ブラックソルジャーフライとは?猫に与えても大丈夫な昆虫キャットフードの真実

近年、キャットフードの原材料として昆虫タンパクの「ブラックソルジャーフライ」が注目されています。

環境に優しい、アレルギーに配慮できるといったメリットが語られる一方で、「猫に与えて本当に大丈夫なのか」「従来の肉と比べてどうなのか」と不安に感じる方も多いはずです。

本記事では、ブラックソルジャーフライの基本から栄養、安全性、キャットフードに使われる理由までをわかりやすく解説します。

ブラックソルジャーフライとは一体なに?

ブラックソルジャーフライとは、いわゆる「ミズアブ」と呼ばれる昆虫の一種で、見た目はハエに近い生き物です。名前だけ聞くと少し驚くかもしれませんが、実際にキャットフードに使われているのは、この昆虫の「幼虫」の部分です。

この幼虫は、食品廃棄物などを分解する性質を持ち、効率よく栄養を蓄える特徴があります。そのため、乾燥させて粉末状にすることで、タンパク質源としてペットフードに利用されています。

なぜキャットフードに使われるのか

日本ではまだあまり馴染みのない原料ですが、EUでは昆虫由来のタンパク質はすでにペットフード原料として認められており、市場規模はまだ大きくないものの、実際に製品化されたキャットフードも確認されています。

ブラックソルジャーフライがキャットフードに採用される背景には、主に3つの理由があります。

  1. 新奇タンパクとしての役割
    従来の鶏肉や牛肉にアレルギー反応を示す猫に対して、昆虫タンパクは代替タンパクとして利用されます。
  2. 環境負荷の低さ
    昆虫は家畜と比べて、飼育に必要な水や土地が少なく、温室効果ガス排出量も低いとされています。
  3. 栄養価
    ブラックソルジャーフライは高タンパクであり、脂質やミネラルも含んでいます。

ブラックソルジャーフライの栄養価

タンパク質とアミノ酸の特徴

ブラックソルジャーフライは高タンパクな原料で、水分を除いた乾燥重量あたりでは全体の約30〜50%前後がタンパク質で構成されていると報告されています。

また、リジンなどの必須アミノ酸も含まれており、飼料原料として利用可能なアミノ酸バランスを持っています。

ただし、含有量は飼育環境や餌によって変動することが知られており、安定した栄養供給のためにはフード全体での設計が重要になります。

脂質とエネルギー源としての役割

ブラックソルジャーフライは脂質も豊富で、乾燥重量あたりでは全体の約12〜40%が脂質で構成されているとされています。

特にラウリン酸と呼ばれる中鎖脂肪酸を多く含み、エネルギー源として利用されるほか、抗菌作用を持つことが知られています。

ブラックソルジャーフライの脂質含有量も成長段階や飼育条件によって変動します。

ミネラルとその他栄養素

ブラックソルジャーフライはミネラルも豊富で、特にカルシウムやリンなどが多く含まれています

これは、幼虫の体を覆う外骨格のキチン構造にミネラルが蓄積されるためとされており、筋肉が主成分である肉とは異なる特徴です。

ブラックソルジャーフライの安全性

現時点では、ブラックソルジャーフライはペットフード原料として一定の安全性が認められています。

EUでは昆虫タンパクの使用が認可されており、規制のもとで流通しています。また、消化性や腸内環境への影響に関する研究も進んでいます。

ただし、従来の肉原料と比較すると、長期的な給餌データはまだ限定的であり、現時点では完全に同等と断定できるだけの十分な研究は揃っていません。

ブラックソルジャーフライと肉の違い

飼い主としてはここが最も重要なポイントなのではないでしょうか。

ブラックソルジャーフライのような従来とは異なるたんぱく源が、肉と比べてどのような違いを持つのかを理解することが大切であると考えます。

タンパク質

肉は猫の食性に適したタンパク源であり、体に必要なアミノ酸が自然にバランスよく含まれています。

ブラックソルジャーフライを含む昆虫タンパクも高タンパクで、乾燥重量あたり約30〜50%前後がタンパク質で構成されていると報告されており、必須アミノ酸も含まれています。

