猫の消化器症状(下痢や軟便、嘔吐など)は、食事の変化やストレス、腸内環境の乱れなどが原因で起こることがあります。
「いつもより便がゆるい」「トイレの回数が増えた」などの症状が続くと、さらに重大な病気へとつながる恐れもあります。
アニコムが発行する「家庭どうぶつ白書2023」によると、猫の疾患別ペット保険の請求において消化器疾患が1位となっています。
出典:どうぶつの疾患統計|アニコム家庭どうぶつ白書2023のデータをもとに作成
猫の下痢や軟便、嘔吐などは、腸内環境を整えることで改善されることがあります。
腸内環境を改善するといえばやはり乳酸菌ですが、その中でもとくに注目したいのが「乳酸菌FK-23」。
なんと、乳酸菌FK-23は腸内環境を整えるだけでなく、ヨーグルトなどの生きた乳酸菌と比べて免疫力を高める効果が約3倍ともいわれているんです。
今回は、乳酸菌FK-23の猫への健康効果や、キャットフードの配合目的、また免疫活性作用をさらに高める方法について解説します。
乳酸菌FK-23とは
加熱処理した乳酸菌(死菌)
乳酸菌FK-23(lactic bacteria FK-23)とは、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)を加熱処理した乳酸菌(死菌)で、猫の免疫活性化作用や腸内環境の改善効果が期待される機能性乳酸菌です。
乳酸菌FK-23は、正式にはエンテロコッカス・フェカリスFK-23株とよばれます。その他にも乳酸菌FK23、FK23と表記されることもあります。
免疫活性化作用が生菌の約3倍
加熱処理乳酸菌(死菌)である乳酸菌FK-23は、ヨーグルトなどの生菌と比較して免疫活性化作用(免疫力を高める効果)が約3倍になると報告されています。
また、他の加熱処理乳酸菌(死菌)と比べても免疫賦活活性が高いことも報告されています。(下表参照)
出典:もっと知りたい濃縮乳酸菌FK-23、LFK、MK-16|ニチニチ製薬株式会社のデータをもとに作成
乳酸菌FK-23はキャットフードにも使用される
乳酸菌FK-23が配合される目的
乳酸菌FK-23はキャットフードやサプリメント、デンタルガム、ジャーキーなど多くの原材料に使用されています。
キャットフードに含まれる乳酸菌は基本的に腸内環境の改善を目的としていますが、乳酸菌FK-23は腸内環境を整えるだけでなく、猫の免疫力の向上やアレルギーの軽減、アトピー症状の改善、老化・がん防止など、猫の健康維持に幅広く貢献する成分です。
また、乳酸菌FK-23は生菌ではなく死菌のため、キャットフードなどの製品の品質が安定しやすく、猫が安全に摂取できるというメリットもあります。
乳酸菌FK-23が原材料のキャットフード
乳酸菌FK-23を配合しているおやつやサプリメント、栄養補助食品は多数あります。
- Sippole にゃろみ(無添加 国産) 猫用おやつ
- ドギーマン キャティーマン ねこちゃんの国産牛乳 乳酸菌プラス
- ニチニチ製薬 ツヤットtsuyattoペット用乳酸菌FK-23
- ジャスティカ Zoot(ズ〜ット) など
これらのような乳酸菌FK-23に特化した商品は、乳酸菌FK-23が配合されていることを公式サイトなどで大きく公表しています。
しかし、キャットフードの場合、乳酸菌は配合量が微量であり、詳細な種類まで記載しないため、原材料欄に「乳酸菌」と記載があっても、具体的にどのような種類の乳酸菌を使用しているのかの記載がない場合がよくあります。
普段猫に与えているキャットフードの乳酸菌がどのような種類なのを確認したい場合は、キャットフードメーカーに直接問い合わせしてみましょう。
乳酸菌FK-23の猫への健康効果
- 腸内環境の改善
- 善玉菌の増殖、悪玉菌の抑制
- 便通の正常化(下痢や軟便の改善)
- 免疫力の向上(免疫賦活作用の増強)
- 抗炎症作用による炎症の緩和
- 抗酸化作用による老化・がん予防
- アレルギー症状の軽減
- アトピー性皮膚炎の改善
- 消化吸収のサポート
免疫賦活作用を増強
