キャットフードのホルモン剤(肥育促進剤)。乳がんや前立腺癌などホルモン依存の癌のリスク

ホルモン剤 キャットフード 家畜
鈴木さん
キャットフードでたまに「ホルモン剤不使用」という文字を見かけますが、ホルモン剤や成長促進剤はよくないものなのでしょうか。
猫田

やはり不使用であることを売りにしているということは、ホルモン剤に少なからず危険性やデメリットがあるということです。ここでは動物に使用されるホルモン剤や成長促進剤投与が、キャットフードや猫にどのような影響や危険があるかを解説したいと思います。 

ホルモン剤(成長促進剤)とは

家畜動物に投与される肥育促進剤

ホルモン剤(GROWTH HORMONE)とは、肥育を促進する動物用医薬品や飼料添加物を言います。

ホルモンは様々な種類があるので、人の場合、癌や更年期障害の治療やピルなどに利用されますが、牛や豚など動物に投与される場合には「肥育ホルモン剤」というその動物の生産性を上げるために投与されるホルモン剤が利用されます。

ホルモン剤の働きと目的

体重増加で一頭あたりの肉量を増やす

家畜動物にホルモン剤を投与する目的は、肥育という言葉からも分かるとおり、動物の体重を増加させることです。

ホルモンとは内分泌器官で分泌される物質で、特定の臓器や細胞を刺激することで活性化させたり特定の働きを調節する作用があります。

動物用医薬品のホルモン剤は、この作用を利用して体重を増加させるホルモンを体外から投与し、一頭あたりの肉の量が多くすることで、少ない頭数で沢山の肉を生産できるよう、家畜動物の体重増加や肥育を促進します。

ホルモン剤投与された肉の危険性や副作用

健康への悪影響はないと言われている

ホルモン剤 キャットフード引用元:牛や豚に使用される肥育促進剤(肥育ホルモン剤、ラクトパミン)について(Q&A)

我が国では、肥育促進剤が食肉中に残留し、摂取されたとしても、人の健康に悪影響を与えることがないように、食品中にそれらの物質が残留することが認められる最大の量(残留基準)を、科学的根拠に基づき定めています。具体的には、国際的なリスク評価機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が定めている一日当たりの摂取許容量※を下回る範囲内で、肥育促進剤の残留基準を設定するとともに、基準を超える食肉の輸入や販売を禁止することで、食品の安全性を確保しています。なお、世界的に見てもアメリカ、カナダ、オーストラリアで肥育促進剤の使用が認められており、国際基準(Codex基準)においても、適正に使用される場合、人
の健康への悪影響はないと判断されています。

現在のところ、家畜へのホルモン剤使用による危険性や副作用は、様々な研究や議論が行われていますが、厚生労働省からも、日本では残量基準を定め、それに従って基準を超える食肉の輸入や販売を禁止しており、国際基準においても適正に使用されれば健康への懸念はないというような回答となっています。

ホルモンに依存する発がん性のリスク

しかしホルモン剤は乳がんや子宮癌、前立腺癌などホルモンに依存した癌のリスクを高めると言われています。30年前にホルモン剤使用牛を禁止したEUでは、乳がんによる死亡率が大きく下がったという出ており、ホルモン剤はやはり発がん性に関係するのではないかと注目されています。

また、危険がないというのはあくまで食肉や人間における話です。特に猫の場合、肉食性でキャットフードに含まれる肉量も多くなるため、もしホルモン剤使用牛に発がん性がある場合、人や犬のような雑食性の動物よりも発がん性の影響を受けやすいのではないかという見解もあります。

家畜にホルモン剤を使用している国と禁止の国

アメリカ、カナダ、オーストラリアで使用

ホルモン剤は家畜産業が盛んなアメリカやカナダ、オーストラリアなどの国で広く使用されています。アメリカでは食肉に使用される牛にはかなり高い確率で使用されていて、豚、チキンなど肉原料として利用される家畜にも使用されている可能性があるようです。

キャットフードの肉原料は基本的に食肉用の可食部位を除いた部分が使用されるので、アメリカ、カナダ、オーストラリア産食肉の不可食部位を使用したフードにはホルモン剤が投与されている可能性が高いと言えます。

日本でのホルモン剤の使用と輸入

日本では、ホルモン剤が農林水産大臣によって承認されておらず、国内での家畜へのホルモン剤投与は認められていません。

日本の牛肉でホルモン剤が使用されない理由は、日本人が赤身より脂身が多い肉を求めるからであると考えられています。かつては天然型のホルモン剤を認証する団体があり、使用されていましたが、肥育ホルモンを与えた牛肉は赤身の割合が増えてしまうため、日本人が求める牛肉のニーズには合わず、安全性とは別の理由からですが日本では肥育ホルモン剤を使用する業者がいなくなったようです。

しかし、現状、日本ではホルモン剤を使用した牛の輸入は認められています。このため「国産」と記載があるキャットフードであっても、輸入したアメリカ産やオーストラリア産の肉を使用している可能性はあります。このため国産キャットフードの場合は一概に安全と考えるのではなく、その肉が育てられた原産国で判断する必要があります。

EUでは米国産牛肉の輸入禁止

EUでは、もともと肥育ホルモン剤は使用されておらず、さらに1988年より成長促進が目的のホルモン剤を牛に使用することを禁止し、翌年1989年からはホルモン剤を使用した牛や牛肉製品の輸入も禁止しています。

このため、ホルモン剤などの影響を受けない最も安全なキャットフードはEU産キャットフードと言えるかと思います。ただしこの規制は牛肉のみなので、豚や鶏の輸入については分かりかねます。

まとめ

猫田
以上、今回はキャットフードのホルモン剤や肥育促進剤について、危険性や発がん性などについてお話してきました。
鈴木さん
ホルモン剤を使用した牛肉にも発がん性のリスクがあるとは勉強不足でした…。キャットフードは肉が多ければいいと思っていましたが、どのように育てられたかや安全性についてもきちんと考えなければいけないんですね。
猫田

危険性について科学的根拠は示されていませんが、発がん性が指摘されている以上、避けた方がいいかと思います。ただ肉の原産国を記載している国は少なく、EU以外の場合は輸入された牛肉を使用している可能性もあります。このため、確実にホルモン剤を避けるなら、EU産のキャットフードやオーガニックキャットフード、また原材料の産地まで細かく記載しているメーカーの商品を選ぶのも一つの手かと思います。

  • EU産のキャットフード
  • オーがニックキャットフード
  • 原材料の産地も記載しているキャットフード

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一般社団法人ペットフード協会ペットフード販売士、キャットフード勉強会ディレクターとして、キャットフードに関する情報を提供しています。また、日本化粧品検定協会のコスメコンシェルジュ資格を有し、ペットフードだけでなく化粧品にも精通しています。販売時に必要な知識となる薬機法などについてもご紹介ができます。日本化粧品検定協会会員。