猫のひげとは
神経が通った毛状の感覚器官
猫のひげはたくさんの神経が集中している毛状の感覚器官で、洞毛、感覚毛、触毛とも呼ばれます。ひげは非常に感覚が鋭く、小さく微妙な振動や空気や環境の動き、変化を感じ取ることができます。この点がその他の体毛とひげとの大きな違いといえます。
人の場合、哺乳類には珍しく洞毛(触毛)を持たない種の動物で「ひげ」と呼ばれている毛はすべて体毛であり、感覚のある触毛は一本も生えていません。
猫のひげの数は約60本
猫には合わせて約60本程のひげが生えています。ひげというと口元に生えた数本程のひげをイメージしますが、口以外にも目の上や顎の下にも生えていて、実は顔だけでなく全身にも1㎠あたりに1本程度の触毛が生えています。
- 上毛(目の上)
- 頬骨毛(頬骨あたり)
- 口角毛(両頬の横)
- 上唇毛(ひげ袋から)
- 頭下毛(顎の下)
- 前足の後ろ側
猫のひげの役割
猫のひげには大きく2つの役割があります。
- 周囲の情報を集めるセンサーの働き
- 体の平衡感覚を保つ働き
刺激や危険を察知して情報を集めるセンサー
猫のひげには、周囲の環境や動きの変化を察知するセンサーのような役割があります。直接あたる障害物や食べ物はもちろん、音や風など小さな空気の動きや微妙な波動を感じ取って、その情報をもとに素早く狙いを定めて動き回ることができます。
猫の場合、視野は人より広いですが、視力はそこまで良いわけではなく、一般的に6m以上離れたものはぼやけて見えています。そのため、暗闇や素早い動きで獲物を狙うときなどはひげの感覚に頼っているところが大きいと言われています。
平衡感覚を保つ
猫のひげには平衡感覚を保つ役割があります。平衡感覚とは、自分自身の体の傾き具合や向いている方向を察知する感覚で、人の場合は耳の奥にある「三半規管」という器官がこの役割を担っています。平衡感覚を保てないとフラフラとした状態でまっすぐには歩けなくなったり、頭をふったり、めまいが出たりします。
猫のひげ向きでわかる感情
髭が上向き
ひげがピンと上を向いている時は、猫の機嫌が良い時や嬉しい時、かまってほしいという好意的な時です。
ひげが顔の前に向く
ひげが顔の前に向いている時は、猫にとって情報を集めたい対象があることを示します。興味がある物や人に寄っていく時にもひげは顔の前に向きます。
ひげがピンピン立っている
ひげがピンと立っている時は、様々な方向から情報を集めようとしている状態なので、警戒している時、興奮している時、緊張している時、不安な時、怒っている時など、周りが気になっている状態です。
ひげが後ろに反る
ひげが後ろに反るのは、警戒心や恐怖心を持っている時です。また、動揺している時や不安な時などに見られるネガティブな状態です。
ひげがだらりと垂れている
ひげはダラリと下がっている時は、猫はリラックスしている状態、気を許している状態です。楽しいときは興奮状態なのでひげも立ちますが、落ち着いている時や眠る直前、撫でられている時はひげもだらりと下がります。
猫のひげを切る必要はある?
猫のひげは切ったり抜いたりせずとも、知らない間に勝手に生え変わっているため、伸びてきても切る必要はありません。
爪や毛は切ったりトリミングしたりしてお手入れすることが多いですが、ひげは無理に抜いたり切ったりする方が良くないとされています。
猫にとってひげはセンサーや平衡感覚を保つために必要な感覚器官なので、無理に抜いたり切ったりすると感覚が掴めず、猫が思い通りに動けなくなってしまうことがあります。そうなると運動不足になったり、物と物との距離をうまく掴めずに家具に激突したり、高低差のある移動を失敗するなどの危険があります。
また、ひげの根元には感覚が集中しているので、抜かれたときに強い痛みを感じる可能性もあります。
暖房器具などでちぢれてしまった毛や切れてしまった毛についても、そのままにしておくのがベストです。
猫の抜けたひげを保管するケース
最近は、成長の記録として猫の乳歯を保管するケースが販売されていますが、猫の抜けたひげを保管するケースも販売されています。