キャットフードの原材料:ごぼう(burdock)
食べられているのは2~3か国のみ

ごぼうはキク科ごぼう属の多年草で、その根を食用とする日本で馴染み深い野菜です。写真のようなきれいな花を咲かせます。特有の香りや風味は独特で、きんぴらや煮物などの和食に広く利用されています。
現在ごぼうを食用としているのは、日本を含めて2~3か国ほどしかありません。
ごぼうは食物繊維が豊富で、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方を含み、腸内環境を整える働きがあります。またプレバイオティクスとして機能するイヌリンや、抗酸化作用を持つポリフェノールも含まれています。
低カロリーで栄養価が高く、健康志向の食材としても注目されていますが、生での摂取は消化に負担がかかるため加熱調理が一般的です。
ごぼう茶はノンカフェイン

猫や犬はカフェインを摂取すると中毒症状があらわれますが、ごぼう茶はごぼうの根を乾燥させて焙煎したものなのでカフェインを含みません。そのため、猫が飲んでも大丈夫です。
キャットフードに温めたごぼう茶を注いでふやかすことで香りが立って嗜好性が上がるため、キャットフードへの食いつきが悪い猫にも食欲促進が期待できます。
また、猫は水を飲む習慣があまりないため、ごぼう茶を与えることで香りや味に惹かれて水分補給としても活用できます。猫に与えるときは3倍ほどに薄めてから与えましょう。
ごぼうが原材料のキャットフード例
ごぼうが原材料のキャットフード例
ごぼうはさまざまなキャットフードの原材料で使用されています。原材料欄にはごぼう、バードック根などと表記されます。
- ねこひかり
- アカナ ワイルドプレーリー
- たまのカリカリねこまんま
- クプレラ レティックリミテッド ベニソン&チキンレバー
ごぼうの栄養と猫への健康効果
ごぼう/根/生100gあたりの栄養素 | |||
---|---|---|---|
エネルギー | 58 | kcal | |
水分 | 81.7 | g | |
タンパク質 | 1.8 | g | |
脂質 | 0.1 | g | |
ミネラル | カリウム | 320 | mg |
カルシウム | 46 | mg | |
マグネシウム | 54 | mg | |
ビタミン | ビタミンB1 | 0.05 | mg |
ビタミンB2 | 0.04 | mg | |
ビタミンB6 | 0.1 | mg | |
ビタミンB5(パントテン酸) | 0.23 | mg | |
ビタミンB9(葉酸) | 68 | μg | |
ビタミンC | 3 | mg | |
食物繊維 | 水溶性食物繊維 | 2.3 | g |
不溶性食物繊維 | 3.4 | g |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
食物繊維が豊富
ごぼうには不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方がバランスよく含まれています。
不溶性食物繊維の主成分はセルロースで、とくに便秘の予防に効果的とされています。腸内で水分を吸収して膨らむ性質があり、腸壁を刺激してぜん動運動を促進することで便通の改善に役立ちます。また、腸内の老廃物や有害物質を排出する作用もあります。
一方、水溶性食物繊維は腸内でゲル状に変化し、糖質や脂質の吸収を緩やかにする働きがあります。とくにごぼうの水溶性食物繊維の一部であるイヌリンはプレバイオティクスとして知られています。後述でご紹介します。
プレバイオティクスとして働くイヌリン
イヌリンはゴボウや玉ねぎなどに多く含まれ、実は日本人にも古くからなじみの深い水溶性食物繊維であり、甘味料や添加物としてさまざまな食品に使用されている。チコリや菊芋には15-20%、ニンニクに9-16%、ゴボウに3.5-4%のイヌリンが含有される。
引用元:Inulin:イヌリン|浅桐公男
ごぼうにはプレバイオティクスとして機能するイヌリンが豊富に含まれています。
プレバイオティクスとは、腸内で善玉菌(とくにビフィズス菌や乳酸菌)の栄養源となり、その増殖を促進する物質を指します。イヌリンは腸内で分解されずに大腸まで届き、善玉菌によって発酵されて短鎖脂肪酸(酢酸や酪酸など)を生成します。これにより腸内環境が整い、便秘改善や免疫力向上、炎症抑制などの効果が期待されています。
また、イヌリンは血糖値の上昇を抑えたり、コレステロール値を低下させたりする効果も報告されています。
強い抗酸化作用を持つポリフェノール
ごぼうに含まれるポリフェノールは強い抗酸化作用を持ち、細胞の酸化ストレスを軽減して体内の活性酸素を抑制する働きがあります。これにより細胞の老化を抑制させるため、老化の予防につながると期待されています。
またポリフェノールは免疫力を向上させ、慢性炎症を抑制する可能性もあります。さらに血管を保護し、循環器系の健康をサポートする作用があるとされています。これらの効果は加齢やストレスにより体調を崩しやすい猫に効果的です。
体重管理のサポート
ごぼうに含まれる食物繊維は満腹感を得ることができます。ごぼうが原材料のキャットフードは、肥満気味の猫の体重管理を目的としていることが多くみられます。
ごぼうを与える際の注意点
アレルギー反応の確認
ごぼうはアレルギーを引き起こしやすい成分である動物性たんぱく質や特定の穀物(小麦、トウモロコシなど)と比べると、アレルギーを引き起こしにくい食材とされています。
しかしごぼうはキク科の植物であるため、キク科にアレルギーを持つ猫は注意が必要です。初めてごぼうを与える際は少量から始め、猫の体調を観察して嘔吐や下痢、皮膚の痒みなどの異常がみられた場合は中止し、獣医師さんに相談しましょう。
ご家庭で与えるときは加熱処理を
ご家庭で手作りごはんに取り入れたりキャットフードのトッピングとしてごぼうを与えるときは、生のままではなく加熱して柔らかくしてから与えましょう。
また食物繊維が豊富なので、過剰摂取をすると消化不良や下痢など消化器症状を引き起こす恐れがあります。猫に与える場合は1日の適正摂取総カロリーの10%が目安となります。
まとめ
- 食物繊維が豊富で、水溶性・不溶性がバランスよく含まれている
- ごぼうのイヌリンは血糖値の上昇を抑える
- ポリフェノールは強い抗酸化作用を持つ