乳酸菌FK-23は腸管免疫を刺激し、マクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞を活性化することで、病原菌やウイルスに対する防御機能を強化します。
乳酸菌の免疫賦活作用を増強する組成物および方法に関する文献では、乳酸菌免疫賦活作用増強組成物を乳酸菌FK-23に添加することにより、乳酸菌の免疫賦活作用を増強することができることが分かりました。
つまり、乳酸菌と他の成分を組み合わせることで免疫系への刺激効果を高め、より効果的な免疫応答を誘導するということです。
参考:乳酸菌免疫賦活作用増強組成物及び乳酸菌免疫賦活作用増強方法
アトピー性皮膚炎の改善
アトピー性皮膚炎は猫でもよくみられるアレルギー疾患の一つです。
アレルギーは免疫系が過剰に反応することで起こりますが、乳酸菌FK-23は腸内の善玉菌を増やして腸管免疫を調整することで炎症を抑え、過剰な免疫反応を抑制する働きを持ちます。とくにアトピー性皮膚炎や食物アレルギーによる炎症や痒みの改善が期待されています。
犬のアトピー性皮膚炎と腸内細菌叢に関する研究では、乳酸菌FK-23を連日84日間投与したところ、アトピー性皮膚炎の症状を改善する可能性があることが分かりました。
こちらの研究は犬に関するものですが、猫にも同様の改善がみられると考えられます。
また、犬や猫などのペットを子供の幼少期に飼育すると、子供の気管支喘息罹患率が低いことが報告されています。ペットを飼育することでペットに対するアレルギーが増加する可能性はありますが、食物アレルギーや気管支喘息罹患率が明らかに減少することが明らかになりました。
抗酸化作用による老化・がん予防
乳酸菌FK-23は体内の酸化ストレスを軽減し、健康維持や老化防止に役立つ抗酸化作用を持ちます。酸化ストレスとは、活性酸素が過剰に発生して細胞を傷つけることで、老化やがんの原因となる現象です。
その他にも皮膚や被毛の健康維持、関節の健康促進、生活習慣病の予防に効果が期待されており、猫の健康長寿にも貢献する可能性があります。
乳酸菌FK-23の免疫活性作用をさらに高めるには?
乳酸菌FK-23は「腸内で増殖する」生菌と異なり、「腸管免疫を直接刺激することで免疫活性作用を発揮する」のが特徴です。
乳酸菌FK-23が配合されたおやつやサプリメント、栄養補助食品は多数あるため、日頃の食事やトッピングなどで猫に与えることで効果を最大限に引き出すことが可能です。
乳酸菌FK-23の最大の特徴である免疫活性作用を効率よく高める方法を解説します。
一定量を継続的に摂取
生菌と異なり、死菌は腸内で増殖しないため、一度摂取しても体内に長く留まりません。そのため、猫の免疫活性作用を持続させるには一時的に大量に摂取するのではなく、一定量を継続的に摂取する方が効果的です。
また、乳酸菌FK-23はマクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞を活性化することで免疫力を高めますが、この活性化は一時的なため、猫に継続して与えなければ免疫の活性化効果が持続しにくいです。
プレバイオティクスと一緒に摂取
腸内の善玉菌(プロバイオティクス)のエサとなるプレバイオティクスと乳酸菌FK-23を一緒に摂取することで、猫の腸内の善玉菌が増えてバリア機能が向上し、乳酸菌FK-23の免疫刺激効果をさらに高めることができます。
免疫が低下しやすい時期に重点的に摂取
猫は季節の変わり目や冬場は免疫力が低下しやすいため、乳酸菌FK-23の摂取による免疫活性作用がとくに有効になります。
また猫の高齢期や、ストレスがかかる環境下に摂取することで健康維持が期待できます。
まとめ
乳酸菌FK-23は、猫の免疫力を高めるのに非常に優れた乳酸菌です。
生菌と比較して免疫活性が約3倍も高いことが研究で示されており、腸内環境を整えるだけでなく、病原菌やウイルスに対する防御力を強化します。さらに、アレルギー症状の軽減や健康維持にも寄与すると考えられています。
乳酸菌FK-23の継続的な摂取が、長生きや健康維持の鍵となるでしょう。