キャットフードの原材料:オクラ(okra)
ぬめりのある食感と独特の風味で知られるオクラ。細長い円錐形で表面に産毛があり、ザラついた質感を持ちます。断面は五角形や六角形で、切ると中から小さな白い種が見えるのが特徴です。
猫はオクラを食べても大丈夫です。ただし、猫は肉食動物であり、与え方や量、調理法を誤ると消化不良を起こすこともあります。
そこで今回の記事では、オクラに含まれる栄養素や猫への健康効果、猫に与える際の注意点などを解説します。
オクラの栄養素と猫への健康効果
オクラは栄養価が高く、とくに水溶性食物繊維や抗酸化成分が豊富です。猫にとって、補助的な健康サポートとして有効な要素が含まれています。
オクラ/生100gあたり | ||
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エネルギー | 26 | kcal |
水分 | 90.2 | g |
たんぱく質 | 2.1 | g |
脂質 | 0.2 | g |
炭水化物 | 6.6 | g |
カリウム | 280 | mg |
カルシウム | 92 | mg |
マグネシウム | 51 | mg |
βカロテン | 520 | μg |
ビタミンK | 66 | μg |
葉酸 | 110 | μg |
ビタミンC | 11 | mg |
水溶性食物繊維 | 1.4 | g |
不溶性食物繊維 | 3.6 | g |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
腸内環境を整える
オクラ特有のぬめり成分は、水溶性食物繊維である「ペクチン」や「ガラクタン」です。
これらの成分は、腸内の善玉菌のエサとなるプレバイオティクスとして働く性質を持ち、腸内環境を整える手助けをしてくれます。腸内のバランスが整うことで、便秘気味の猫は排便がスムーズになり、逆に軟便や下痢が続いていた場合も腸の動きが正常化することで改善が期待できます。
消化器の不調は食欲や元気の低下にもつながるため、オクラ由来の食物繊維は健康維持を目指す上で注目したい成分の一つです。
抗酸化作用
オクラに含まれる水溶性食物繊維ペクチンは、体の細胞の酸化を防ぐ強い抗酸化作用を持っています。
中でも、酸可溶性オクラペクチン(AOP)はとくに強い力を持っており、腸内環境を整えるだけでなく、体内で発生する有害な酸化物を減らす働きがあります。
さらに、体の中の炎症を抑える抗炎症作用もあり、免疫細胞の一種マクロファージが出す一酸化窒素などの炎症物質を減らすことができます。
このように、オクラは細胞の老化を防ぎ、免疫のバランスを整える効果も期待されるため、健康維持に役立つ成分として注目されています。
血糖値上昇の抑制効果
また、水溶性食物繊維ペクチンは、食後15分後の血糖値上昇を抑制する効果があることも研究により報告されています。これは、ペクチンが腸内でゲル状になって糖の吸収をゆっくりにするためです。
肥満気味の猫や糖尿病リスクのある猫にとって、ペクチンの作用はメリットになります。オクラなどペクチンを含む食材を取り入れることで、血糖バランスを穏やかに保つ食生活の一助となる可能性があります。
ビタミン類が豊富
オクラにはビタミンKやビタミンC、葉酸などのビタミン類が豊富に含まれています。
・ビタミンK
→止血作用や骨代謝に関与する脂溶性ビタミン
・ビタミンC
→抗酸化作用により細胞の老化を防ぐ。
・ビタミンB9(葉酸)
→細胞の再生や成長に欠かせないビタミン。成長期や妊娠中の猫はとくに重要。
猫はオクラを食べても大丈夫?
食べても大丈夫!
オクラには猫にとって中毒となる成分が含まれていないため、食べても大丈夫です。
ただし、オクラを「生」「大量」「味付き」で与えると体に負担をかける可能性があるため、与える際には注意して調理しましょう。
猫へのおすすめの与え方
■茹でるか蒸す
オクラは生のままでは繊維質が硬く、また表面には産毛(トリコーム)があります。
そのため、生のまま与えると猫の口腔や喉を刺激したり、消化しづらく胃腸に負担をかける恐れがあります。
そのため、必ず茹でるか蒸すなどして柔らかくしてから与えることが基本となります。そうすることで独特のぬめりを抑えることもできます。
■細かく刻む、ペースト状にする
また、猫は咀嚼が得意な動物ではなく、繊維質の多いオクラは喉に詰まるリスクがあります。オクラを与える場合は細かく刻んで、数g以内にとどめましょう。
とくにシニア猫や胃腸が弱い猫にとっては、ペースト状にして与えるほうが負担が少なくなります。
■キャットフードにトッピング
普段のキャットフードにトッピングしたり、手作りごはんに取り入れてみましょう。
オクラは加熱しても食感がシャキシャキと残りやすく、また香りが立つため、食欲が落ちている猫も食いつきが良くなる効果が期待できます。
オクラの注意点
過剰な食物繊維の摂取
オクラは水溶性・不溶性両方の食物繊維を多く含み、とくにペクチンは猫の健康に良いとされていますが、猫は元来、食物繊維の分解が苦手です。
与えすぎると下痢や軟便、吐き戻し、栄養吸収の妨げなどが起こる恐れがあるため、1日の総エネルギー量の10%程度にとどめましょう。
甲状腺疾患のある猫は注意
オクラにはゴイトロゲンと呼ばれる、甲状腺機能に影響を与える可能性がある植物性化合物が微量に含まれています。
極端に過剰摂取・長期摂取をしなければ問題ありませんが、甲状腺疾患のある猫や処方食療法中の猫には与えすぎには注意が必要です。
アレルギーのリスクを考慮
オクラはアレルゲンとしての報告は少ないものの、初めて与える際は少量から始め、体調変化をよく観察しましょう。下痢や嘔吐、かゆみなどが出た場合はすぐに中止し、必要に応じて獣医師に相談してください。
オクラが原材料のキャットフードは?
オクラはその栄養価の高さから、近年では一部の猫用製品の原材料に使用される例が増えてきています。
しかし、オクラは猫にとっての必須性が低く、消化面や嗜好性、加工面での課題が多いため、総合栄養食であるキャットフードの原材料としての使用はほとんど見られません。
今後、機能性成分への注目が高まれば、サプリメントや一部の機能食でのオクラの活用が進む可能性はあります。
まとめ
- ビタミンや水溶性・不溶性食物繊維が豊富
- 腸内環境改善や血糖値上昇の抑制、抗酸化・抗炎症作用がある
- 猫に与える際は加熱処理して細かく刻む
- キャットフードにトッピングしたり手作りごはんに取り入れる