ネズミ駆除のために自宅や近所で殺鼠剤を利用している方もいるかもしれません。
完全室内飼いが浸透したことで、外で猫が殺鼠剤を誤食してしまうトラブルはだいぶ少なくなりましたが、もし猫が脱走して外に出てしまったり、殺鼠剤を食べたネズミが侵入してくる可能性も0ではありません。
哺乳動物を駆除できるほど強い薬剤を猫が誤って食べてしまったらと考えると本当に恐ろしいです。
もし猫が殺鼠剤を食べてしまったら、どうすればいいでしょうか。
猫の殺鼠剤中毒について
殺鼠剤とは、ネズミを駆除する目的で使用される薬剤です。
ネズミが発生しそうな場所に毒餌を配置しておくことで食べたネズミを死亡させます。置き餌なので、誤って猫が殺鼠剤を食べてしまうことがあり、種類や誤食した量によっては殺鼠剤中毒を起こします。
殺鼠剤の種類
ワルファリンが一般的
殺鼠剤は「急性毒剤」と「抗凝血剤」に大きく分けられますが、抗凝血剤が使用されるのが一般的で、代表的な抗凝血剤が「ワルファリン(ヒドロキシクマリン)」です。
ワルファリンは肝臓でビタミンK依存性凝固因子の第Ⅱ(プロトロンビン)、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子の生合成を抑制し、抗凝固作用や血栓形成を防ぐ作用があります。
現在ワルファリンとそれに類似の薬物が殺鼠剤として広く使用されており、アース製薬が販売しているデスモアという製品にもワルファリンが有効成分として使用されています(0.05%)。
第1世代と第2世代のワルファリンの違い
ワルファリンは「第1世代ヒドロキシクマリン(ワルファリン)」と「第2世代ヒドロキシクマリン(ワルファリン)」の2種類に分けられます。
始めに開発された第1世代ヒドロキシクマリンに対して抵抗性を示すネズミが出現したことから、ワルファリン抵抗性ラットに対して有効な第2世代のヒドロキシクマリンが販売されるようになりました。
第1世代、第2世代どちらの殺鼠剤も血液凝固を阻害しますが、第1世代の殺鼠剤は継続的な摂取によって致死量となるのに対し、第2世代殺鼠剤は1回の摂取で致死量となるように作られています。
つまり、猫が誤食した殺鼠剤が第二世代の新しい殺鼠剤の場合、より危険性は高いと言えます。
殺鼠剤中毒の症状
- 呼吸困難
- 痙攣
- 意識障害(嗜眠)
- 食欲減少
- 貧血
- 皮下・粘膜からの出血
- 内出血
- 血尿
- 吐血
- 血腫
- 嘔吐
殺鼠剤は、血系凝固を阻害する作用があるので、外傷部位や各種粘膜から出血することがあります。鼻出血や血尿、血便、血腫などが常に現れるとは限らず、よく見られる症状は、呼吸困難や意識障害(嗜眠)、食欲不振です。
殺鼠剤中毒になった猫の治療方法
診断方法
まずは血液凝固の状態の検査を行い、診断的治療として猫にビタミンK1を投与します。
ビタミンK1の投与で24時間以内に良好な反応があれば猫が殺鼠剤中毒である可能性があります。殺鼠剤が疑われる場合、その組成を殺鼠剤の販売メーカーなどに問い合わせ、原因と思われる抗凝固薬を迅速に特定します。
治療方法
- ビタミンKの投与
- 輸血
- ほか症状に応じた対症療法
重度の殺鼠剤中毒では、猫にひどい貧血や低血液量性ショックが見られるため輸血が必要になります。
輸血によって症状に改善傾向が現れた場合は、ビタミンK1投与するとともに安静を保つためケージレストとし、猫に必要な対症療法を行っていきます。
治療期間
治療期間は猫が誤食してしまった殺鼠剤の種類によります。
第1世代ワルファリンはおよそ7~10日間で治療は終了しますが、第2世代ワルファリンでは4~6週間ほどの治療期間になることがあります。