キャットフードのアミノ酸:リジン(Lysine)
リジンは猫の必須アミノ酸のひとつで、タンパク質の構成成分として身体組織の修復や、脂肪酸を運搬する働きがあります。
リジンは猫の必須アミノ酸の中でも不足しやすいアミノ酸です(制限アミノ酸)。特に穀類メインのキャットフードでは不足しやすいので、動物性食品と組み合わせてバランスよく取ることが大切です。
また、リジンは必須アミノ酸としての働きの他、鼻炎や目やに、涙、くしゃみ、口内炎、ヘルペスウイルスなどの抑制効果で注目されています。サプリメントなども販売されていますが、根拠がまだはっきりしておらず「効果なし」という見解もあるため、まだ作用については疑問視されている部分があるようです。
リジンは肉や魚、乳製品などの動物性食品に多く含まれています。小麦や米などの穀類や植物にはあまり含まれていませんが、豆類には豊富に含まれているので、ヴィーガンやベジタリアン食を与える場合は、大豆などの豆類でリジンを摂取しましょう。
猫におけるリジン(リシン)の働き
体を形づくるタンパク質を構成
リジンの重要な働きとして、猫の体を形作るタンパク質の構成成分となる役割があります。
身体組織の修復にも欠かせない栄養素で、猫の成長や、筋肉、皮膚、被毛の健康維持にも必要不可欠です。
脂肪酸の運搬に重要なカルニチンの合成原料
リジンはメチオニンと共に「カルニチン」の前駆物質となり、脂肪燃焼や運搬を行う働きがあります。
細胞の様々な活動に必要なエネルギーのほとんどは細胞内にあるミトコンドリアによって産生されますが、リジンとメチオニンから生合成されるカルニチンは、長鎖脂肪酸をミトコンドリアの中へ運搬し取り込みを促す働きがあります。
カルニチンによって運ばれた脂肪酸は、ミトコンドリア内で脂肪が燃焼されエネルギーを作り出します。
抗体の材料、ホルモン分泌を促す働き
また、リジンは体の健康を保つために必要なホルモン分泌を促したり、体を守る抗体の材料として働きます。
リジンは酵素として成長ホルモンの分泌も促すことから、成長期の猫にとっても非常に重要です。
肝機能を高める効果
リジンは脂肪の消化酵素「リパーゼ」の働きを促進し、肝機能を高め強化する効果があります。
リパーゼの働きを活性化させ脂肪を分解すると、血中の飽和脂肪酸とコレステロールの増加が抑制されます。
猫ヘルペスを予防・改善効果
リジンには猫ヘルペスウイルス(猫風邪)の増殖の抑制や口内炎予防の効果が示唆されています。
脂肪燃焼効果
リジンは脂質代謝を促進するAMPK(酵素)を活性化する働きを持つことにより脂肪酸の燃焼を促進します。
キャットフードに必要なリジン(リシン)の量・基準
ペットフード公正取引協議会が採用するAAFCOのガイドラインによると、ドライタイプのキャットフードのリジン(リシン)の最低基準は、幼猫用最低基準が1.20%、成猫用最低基準が0.83%と定められています。
他のアミノ酸よりも比較的基準も多めに設定にされています。最大値(上限値)の設定はありません。
リジン(リシン)の欠乏/過剰摂取
欠乏症
- 食欲減少
- 体重減少
総合栄養食の場合、最低基準以上のリジンが含まれるので、欠乏することはありませんが、穀物中心の食事を摂取するとリジンは不足しやすくなります。
アミノ酸は、不足したアミノ酸に合わせた量しか他のアミノ酸も利用されないので、リジンが不足した場合、猫が十分なタンパク質を摂取しても実際に利用できるアミノ酸は非常に低くなってしまいます。
過剰摂取
基本的にリジンの過剰摂取による心配や副作用の報告はありません。
穀物の多いキャットフードを与える猫の場合、リジンは積極的に摂取したい栄養素ですが、リジンをたくさん摂取してもその分効果が得られるというわけではなく、アミノ酸バランスが崩れるので、利用できるリジンの量は制限されそのまま排泄されます。排泄時は腎臓を通るので、摂取したリジンが無駄になるだけでなく、猫の腎臓に余計な負担をかけてしまいます。
また、過剰量を与えるとアルギニンの作用と対抗して効果を打ち消し合ってしまうので、リジン-アルギニン比を大きく超えないように注意する必要があります。
上記の理由から、リジンは他のアミノ酸とバランスをとって適量摂取することが大切です。
まとめ
- 穀類で不足しやすい必須アミノ酸
- タンパク質を構成
- 脂肪酸の運搬・脂肪燃焼効果
- ヘルペスウイルスの増殖抑制
- 肝機能を高める
- 過剰摂取でアルギニンと拮抗作用(対抗作用)