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キャットフードのアミノ酸:フェニルアラニン(Phenylalanine)
フェニルアラニン(Phenylalanine)は、猫の必須アミノ酸のひとつとしてタンパク質を構成する他、アドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質やメラニン色素の材料として働きます。
また、フェニルアラニンは体内に入ると準必須アミノ酸である「チロシン」に生成します。チロシンは非必須アミノ酸ですが、同族のフェニルアラニンからしか合成することができません。
このため、キャットフード中にチロシンが少ない場合はチロシンへの変換分も必要になるので、フェニルアラニンが多く必要になります。反対にキャットフード中にチロシンが十分に含まれていれば、本来のフェニルアラニンの必要分のみの摂取で問題ありません。
フェニルアラニンは豆類・種実類・乳製品・卵に豊富に含まれています。植物性・動物性どちらの食品にも豊富に含まれるので不足することは少ないです。
猫におけるフェニルアラニンの働き
アドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質を構成
フェニルアラニンはチロシンに変換された後、神経伝達物質である脳内ホルモンの「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」の材料となります。
アドレナリンやドーパミンは「戦うためのホルモン」と言われ、一時的に猫の身体機能や筋力を高めたり、集中力や判断力を高める働きがあります。
具体的には、筋肉にエネルギーを送るなど、血圧や血糖値を高くして代謝を上げ、体・脳両方をサポートします。
エンドルフィン生成促進による多幸感、鎮痛作用
フェニルアラニンから変換されたチロシンは「脳内麻薬」とも呼ばれるエンドルフィンの生成・分泌を促進する働きがあります。
エンドルフィンは脳の幸福感や快楽を強める脳内神経伝達物質の1つで、猫の気分を高揚させたり、鎮痛効果があるホルモンです。
メラニン色素の材料
またフェニルアラニンはメラニン色素の材料にもなります。メラニン色素は猫の皮膚・被毛・目の色の決定に関わるので、健康な猫の皮膚被毛を維持するために必要な成分です。
キャットフードに必要なフェニルアラニンの量・基準
ペットフード公正取引協議会が採用するAAFCOのガイドラインによると、ドライタイプのキャットフードのフェニルアラニンとチロシンの最低基準は、幼猫用最低基準が0.52%、成猫用最低基準が0.42%と定められています。
また、AAFCOではフェニルアラニン・チロシンをまとめた最低基準も示されています。フェニルアラニン・チロシンでは幼猫用最低基準が1.92%、成猫用最低基準が1.52%となっています。
最大値(上限値)の設定はありません。
フェニルアラニンの欠乏/過剰摂取
欠乏症
- 神経機能障害
- 歩行失調
- 過度な活発性
フェニルアラニンが不足すると、猫に協調運動障害や神経機能障害が見られます。
過剰摂取による副作用や問題は報告されていません。
まとめ
- チロシンを合成する
- アドレナリン、ドーパミン、エンドルフィンなどのホルモンを構成
- 猫の代謝を上げたり幸福感や高揚感を作り出すホルモン
- 不足すると歩行失調や神経機能障害が見られる