猫の血液型(blood type)について
人の血液型はABO式やRh式とよばれ、A型、B型、AB型、O型の4種類に分類されます。
猫の血液型はAB式とよばれ、A型、B型、AB型の3種類で、O型はありません。日本に住む猫のほとんどはA型であり、B型は10%未満、AB型はごく稀となります。(ちなみに犬の血液型はDEA式とよばれ、9種類に分類されます。)
事前に猫の血液型を知っておくことはもしものときに役立ちます。
猫の血液型の分布
猫はほとんどがA型ですが、地域や猫種によって血液型の比率は大きく異なります。ミックス猫(雑種)はほとんどがA型ですが、純粋種には発現に偏りがあらわれます。
下表は猫種による血液型の分布です。傾向の割合となるので、「この猫種は絶対この血液型!」と断定したものではありません。
猫種 | A型の割合 | B型の割合 |
---|---|---|
日本猫 アメリカンショートヘアー オリエンタルショートヘア ロシアンブルー シャム など | ほぼ100% | ほぼ0% |
メインクーン スコティッシュフォールド ベンガル など | 90%以上 | 10%以下 |
ペルシャ アビシニアン スフィンクス ソマリ ヒマラヤン など | 70~90% | 10~30% |
ブリティッシュショートヘアー エキゾチックショートヘア ラグドール など | 70%以下 | 30%以上 |
猫の血液型を知っておくメリット
輸血を少しでも早く行うことができる
猫の血液型を知っておくことで、病気やケガなどの緊急時に少しでも早い輸血や治療を行うことができます。
猫の血液型が分からない場合、輸血をするときにクロスマッチテストを行わなければなりません。クロスマッチテストとは、輸血を受ける猫の血液と輸血する猫の血液の、赤血球と血漿を分離して交互に混ぜ合わせて肉眼で反応を見るものです。
緊急時にはクロスマッチテストをする時間も惜しいので、あらかじめ血液型を知っておくことが重要となります。
免疫学的副反応のリスクを避けることができる
免疫学的副反応とは、輸血の際に誤って異なる血液型を輸血してしまうと、赤血球同士が攻撃し合い、赤血球が機能不全となってあらゆる症状が起こる反応のことです。とくにB型の猫が持つ抗A抗体が非常に強いため、誤ってB型猫にA型の輸血をした場合は命に関わる非常に強い副反応(急性溶血反応)が起こることがあります。
このように自己血でない限りは副反応や感染症のリスクが高まるのですが、血液型を知っておくことでこのリスクを避けることができます。
新生児溶血を避けることができる
血液型を知っておくことで、子猫の新生児溶血を避けることができます。
新生児溶血とは、子猫が血液型が異なる母猫の初乳を飲むことで血液中の赤血球が破壊される溶血性黄疸が起こることです。これは母子間の血液不適合によって起こる新生児溶血で、最悪の場合は数日で死に至ります。
とくにA型の子猫がB型の母猫の初乳を飲むと、新生児溶血によって命を落としてしまうのがほとんどといわれています。
新生児溶血を予防するには、父猫と母猫の血液型を事前に調べてA型の父猫×B型の母猫の交配を避けることとなります。
またA型の父猫×B型の母猫で出産したとしても、初乳を飲ませないために生まれてすぐに母猫から子猫を離すことで予防ができます。この場合は、人工乳を与えて育てることとなります。
他の猫への輸血用血液を提供できる
ペット医療の先進国であるアメリカでは1989年にペット用の血液バンクが設立されていますが、日本においては血液の採血から供給までを行う団体や制度がなく、輸血用血液を他の動物病院から得ることも法律的に非常に難しいといわれています。
とくにB型、AB型の猫は非常に少ないので、他の猫の命をつなげられる献血に興味のある飼い主さんは獣医さんに相談してみるのも良いかと思います。
猫の血液型の調べ方
血液型検査キット
血液検査キットにより数滴の血液で検査することができ、15~20分程度で結果が出ます。動物病院で行うことができます。
検査センターに依頼
血液型検査キットがない場合は、外部の検査センターにて判定を行います。血液検査キットと同様に動物病院で数滴の血液で検査できますが、結果が出るまで数日かかる場合があります。
どちらにしても、猫が病気などの状態では血液型の正確な判定が得られないケースがあります。もしものときのために、猫が健康な状態のときに動物病院で調べておきましょう。
まとめ
- 猫の血液型は3種類で、ほとんどはA型
- 血液型を知っておくことは輸血や出産の緊急時に役立つ
- 健康なときに正確な血液型を調べることが大切