猫の寿命が年々延びている
猫は大昔から人とともに生活をし、狩りのパートナーやネズミ狩りなどで活躍していました。しかし時の流れとともに「愛玩動物」「家族の一員」と呼ばれるほどの大切な存在へと変化し、社会全体が猫に対する意識の変化があらわれています。
猫の平均寿命は2010年以来、年々延び続けています。2023年の猫の平均寿命は15.79歳、2010年と比べると+1.43歳となっています。猫は1年で人間の4年分の年齢換算になるので、大きく寿命が延びているといえます。
世界で一番長生きしたのが、アメリカに住んでいたクリームパフちゃん。なんと38歳3日という長生きで、世界ギネス記録に記録されました。残念ながら2005年に亡くなりましたが、未だその記録は破られていません。
この記事では猫の寿命が延びた社会的背景と、愛猫の寿命を延ばす方法についてご紹介します。猫に一日でも長生きしてほしいと願う飼い主さんの参考になればと思います。
参考:一般社団法人ペットフード協会「犬猫飼育実態調査」2023年
猫の寿命が延びた理由7つ
①キャットフードの改良
猫の栄養に関する研究や知識が進み、年齢や体型、好み、体質、病気に合ったキャットフードが改良されました。そのため以前に比べて猫の栄養状態が向上し、体力的にも精神的にも安定したことが寿命が延びた理由として挙げられます。
②獣医療の進歩
獣医療の進歩により、以前は発見が難しかった病気を発見できたり、完治が難しい病気を完治することができるようになりました。
また獣医師や動物病院、ペット業界に携わる人が増加したことで猫の体や病気について相談できる機会が増え、飼い主さん自身の知識も深まっています。
③ワクチンや駆除薬の普及
今は当たり前のように10年以上一緒に暮らしている猫ですが、以前は子猫のときにウイルスや寄生虫の感染症にかかり、命を落とす子が多くいました。猫は猫汎白血球減少症が主な死因でした。
しかし現在はワクチンや駆除薬の普及により病気の発症を防ぎ、亡くなる猫が大幅に激減しました。
④不妊・去勢手術の普及
以前は病気ではない猫に対して手術をすることに抵抗を示す飼い主さんが多く、避妊・去勢手術をしない猫が多くいました。しかし近年では、避妊・去勢手術をすることのメリットが広まりました。
それにより、望まない妊娠の予防、乳腺腫瘍や生殖器系の発症の低下、卵巣や子宮の病気の予防、発情期の問題行動の防止につながりました。
⑤マイクロチップの装着の義務
2022年6月1日から改正動物愛護法が施行され、マイクロチップの装着が義務化されました。
以前は首輪や迷子札に名前や住所、電話番号を記載する方も多いですが、外れてしまったり悪用されることが懸念されています。
マイクロチップを装着することで迷子や災害のときに飼い主さんの元に帰れる率が高くなったり、置き去りや破棄の抑制にもつながります。
⑥室内飼育が主流
以前は室外飼育が主流でしたが、現在は室内飼育が主流となりました。室内飼育になったことでさまざまなリスクを回避することができるため、寿命が延びたと考えられます。
- 交通事故やケンカに遭う機会が減った
- ウイルスや寄生虫の感染のリスクが減った
- 誤飲、誤食をしなくなった
- 迷子にならなくなった
- 風邪や熱中症のリスクが減った
- 急激な温度変化によるストレスが減った
⑦飼い主さんの関心の向上
猫に対する飼い主さんの関心の高さも、寿命が延びた一因として挙げられます。
猫を家族の一員と認識し、猫の食事は「エサ」ではなく「ごはん」といわれるようになりました。猫の健康を気遣った手作りごはんを取り入れたり、お留守番のときにペットシッターを頼むことでストレスを軽減したり、猫の生態や習性に合わせた飼育環境が非常に充実しているといえます。
寿命を延ばす方法は?
猫の寿命が延びた理由として、獣医療の進歩やキャットフードの改良など社会的な進歩が大きく関係していますが、それだけではありません。飼い主さんの愛猫に対する関心の向上、愛猫の健康を願うからこその暮らし方、毎日の食事管理など、飼い主さんの想いや努力の賜物でしょう。
ここでは、飼い主さんができる猫の寿命の延ばす方法をご紹介します。
定期的な健康診断を受ける
定期的な健康診断を受けることで病気の早期発見・早期治療ができ、寿命を延ばすことにつながります。
猫は自分が体調が悪いときに飼い主さんに気づかれないように隠す習性があります。病気が発覚したときには症状が悪化していた…というケースも珍しくありません。
毎年の予防接種のときに健康診断の予約をするなど決めておくと忘れずに済みます。猫は8歳ごろからシニア期に入ります。成猫は年に1回、シニア猫は年に2回健康診断を受けるようにしましょう。
栄養バランスの取れた食事
健康維持のためには、栄養バランスのとれた食事が欠かせません。総合栄養食であるキャットフードを与えることが基本となり、量やカロリーを適切に管理しましょう。また、猫の摂取栄養を考慮して手作りごはんを取り入れるのもおすすめです。
また、肥満はさまざまな病気を引き起こすリスクを高めます。おねだりする姿がかわいいからといって必要以上におやつを与えると猫の健康に大きな負担となります。おやつを与えすぎないことが非常に重要になります。
運動量の確保
室内で暮らす猫は運動量が少ないと筋力と体力が落ち、肥満につながります。肥満になると糖尿病や心臓病、尿路結石、関節炎、肝リピドーシスなどの病気を引き起こす恐れがあるため、日頃の運動が重要となります。
- 猫じゃらしやボールなどで遊ぶ時間を作る
- キャットタワーを設けて、上下運動をさせる
ストレスフリーの生活環境
猫はストレスを感じると、体調を崩しやすい動物です。猫の習性に合わせたストレスフリーな生活環境を整えることは、長生きにつながります。
- 隠れられる場所がある
- 飼い主さんとのコミュニケーション
- 猫が自由に落ち着けるスペースを作る
- トイレを清潔に保つ
- 寝ている猫を無理やり起こさない
- 猫をしつこく追いかけない
また動物病院はケガや病気、健康診断で利用することが多い場所なので、子猫のうちから動物病院に慣れておくと良いでしょう。そうすることで、動物病院に行くたびにかかるストレスを軽減することができます。
まとめ
- 2010年と比べると+1.43歳(人間の年齢換算で約4歳)
- 寿命が延びたのは社会的背景だけでなく、飼い主さんの意識の変化も一因
- 猫の習性に合わせたストレスフリーな生活環境にすることが大切