猫の口腔内腫瘍とは
口腔内腫瘍とは、口の中にできる良性または悪性のできものの総称で、猫の口腔内腫瘍の約7割は悪性の「扁平上皮癌」といわれています。
進行が早く強い痛みを伴う病気のため、飼い主による早期発見が治療につながります。
「猫の口の臭いが気になる」「猫が口を痛そうにしている」などの症状がみられる場合は、注意が必要です。
この記事では、猫がかかる口腔内腫瘍の種類、症状、治療方法などをご紹介します。
猫がかかる口腔内腫瘍の種類
猫の口腔内腫瘍は、高齢猫がかかりやすい病気です。良性腫瘍のほか、悪性の扁平上皮癌、線維肉腫、悪性黒色腫(メラノーマ)がみられます。
| 種類 | 発生頻度 | 発生部位 | 遠隔転移 | 局部浸潤性 | 再発率 | 生存期間 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 扁平上皮癌 | 約60~70% | 主に下顎骨周辺、舌下、下顎歯肉、頬の内側、扁桃 | 比較的まれ | 非常に強く早い | 高い | 約3〜5ヶ月程度 |
| 繊維肉腫 | 約10~20% | 歯肉、唇、上顎、下顎の骨 | 比較的まれ | 非常に強い | 高い | 約数ヶ月~1年以上 |
| 悪性黒色腫(メラノーマ) | 非常にまれ | 歯肉、上顎、舌、口唇 | 高い | 非常に強い | 高い | 約2ヶ月〜数ヶ月 |
扁平上皮癌
口腔扁平上皮癌は、猫の口腔内腫瘍で最も多く見られる悪性腫瘍です。主に高齢の猫がかかりやすい病気で、非常に進行が早いため早期の治療がカギとなります。
主に下顎周辺に発生し、局部浸潤性(※)が非常に強く、周囲の骨を破壊し溶かす特徴があります。
再発しやすく転移しにくい腫瘍であるため、早期発見と最初の外科的摘出が重要です。
治療が難しく予後不良とされる腫瘍のため、外科治療後の1年生存率は約10%ともいわれています。
線維肉腫
線維肉腫は、コラーゲンを作る線維芽細胞が異常増殖して発生する悪性腫瘍です。口腔線維肉腫は、歯肉や上顎、下顎、口内など、とくに上顎部に最も多くみられます。
局部浸潤性が強く、周囲の組織に深く広がっていくため、完全な外科的切除が難しい腫瘍です。再発率は高いですが、他の臓器への転移は比較的まれとされています。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫、別名メラノーマは、メラニン色素を作る細胞ががん化する悪性度の高い皮膚がんです。
猫のメラノーマは眼や皮膚に発生しやすく、一般的には黒色のしこりが特徴的です。口腔内メラノーマは比較的珍しいものの、非常に進行が早く局部浸潤性が強い傾向があります。
また、上記2種の悪性腫瘍と違い、遠隔転移(※)がしやすいため全身転移にならないよう早期の外科的手術が必要になります。
良性腫瘍
口腔内の腫瘍が良性の場合は、周囲の組織への浸潤や転移がなくゆっくりと成長します。命に関わるリスクは低いものの、腫瘍が大きくなると食事や健康に支障をきたすため、手術で取り除く必要があります。
良性の口腔内腫瘍は、線維種、エプーリス、パピローマなどが挙げられます。
※局部浸潤性:がん細胞が元の発生場所にとどまらず、周囲の組織や臓器に染み込むように広がっていく性質のこと
※遠隔転移:最初に発生したがんから離れた臓器(骨、肺、肝臓、脳など)にがん細胞が移動し増殖すること
参照:口腔内腫瘍
口腔内腫瘍の症状
猫の口腔内腫瘍は、初期の段階だと口内炎や歯周病と見分けがつきにくく、発見が遅れやすい病気です。
また、口腔内腫瘍の7割は悪性の扁平上皮癌といわれているため、早期の発見・治療が必要になります。
初期症状は以下の通りです。
- 腐敗臭のような強い口臭
- よだれの増加
- 口を気にする
- 食べにくそうにする
進行すると、口の中で痛みが生じ、キャットフードなど硬い食べ物を避けるようになります。
- 口からの出血
- 顔が腫れる
- 口が閉じにくくなる
- 歯のぐらつき
- 食欲低下
- 体重減少
猫は痛みを隠す傾向があり、口の中も見えにくいため、初期症状でみられる違和感がある場合は早めに動物病院を受診してください。
口腔内腫瘍の治療方法
猫の口腔内腫瘍が良性か悪性かは見た目で判断することが難しく、口腔内のしこりの診断には全身麻酔をした上での組織生検が必要になります。
外科的摘出
口腔内腫瘍が悪性だった場合、第一選択は外科的摘出です。
扁平上皮癌や線維肉腫は、転移はしにくく再発しやすいという特徴があり、1回目に完全切除できるかどうかが予後を左右します。
腫瘍を広範囲に取り除く必要があり、顎骨の一部切除または顎そのものの切除が必要になります。
術後は、胃ろうチューブで栄養管理が行われます。
放射線治療・化学療法
補助療法として、放射線治療や化学療法が行われる場合があります。
扁平上皮癌、メラノーマは両方行われる場合があります。
線維肉腫は放射線抵抗性があるため放射線治療単独での効果は発揮されませんが、外科的摘出とあわせて行うことで再発防止が期待されています。
線維肉腫では化学療法は有効でないため、現時点では行われていません。
緩和ケア
がんの状態が進行し、末期の場合はなるべく痛みを感じさせないように緩和ケアが行われます。
痛みの軽減、栄養のサポートなど、飼い主の希望やその猫に合った緩和ケアが提供されます。
緩和ケアの例:猫の口腔内扁平上皮癌(在宅緩和ケア)
口腔内腫瘍の余命
猫の口腔内腫瘍で最も多い扁平上皮癌は、予後不良の腫瘍といわれています。進行が早いため、無治療での余命は1~3ヶ月、1年生存率は10%以下とのデータがあります。
また、局部浸潤性が強く完全切除も難しく、再発率は80%と非常に厳しい病気です。
ただし、外科的手術と放射線治療の適切な処置によって、数年生きた例もあり、1回目の手術で完全に切除できるかどうかが予後を左右します。
猫の口腔内腫瘍を早期発見するには
悪性の口腔内腫瘍は、進行が早く再発率も高い病気です。
早期発見するためには、日頃から、猫の口の中を見たり体を触るなどスキンシップを行い、異変がないか確認することが重要です。
口臭が強くなったり口を気にする仕草があった場合は、かかりつけの動物病院で診療することをすすめます。



































































































































































