猫が日本脳炎に感染することは非常に低い確率ですが、可能性はゼロではありません。
この記事では猫と日本脳炎の関係や感染経路、症状、予防について解説します。
日本脳炎(japanese encephalitis)とは
日本脳炎(japanese encephalitis)とは日本脳炎ウイルスによって引き起こされるウイルス性の感染症です。フラビウイルス科に分類されるウイルスで、デングウイルスや黄熱ウイルス、ジカウイルスなど蚊を媒体とするウイルスも属しています。
日本脳炎ウイルスは主にコガタアカイエカなどの蚊が媒介となって人や動物に感染し、東南アジアを中心に世界中に広がっています。主に人間や馬、豚に影響を与えることで知られていますが、猫も感染する可能性があります。
猫の日本脳炎感染もゼロではない
猫の日本脳炎感染は非常に稀だが、ゼロではない
猫が日本脳炎ウイルスに感染する可能性は非常に低いですが、感染のリスクはゼロではありません。
ネコにおけるJEV感染状況を調査した。ネコにおいては1997~1999年に215頭、2004~2005年に77頭の計292頭のJEVに対する中和抗体保有状況を調査した。その結果、わずか3頭 (1.0%)が陽性になった。ネコにおいての抗体保有状況は、イヌに比べて10倍以上低く、以前の日本での調査やWNVの疫学調査においてもネコはイヌに比べて感染率が低いことと一致している。蚊の嗜好性や動物の感受性が影響しているのかもしれない。
屋外に出る猫は注意
日本脳炎は馬や豚が感染源となり、蚊を媒介して他の動物へと広がるのが感染パターンです。そのため、屋外に出る機会の多い猫や、蚊が多く生息する地域に住む猫は感染のリスクが高くなります。
猫の日本脳炎の症状
猫が日本脳炎に感染した場合、他の神経系の疾患と類似していることが多く、以下のような症状や兆候がみられます。
- 発熱
- 食欲不振:ごはんを食べなくなる、食べる量が減る
- 神経症状:落ち着きがない、痙攣、ふらつき、麻痺など
- 倦怠感:元気がなくなる、動くことを嫌がる
猫における日本脳炎の症例は非常に少ないため、これらの症状がすべての猫にあられるわけではありません。
人や他の動物の場合、発熱や元気食欲の消失、麻痺や痙攣などの神経症状があらわれ、症状が進行すると死亡する場合もありますが、猫は人や他の動物に比べて日本脳炎に対する免疫力が強い可能性が示唆されており、感染しても無症状であるか、軽度の症状しか示さないこともあるといわれています。
日本脳炎の治療
猫が日本脳炎に感染した場合、人間における日本脳炎の治療と同様に、治療は対症療法となります。対症療法とは病気そのものを治すのではなく、あらわれている症状を緩和することを目的とした治療です。
例えば、痙攣を起こしている場合は抗けいれん薬の投与、脱水症状が起きている場合は輸液、食欲不振がある場合は栄養補給などを行います。重症の場合は入院して集中治療を行うこともあります。
日本脳炎にならないための対策
以下の対策を行うことで、日本脳炎のリスクを最小限に抑えることができます。
蚊の繁殖を防ぐ
蚊は水辺で繁殖するため、わずかな水でも蚊が発生する可能性があります。庭やベランダにある水たまりは定期的に取り除きましょう。
猫を外に出さない
基本的に猫は室内飼育ですが、散歩などで外に出るときは蚊の多い夕方や早朝は避けましょう。とくに夏はどの時間帯でも蚊は活発に行動するため、この時期は外出を制限することが対策となります。
蚊除け対策
窓やドアに網戸を設置する、蚊よけの薬剤や虫よけスプレーを使用するなどで蚊との接触を減らすことで、感染のリスクを減らすことができます。猫の皮膚に直接付ける薬剤やスプレーなどは必ずペット用のものを使用しましょう。
ワクチンの接種
人や馬などの日本脳炎ワクチンは開発されていますが、現時点では猫用のワクチンはありません。心配な場合は獣医師さんに相談してみましょう。
まとめ
日本脳炎の研究はほとんどが人や農業に関連する動物に焦点を当てているため、猫における日本脳炎の研究はまだまだ初期段階です。
しかし今後、猫が日本脳炎ウイルスに対してどの程度の感受性を持ち、どのように対応すべきかについての研究が進展することで、より効果的な予防や治療薬が開発されることが期待されます。