、ホスホパンテテイン

パントテン酸はキャットフード内では、補酵素A(CoA)やホスホパンテテイン(CoA合成の代謝中間体)など結合した複合体の状態で含まれます。フードを摂取した猫の小腸で、パントテン酸に変換され、遊離した単体のパントテン酸が血液中から必要な器官に運ばれます。

猫におけるパントテン酸(ビタミンB5)の働き

糖質・脂質・タンパク質の代謝とエネルギー産生に関与

パントテン酸は糖質・脂質・タンパク質など多くの代謝過程をサポートする働きがあります。

パントテン酸は、coenzymeA(CoA)という補酵素の構成成分として、TCA回路の基質(エネルギー産生に使われる物質)となります。TCA回路とは、脂肪・アミノ酸・グルコースからATP(アデノシン三リン酸)を作り出す代謝経路のことです。

ATP(アデノシン三リン酸)とは「生体のエネルギー通貨」と言われる重要な物質で、筋肉の収縮など生命活動で利用されるエネルギーの貯蔵・放出に関わっています。

パントテン酸はエネルギー通過であるATPをつくるTCA回路のCoAの構成要素として重要な役割を果たします。

脂肪酸の合成や善玉コレステロールの合成

またパントテン酸は脂肪酸やHDLコレステロール(善玉コレステロール)の合成にも関与しています。

脂肪酸の合成酵素を構成するアシルキャリアータンパク質の活性に必要不可欠です。

副腎皮質ホルモンの働きを促進、免疫抗体の合成、薬物の解毒作用など

パントテン酸は代謝に関わる回路を構成しているので、他にもストレスを緩和する副腎皮質ホルモンの活性化、免疫抗体の合成、薬物の解毒作用、皮膚や粘膜の健康維持など様々な器官や働きに関与しています。

キャットフードに必要なパントテン酸(ビタミンB5)の量・基準

キャットフード パントテン酸 ビタミンB5
画像引用元:2016 AAFCO Midyear Meeting Committee Reports

ペットフード公正取引協議会が採用するAAFCOのガイドラインによると、ドライタイプのキャットフードのパントテン酸(ビタミンB5)の最低基準は、幼猫用・成猫用ともに5.75mg/kg以上と定められています。

最大値(上限値)の設定はありません。

パントテン酸(ビタミンB5)の欠乏/過剰摂取

欠乏

  • 成長抑制
  • 脂肪肝
  • 体重減少

パントテン酸欠乏症として、猫では脂肪肝や体重減少が生じます。ただパントテン酸は様々な食品に含まれる他、腸内細菌によっても合成されるされるので、不足することはまずないと言われています。

過剰摂取

  • 運動失調
  • 筋肉の脆弱化
  • 平衡感覚の欠如

一般的にパントテン酸の毒性は極めて低いと考えられています。

まとめ

  • ビタミンB群の必須栄養素
  • 複合体の補酵素(CoA)として働く
  • 糖やタンパク質、脂肪の代謝を行う
キャットフード ビタミン

キャットフードのビタミン類。猫の必須ビタミンの種類と働き、欠乏症/過剰摂取の症状を解説

2018年9月25日

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一般社団法人ペットフード協会ペットフード販売士、キャットフード勉強会ディレクターとして、キャットフードに関する情報を提供しています。また、日本化粧品検定協会のコスメコンシェルジュ資格を有し、ペットフードだけでなく化粧品にも精通しています。販売時に必要な知識となる薬機法などについてもご紹介ができます。 日本化粧品検定協会会員。