ただし、昆虫に限らず、単一原料だけで栄養が完結するわけではありません。これは肉でも同様で、実際のキャットフードは複数の原材料と栄養添加によって設計されています。

その一例として、猫に必須のタウリンは、ブラックソルジャーフライ単体では十分に補えない可能性があるため、フードでは添加によって調整されています。

消化性

昆虫タンパクは一定の消化率を持つことが研究で報告されており、ペットフード原料として利用可能な水準にあるとされています。実際にブラックソルジャーフライを使用した飼料では、犬や猫において良好な消化性が確認されたという報告もあります。

一方で、昆虫にはキチンと呼ばれる外骨格成分が含まれており、これは食物繊維のように消化されにくい性質を持っています

このため、栄養の吸収に影響することがあり、特にタンパク質の消化に関係すると考えられています。ただし、脂質の消化については大きな影響はないとする研究結果もあります。

現時点では、肉と比較すると消化に影響を与える可能性はあり、両者の消化性が完全に同等であるという明確な結論は出ていません。

栄養設計

キャットフードは、肉や昆虫といった原材料の違いに関わらず、複数の原材料と栄養添加によって全体のバランスが設計されています。

肉を主原料としたフードは、猫の食性に近い形で栄養を構成しやすい一方で、それでも単体で完全な栄養を満たすわけではなく、ビタミンやミネラルの添加は必要です。

ブラックソルジャーフライを含む昆虫タンパクの場合は、栄養成分が飼育条件や加工方法によって変動することが知られており、より精密な栄養調整が重要になります。

 嗜好性

嗜好性については個体差が大きく、一概に優劣をつけることはできません

研究では、昆虫タンパクを使用したフードに対して一定の受容性が確認された例もありますが、従来の肉原料と比較した場合、嗜好性が低下する個体がいることも報告されています。そのため、切り替え時には徐々に慣らすことが推奨されています

メリットとデメリット

ブラックソルジャーフライの大きなメリットの一つは、新奇タンパクとして活用できる点にあります。

鶏肉や牛肉など、一般的に使われるタンパク源にアレルギーがある猫にとっては、これまで摂取したことのないタンパク質を選ぶことで、食事による負担を抑えられる可能性があります。そのため、特定の食材にアレルギーや不耐性がある場合の選択肢として検討されることがあります。

一方で、昆虫はエビやカニ、ダニと同じ節足動物に分類されるため、体内のタンパク質の構造に共通点があります。このことから、これらにアレルギーを持つ場合には、昆虫タンパクに対しても反応が出る可能性があることが指摘されています。実際に、甲殻類やダニにアレルギーを持つ人の血液が、ブラックソルジャーフライのタンパク質に反応する傾向が確認された研究もあります。

さらに、昆虫タンパクは従来の肉原料と比べると、実際に摂取した際のアレルギー発症リスクや、長期的に与えた場合の影響については、まだ十分なデータがそろっているとはいえません。そのため、安全性については今後の研究の積み重ねが求められている段階です。

どんな猫に向いているか

ブラックソルジャーフライを使用したフードは、特に食物アレルギーのある猫や、特定のタンパク源に不耐性がある猫に対して選択肢となります。

ただし、上記で解説したよう甲殻類やダニと共通するアレルゲンタンパクを含むため、交差反応の可能性が指摘されています。また、健康な猫にとって必ずしも優先すべき原料とは限らず、あくまで選択肢の一つとして考えるのが現実的です。

まとめ

ブラックソルジャーフライは、キャットフードの新しいタンパク源として注目されている原料です。欧州ではすでに使用が認められており、一定の安全性と栄養価は確認されています。

しかし、猫の主食としての最適性については、従来の肉と比較した長期的なデータがまだ十分とは言えません。アレルギー対策やフードローテーションの一環として、目的を明確にしたうえで取り入れることが重要です。

参考:Black Soldier Fly: A Keystone Species for the Future of Sustainable Waste Management and Nutritional Resource Development: A Review
参考:Import of processed animal protein (PAP) derived from farmed insects not for human consumption – Import Information Note (IIN) ABP/45
参考:Palatability and apparent total tract macronutrient digestibility of retorted black soldier fly larvae-containing diets and their effects on the fecal characteristics of cats consuming them
参考:Insect meals in cat diets and their effects on digestibility, physiology, and gut microbiota
参考:Edible Insects and Allergenic Potential: An Observational Study About In Vitro IgE-Reactivity to Recombinant Pan-Allergens of the Black Soldier Fly (Hermetia illucens) in Patients Sensitized to Crustaceans and Mites