「最近、猫の体調がすぐれない…」「免疫力を高めて病気を予防したい!」そんな飼い主さん必見!
猫が健康で長生きする鍵は、日々の食事や食べ物にあります。免疫力を高める食べ物や栄養素を摂ることで免疫力を高めることができ、病気にかかりにくく、ストレスや環境の変化にも強くなります。
今回は、猫の免疫力を高める食べ物や栄養素について解説します。愛猫が元気で長生きできるよう、今日からできる食事改善のポイントをチェックしましょう!
免疫力とは?
病原体から体を守る防御機能
免疫力とは、体が外部からのウイルスや細菌、病原体に対抗し、健康を維持するための防御機能です。免疫力が低下すると病気にかかりやすくなるだけでなく、治りにくくなります。
免疫力の低下は栄養不足やストレス、生活環境の変化、病気や感染症、運動・睡眠不足などさまざまな要因で起こりますが、その中でも食事や食べ物は免疫力に最も直接的に影響を与える重要な要素です。
免疫細胞の約70%は腸に存在
人間と同じように、猫の免疫細胞の約70%は腸に存在しているといわれています。
腸内には善玉菌・悪玉菌・日和見菌など数多くの細菌が存在しますが、これらの腸内細菌が免疫細胞を刺激し、免疫機能を調整する重要な役割を果たします。
つまり、腸内環境が良好であれば、免疫システムも正常に機能しやすくなります。
猫の免疫力を高める食べ物
猫の免疫力を高める食べ物として代表的なのが、下記の食べ物です。
これらの食べ物は多くのキャットフードでも使用され、免疫力を高める他にも猫にとって多くの健康効果があります。
食べ物 | 栄養素 | 特徴 |
---|---|---|
鶏肉 | ・タンパク質 ・ビタミンB6 ・ナイアシン ・亜鉛 ・鉄分 | ・高品質なタンパク質 ・低脂質 ・消化がいい ・エネルギー代謝を促進 ・骨や歯の健康を維持 |
牛肉 | ・タンパク質 ・ビタミンD ・ビタミンB6 ・亜鉛 ・鉄分 | ・免疫細胞の生成をサポート ・赤血球の生成 ・神経系の健康を支える ・筋肉の維持 ・貧血予防 |
レバー | ・ビタミンA ・ビタミンB12 ・亜鉛 ・鉄分 ・葉酸 | ・抗酸化作用 ・貧血予防 |
サーモン | ・オメガ3脂肪酸 (EPAやDHA) ・ビタミンE ・ビタミンB12 ・アスタキサンチン | ・免疫調節作用 ・抗炎症作用 ・強い抗酸化作用 ・皮膚や被毛の健康維持 ・心臓や関節の健康を促進 |
サバ | ・オメガ3脂肪酸 (EPAやDHA) ・ビタミンB6 ・ビタミンD | ・抗炎症作用 ・脳機能サポート |
イワシ | ・オメガ3脂肪酸 (EPAやDHA) ・ビタミンB12 ・ビタミンD ・カルシウム ・セレン | ・小魚の中で高栄養価 ・抗炎症作用 ・抗酸化作用 ・歯や骨の強化 ・骨格の健康維持 |
マグロ | ・オメガ3脂肪酸 (EPAやDHA) ・ビタミンB6 ・ナイアシン ・リン | ・抗炎症作用 ・心血管系の健康維持 |
卵 | ・βカロテン ・ビタミンE ・ビタミンD ・レシチン ・コリン | ・完全栄養食品 ・抗酸化作用 ・筋肉や骨の健康維持 ・疲労回復 ・皮膚や被毛の健康維持 |
きのこ類 | ・βグルカン ・エルゴチオネイン ・ビタミンD | ・強い抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・腸内環境の改善 |
ニンジン | ・βカロテン ・ビタミンC ・ビタミンK ・食物繊維 | ・視力の維持 ・皮膚や粘膜の健康維持 ・腸内環境の改善 ・抗酸化作用 ・血圧の安定 ・血液凝固 |
かぼちゃ | ・βカロテン ・ビタミンC ・食物繊維 | ・腸内環境の改善 ・皮膚や粘膜の健康維持 ・血圧の調整 ・体力回復 |
サツマイモ | ・βカロテン ・ビタミンB6 ・ビタミンC ・食物繊維 | ・腸内環境の改善 ・皮膚や粘膜の健康維持 |
ほうれん草 | ・βカロテン ・ビタミンK ・鉄分 ・葉酸 | ・血液循環が改善 ・細胞の再生と修復 ・貧血予防 |
ブロッコリー | ・ビタミンC ・食物繊維 ・カルシウム ・カリウム | ・強い抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・骨の健康を維持 ・腸内環境の改善 |
