Q熱(Q fever)とは
Q熱(きゅーねつ)は、リケッチアに属する「コクシエラ・バーネッティイ」という細菌感染によって発症する人獣共通感染症です。
1935年にオーストラリアの屠畜場で集団発生したことがきっかけで確認され、今では全世界で発生が確認されています。
Q熱という病名は、発生時に原因が「不明(Query)」の高熱症状だったことが由来しています。獣医学界ではコクシエラ症とも呼ばれています。
猫のQ熱の感染経路
感染力が非常に強く空気感染する
Q熱の感染経路は、主に保菌動物の糞便から、また保菌ダニから感染する経路があります。保菌動物としては、犬や猫などの愛玩動物のほか、牛や羊、山羊、鳥類など、様々な動物への感染が確認されています。
感染力が非常に強く、他のリケッチアとは異なり、空気感染を起こすことが大きく特徴です。
乾燥糞便やホコリを吸い込んだだけで感染してしまうので、飼い猫がQ熱に感染していた場合、予防や対策が難しくなります。
猫のコクシエラ菌保有率は10%程度で、多頭飼いの猫のうち1頭が感染していると他の猫も感染する可能性があり、もちろん飼い主さんへの感染リスクもあります。
Q熱に感染した時の症状
感染した猫の症状
猫にQ熱が感染した場合、ほとんど症状はありません。不顕性であることが多く、症状として見られる可能性があるのは、軽い発熱や繁殖障害(流産、子宮内膜炎、不妊症など)などがあります。
わかりにくいため飼い主さんも気が付かない場合が多いですが、リケッチア血症は起こっており長期間にわたって病原体を排泄し続けているので、たとえ無症状であっても他の動物や人に感染を広げます。
感染した人間の症状と致死率
人間にQ熱が感染した場合、インフルエンザ様症状を示します。
- 発熱(高熱)
- 倦怠感
- 筋肉痛
- 食欲不振
- 咳
- 鼻水
- 咽頭痛
- 吐気
- 嘔吐
- 下痢
感染しても重症化することは少なく、特に治療をしなくても自然治癒で2週間程度で回復することが多いとされています。
ただ、感染者の1割程度が6ヶ月以上にわたる慢性Q熱になるとされ、臓器移植を受けている人、癌患者、慢性の腎臓病患者などは慢性化しやすいと考えられています。
慢性Q熱になった患者は致死率が高くなるため、期間をあけずなるべく早く治療を始めることが大切です。
猫のQ熱の診断方法
Q熱の診断方法として、Q熱の抗体を検出する方法と、抗原(Q熱本体)を検出する方法があります。
抗体検出法としては、Q熱抗原を利用した「間接蛍光抗体法」などがあり、抗原検出法としては、今コロナでも多く利用されている「遺伝子検出法(PCR)」があります。
猫のQ熱の治療法
発症から3日以内に抗菌薬が最も効果的
Q熱の治療では、発症から3日以内に抗菌薬を用いた治療を行うのが最も効果的です。
抗菌薬は「テトラサイクリン系」や「ニューキノロン系」の抗生物質がもっとも有効で、リンコマイシンやエリスロマイシンなどを用いられることも多いです。
治療期間は3週間以上が望ましい
治療期間は、3~4週間にわたって継続して投薬することが望ましいとされています。
リケッチアは症状の回復後も長期間にわたって細胞に生存するので、体内から完全に消失されることは非常に難しく、症状が改善したとしても、3週間以上は投薬を続けないと再発することがあります。
まとめ
- Q熱は原因不明である「?(Query)」が由来
- 感染動物の糞便やダニから空気感染する
- 猫は症状がほとんどないことが多い
- 人はインフルエンザ様症状がみられる
- 発症から3日以内に治療を始めるのが効果的
- 3週間以上の投薬が望ましい