「地震が起きたとき、猫はどうすればいい?」
「猫と一緒に避難したいけど、何が必要?」
「自分が家にいないときに地震が起きたら…」
猫と暮らしていると、誰もが心配になる災害。
特に日本は地震が多い国であり、私たちの力で防ぐことはできず、発生のタイミングも予測不可能です。地震が発生した際、飼い主さんの対応や行動次第で猫の安全が守られるか、危険にさらされるかが決まります。
そこでこの記事では、地震発生時の猫の安全確保のポイントや避難の手順、避難先での対応方法を解説します。
東日本大震災のペットの被災概況
2011年3月11日に発生した東日本大震災。
環境省が発表したペットの被災概況によると、多くの犬や猫が被災し、命を落としたり負傷したりなど直接的な被害を受けた犬や猫、また、飼い主の事情などによっても様々な形で影響を受けたことが明らかになりました。
さらに、福島県では福島第一原子力発電所の事故に伴い警戒区域が設定され、住民はペットを自宅に残したり、屋外へ放したり、係留したまま避難せざるを得ない状況に置かれました。
犬については、狂犬病予防法に基づく登録が義務付けられていることから、各自治体により震災発生以前の飼養頭数(登録頭数)が把握されていましたが、震災により死亡した頭数については、青森県で少なくとも31頭、岩手県で602頭、福島県では約2,500 頭との報告がある他は、不明とされています。
一方、猫については犬のような登録制度がないため、いずれの自治体においても、震災以前の飼養状況や震災による被災状況がほとんど分かっていません。
地震は自然現象のものなので、私たち人間の力では防ぐことはできません。しかし、地震発生時に飼い主が冷静に行動することでペットの安全を守ることができます。
非常時に備え、普段から防災意識を高め、ペットと共に安全に避難できる環境を整えておくことが猫の命を守ることにつながります。
地震が起きたとき、猫はどう動く?
まずは、地震が起きた時に猫はどのような行動をとるのかを解説します。思わぬ状況での猫の本能的な行動を知ることで、飼い主は冷静に対応することができます。
地震が発生してパニックになると、猫は安全だと感じる場所に本能的に隠れようとします。
パニックや恐怖でその場で体を丸めてじっとすることもありますが、特に以下のような狭くて暗い場所や高い場所に逃げ込むことが多いです。
猫を見つけられないときは、このような場所を探してみましょう。
地震発生時の猫の隠れる場所 | |
---|---|
家具の隙間や裏側 | ・ソファやベッドの下 ・冷蔵庫やテレビの裏 ・タンスや本棚、カーテンの後ろ |
物影で、周囲が囲まれていて落ち着ける | |
クローゼットの中 | ・服の隙間 ・布団の間 ・クローゼットの奥 |
暗くて静かで、周囲の変化を感じにくい | |
シンク下の収納 | ・キッチンや洗面台、お風呂場 |
狭くて安心しやすい | |
高い場所 | ・食器棚や本棚の上 ・カーテンレールの上 |
外の状況を見渡せて、身を守りやすい | |
隠れる場所がない | ・部屋の隅で小さくなる ・飼い主の近くでじっと動かない |
地震が発生!飼い主がすべきこと
地震が発生してから避難するまでの間、猫を守るために飼い主さんが取るべき行動は、猫の安全を確保しながら冷静に適切な判断をすることです。以下の手順で行動しましょう。
①まずは飼い主自身の安全を確保する
地震が発生すると、猫は本能的に安全な場所へ逃げ込む傾向があります。まずは飼い主自身が身を守り、揺れが落ち着いたらすぐに猫の安全を確認しましょう。
地震が起きた際に、真っ先に猫を探したり抱きかかえたい気持ちも非常に分かりますが、パニック状態の猫に嚙まれたり、無理に捕まえようとするとさらに暴れる可能性もあり、お互いが怪我をする危険性があります。そうなると、かえって猫の安全確保が難しくなることもあります。
そのため、安全な場所に隠れているという猫の本能を信じつつ、揺れが落ち着くまではまず自分の身を守りましょう。冷静に対応することが、猫を守るための第一歩です。
②揺れが落ち着いたら、避難経路を確保する
地震でドアが歪んで閉じ込められるリスクを減らすため、揺れが落ち着いたらドアや窓を開けてください。このとき、開けた瞬間に猫が外に飛び出してしまう恐れがあるため、猫がドアや窓付近にいないかを確認しましょう。
ドアや窓まで移動する際には周囲の状況を確認し、ガラスの破片などに注意しましょう。マンションの場合は、非常階段や共有廊下が使えるか確認するのも重要です。
③揺れが落ち着いたら、猫の安全を確認する
揺れが落ち着いたら、猫を探す前にドアや窓を一時的に閉めましょう。
地震発生時に避難経路を確保するためにドアや窓を開けますが、猫を探す際には脱走防止のために再びドアや窓を閉めることが重要です。
その後、猫が逃げ込んでいるであろう場所を探しましょう。