納豆 | ・ナットウキナーゼ ・プロバイオティクス ・ビタミンK2 ・食物繊維 | ・血流改善 ・腸内環境の改善 ・骨や血管の健康維持 ・抗酸化作用 |
えんどう豆 | ・タンパク質 ・βグルカン ・ビタミンB1 ・ビタミンB6 ・食物繊維 | ・筋肉の構成要素 ・抗酸化作用 ・腸内環境の改善 ・貧血予防 |
海藻 | ・βグルカン ・ビタミンK ・フコイダン ・アルギン酸 | ・抗酸化作用 ・腸内環境の改善 ・血液凝固の調整 ・骨の健康維持 |
りんご | ・ビタミンC ・ビタミンK ・食物繊維 | ・低カロリー、低脂肪 ・抗酸化作用 ・腸内環境の改善 |
ヨーグルト | ・プロバイオティクス ・カルシウム ・ビタミンD ・リン ・ビタミンB2 | ・腸内環境の改善 ・骨や歯の強化 ・消化不良の改善 |
カッテージチーズ | ・カルシウム ・タンパク質 ・ビタミンB12 ・リン ・プロバイオティクス | ・腸内環境の改善 ・骨の健康維持 |
ベリー類 | ・ビタミンC ・ビタミンE ・食物繊維 ・アントシアニン ・プロアントシアニジン | ・抗菌作用 ・抗酸化作用 ・目の健康維持 ・泌尿器系の健康維持 ・老化防止 |
亜麻仁油 | ・オメガ3脂肪酸 (EPAやDHA) ・リグナン ・食物繊維 | ・抗炎症作用 ・細胞の酸化防止 ・心血管系の健康維持 |
オリーブオイル | ・オレイン酸 ・ビタミンE ・鉄分 ・ポリフェノール | ・抗酸化作用 ・血流改善 ・心血管系の健康維持 |
猫の免疫力を高める栄養素
上記で挙げた免疫力を高める食べ物には、多くの効果的な栄養素が含まれています。
ビタミンCやビタミンD、ビタミンE、食物繊維、ポリフェノールなども免疫力を高める効果がありますが、その中でもとくに免疫力を高めるのに有効的な栄養素はオレンジ文字の栄養素(βカロテン、βグルカン、アスタキサンチン、オメガ3脂肪酸、プロバイオティクス、亜鉛)です。
それぞれの健康効果について解説します。
βカロテン
βカロテンとはカロテノイドとよばれる天然の色素成分の一種で、主にオレンジや赤色の野菜や果物、緑黄色野菜、動物性食品に含まれています。体内でビタミンA(レチノール)に変換されるため、「プロビタミンA」ともよばれます。
βカロテンの主な機能は、抗酸化作用と免疫機能のサポートです。 強力な抗酸化物質として、細胞を酸化ストレスから守り、老化や病気のリスクを低減 する働きがあります。また、粘膜や皮膚の健康維持に関与し、外部からの病原菌の侵入を防ぐことで免疫力を高めることにも寄与します。
βカロテンはさまざまな食べ物に含まれていますが、とくにほうれん草とにんじんは全ての食べ物の中でもβカロテン含有量がトップクラスです。
βグルカン
βグルカンとは水溶性食物繊維の一種で、免疫力向上や腸内環境の改善に効果があるとされています。
βグルカンは、マクロファージやナチュラルキラー細胞などの免疫細胞を活性化し、ウイルスや細菌への抵抗力を高める作用があります。また、腸内の善玉菌を増やし、腸の健康をサポートすることで免疫力を強化します。さらに抗酸化作用や抗炎症作用もあり、慢性疾患の予防にも役立つとされています。
アスタキサンチン
アスタキサンチンとはカロテノイドの一種で、強力な抗酸化作用を持つ赤色の色素です。
アスタキサンチンの最大の特徴は、ビタミンEの約1000倍、βカロテンの約40倍の抗酸化力を持つことです。細胞の酸化ストレスを抑え、免疫力を向上させるだけでなく、皮膚や目の健康維持、脳の機能サポートなどにも役立ちます。また、抗炎症作用や血流改善の効果も期待されています。
猫にとってもアスタキサンチンは有効的で、とくに老化予防や免疫機能の強化に役立つとされています。
アスタキサンチンの免疫能と運動能力に及ぼす影響の研究において、アスタキサンチンを6ヶ月齢の子犬に連続32週間摂取させたところ、免疫機能や運動後の回復の改善、成犬になってからのパフォーマンス向上の可能性があることが分かりました。
参考:6ヶ月齢のスポーツ犬におけるアスタキサンチンの免疫能と運動能力に及ぼす影響