猫を見つけたら名前を優しく呼びかけ、落ち着かせましょう。無理やり引っ張り出そうとするとさらにパニックになる恐れがあるため、そっと様子をうかがい、猫自ら出てくるのを待ちます。猫と再会できたら、怪我をしていないか確認しましょう。
④避難するか・しないかを見極める
地震や余震が落ち着いたら、「自宅待機にするか」「避難所に避難するか」を判断します。
地震発生後の状況によっては、避難するよりも自宅にとどまって余震に備えながら生活する方が猫と飼い主さんにとって安全な場合があります。
◆自宅待機が安全な場合の状況
①自宅の損傷が軽微で、安全が確保されている
自宅に大きなダメージがなく、倒壊の危険性がなかったり、電気・水道・ガスなどのライフラインがある程度維持されている場合は、避難するよりも自宅待機の方が安全と言えます。
②避難経路が危険(外の方がリスクが高い)
自宅の周囲の建物が倒壊しかかっている・落下物が多い・道路が陥没している・ガラスの破片やがれきが散乱しているなど、外の避難経路が危険な場合は自宅待機が安全です。
③猫が極度のパニックで、無理に連れ出せない
猫が完全に隠れて出てこない場合、無理に捕まえようとするとさらに暴れて怪我をしたり、キャリーケースに入れるのが難しい可能性があります。猫が落ち着くまで安全な場所で待機した方が良いでしょう。
◆すぐに避難が必要な場合の状況
一方で、以下のような状況では、すぐに猫をキャリーケースに入れて安全な場所へ避難すべきです。
- 壁や天井に亀裂など自宅の倒壊リスクが高い
- 自治体や消防から避難指示・勧告が出ている
- 火災・ガス漏れ・浸水の危険性
- 余震が続き、安全が確保できない
猫と一緒に避難!流れやポイントは?
避難が必要な場合、猫と一緒に安全に避難場所へ移動するためには、適切な方法と冷静な判断が必要です。飼い主さんが慌てていると猫はその気持ちを察知し、パニックを起こして逃げ出してしまう恐れがあります。
①まずはキャリーケースに入れる
猫との移動で一番安全なのは、やはりキャリーケースです。
優しい声で猫の名前を呼びながら、キャリーケース内にタオルや毛布を入れた状態で猫が出てくるのを待ちます。おやつを使ってキャリーケースへ誘導するのも良いでしょう。
素早く捕まえる必要がある場合は、洗濯ネットを活用すると逃げ出しにくいです。
②猫の非常用荷物を持っていく
避難所で猫のストレスを最小限に抑えながら過ごすために、猫の非常用荷物を持参することが必須となります。
最低限必要なのは、3日分以上のキャットフードと飲み水、簡易トイレ(猫砂・ペットシーツ)、タオルやブランケット、ワクチン接種証明書、猫の写真などです。
キャリーケースの中に慣れた匂いのついた毛布を入れると、猫が安心しやすくなります。
また、避難所では周囲への配慮も必要なため、消臭スプレーやビニール袋も用意しておくと便利です。事前に準備を整え、猫と安心して避難生活を送れるよう備えましょう。
③避難経路を確認し、安全に移動する
外はガラスの破片や落下物があったり、地面が歪んでいる可能性があるため、猫との移動は安全に行う必要があります。混乱した状況では猫がパニックを起こす可能性があるため、冷静に、慎重に移動しましょう。
◆徒歩で移動する場合
- キャリーケースをしっかり閉め、猫が飛び出さないよう確認
- 肩掛けや手持ちで安定させ、できるだけ揺らさないように運ぶ
- タオルや布をかけて視界を遮ると、猫が落ち着きやすい
- ガラスの破片や瓦礫の上にキャリーを置かない
- 混雑した道では、人混みを避けながら移動する
- 余震や騒音でパニックにならないよう、落ち着いて行動する
- 夏季:熱中症を防ぐため直射日光を避け、風通しを確保する
- 冬場:猫の体温が下がらないよう、防寒対策をする
◆車で移動する場合
- キャリーケースをしっかり閉め、猫が飛び出さないよう確認
- キャリーケース内にタオルやブランケットを敷く
- キャリーケースはシートベルトで固定するか、足元に置いて転倒を防ぐ
- ラジオのボリュームを抑え、猫がストレスを感じないようにする
- 夏季:直射日光を避け、エアコンで温度調整を行う
- 冬季:毛布などで保温し、猫の体温低下を防ぐ
④避難所に到着後の対応
人が多くて慣れない場所である避難所では、環境の変化に敏感である猫はストレスを感じやすく、ごはんを食べなかったり体調を崩してしまう恐れがあります。猫のストレスを最小限に抑えながら、落ち着ける環境を作ることが大切です。
避難所に到着したら、すぐに猫をキャリーケースから出してはいけません。キャットフードや水は少しずつ与え、体調や様子を確認しながら落ち着くのを待ってあげましょう。慣れたタオルやおもちゃをキャリーの中に入れておくと、猫が安心しやすく、ストレス軽減につながります。
まとめ
地震は予測できないものですが、飼い主さんの冷静さや慎重さが猫の命を守る鍵となります。
地震によって猫と離れ離れになることがないよう、猫の本能的な行動を知り、ストレスを最小限に抑え、地震後のメンタルケアを行い、大変な状況でも快適な生活を送れるようにしましょう。