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)
オメガ3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は猫にとって必須脂肪酸ではありませんが、必須脂肪酸と同じほどの健康維持に重要な脂肪酸です。猫は体内でオメガ3脂肪酸を合成できないため、食べ物から摂取する必要があります。
EPAは抗炎症作用が強く、血流を改善して心血管系の健康をサポートします。一方、DHAは脳や神経細胞の構成成分として働き、認知機能や視力の維持に関与しています。両者ともに免疫機能の調整や皮膚・被毛の健康維持に効果があります。
プロバイオティクス
プロバイオティクスとは、腸内環境を整え、健康に良い影響を与える生きた善玉菌のことを指します。代表的なものは乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌などです。
プロバイオティクスは腸内の善玉菌を増やし、消化を助けて免疫機能を強化する働きを持ちます。また、便秘や下痢の予防、ストレス耐性の向上、アレルギーの抑制などの効果もあります。
亜鉛
亜鉛は、体の成長や免疫機能、皮膚や被毛の健康維持に不可欠な必須ミネラルです。体内で合成できないため、食べ物から摂取する必要があります。
亜鉛は免疫細胞の活性化を促し、感染症への抵抗力を高める役割を持ちます。また抗酸化作用があり、皮膚の修復や被毛の健康維持にも関与します。不足すると免疫力の低下や皮膚炎、毛艶の悪化、食欲不振などの症状があらわれることがあります。
免疫力が低下しやすい猫種は?
遺伝的要因や体質により低下しやすい
免疫力が低下するのは、栄養不足やストレス、生活環境の変化、病気や感染症、運動・睡眠不足などさまざまな原因が考えられるため、猫種や年齢、性別に関わらずどの猫種でも免疫力の低下は起こり得ます。
その中でもとくに下記の猫種は、遺伝的要因や品種特有の体質により、免疫力が低下しやすいといわれています。
遺伝的要因や品種特有の体質により、免疫力が低下しやすいといいわれています。
- スフィンクス:無毛種であるため寒さや外的刺激のバリア機能が低く、アレルギーや皮膚感染症にかかりやすい傾向
- メインクーン、ラグドール:肥大型心筋症にかかりやすく、心臓の負担増加が全身の循環や代謝に影響を及ぼし、結果として免疫力の低下を招く
- ペルシャ:短頭種であるため呼吸器系の問題を抱えやすく、風邪や感染症にかかりやすいため免疫力が低下するリスクが高い
- シャム:ストレスに敏感で、体内でストレスホルモンが過剰分泌されることで免疫系の働きが抑制される
雑種猫は免疫力が高い
雑種猫は一般的に免疫力が高いとされています。これは、遺伝的多様性が大きいため、特定の遺伝疾患や免疫関連の問題が発生しにくいためです。また、自然淘汰の中で健康で強い体質を持つ個体が多いことも理由の一つです。
ただし、生活環境や食事、ストレスなども免疫力に影響するため適切なケアが重要です。
免疫力を高めるのは子猫のころから行うべき?
結論から言うと、免疫力を高める対策は子猫のころからするのがおすすめです。
猫は生後すぐ母猫の初乳から免疫をもらいますが、徐々に抗体は減少します。生後2~3か月頃になると自身の免疫システムが発達し始めますが、まだ不完全なため、感染症リスクが高い傾向にあります。
ただし、免疫力を高めるためと言って過剰に与えるのは避けましょう。
日常的・長期的に与えたり、トッピングの頻度が多いと、キャットフード(総合栄養食)の栄養バランスを崩してしまったり、消化不良になる恐れがあります。
子猫のキャットフードに免疫力が高まる食べ物をトッピングするのはおすすめですが、基本のキャットフード(総合栄養食)のバランスを崩さないよう適量を守ることが重要です。
まとめ
食べ物だけでなく、子猫のころからバランスの良い食事やストレスフリーな生活環境、十分な運動や睡眠、飼い主とのコミュニケーションは免疫力を高めるのに重要となる要素です。
これらを日々整えることで、猫が生涯にわたって健康を維持しやすくなります。