食品はともかく、アメリカはペット先進国で、世界的に採用される栄養基準を設定した団体「AAFCO」があり、ペットフードの市場規模も非常に大きいです。動物愛護やペットフードに関する規制や法律もあり、国民の意識も高いですよ。
ここではそんなアメリカのペットフード事情や動物愛護について詳しく見ていきたいと思います!
アメリカのペットフード事情
犬猫飼育頭数が世界でNo.1
アメリカ(USA:United States of America)は、50の州と連邦区から構成される国家で、世界人口第3位。歴史的に移民を多く受け入れてきたことから、様々な国や民族の人々が暮らしています。
アメリカはペット先進国ということで、猫や犬と一緒に暮らす人が多く、猫・犬の飼育数は共に世界No.1となっています。
2016年時点の調べでは、アメリカでの犬猫飼育頭数は、猫が9,420万頭、犬が8,970万頭となっており、EUすべての加盟国で飼育されている犬や猫よりも、アメリカで飼育されている猫や犬の飼育頭数の方が多いという結果が出ています。
ロイヤルカナンやヒルズなど大手ペットフードメーカーが多い
ペットの市場規模も世界トップクラスで、ロイヤルカナンやアイムス、ユーカヌバなどを所有するマースグループ(Mars, Incorporated)、またサイエンスダイエットなどの療法食を展開するヒルズペットニュートリションなどもアメリカの企業です。
アメリカのペットフードに関する法律と安全確保
連邦政府と州政府の2段階で法規制
農林水産省と環境省の資料「諸外国でのペットフードの安全確保状況について」によると、アメリカは連邦政府と州政府の2段階によって法規制を行っています。連邦政府は、「連邦食品・医薬品・化粧品法に基づく規制」によって、ペットフードを含む飼料全般について規制をしています。
国によって、ペットフードを飼料に含めるか否かが異なりますが、アメリカでは飼料に関する法規制はペットフードにも適用されます。
また、アメリカの場合、団体や法律が1つではなく、食品医薬品局(FDA)やペットフード工業会(PFI)、米国飼料検査官協会(AAFCO)、農務省(USDA)など、複数の団体や機関によって監視や指導が行われています。
AAFCOを制定した米国飼料検査官協会
アメリカではFEDIAFやNRCなど様々な機関によってペットフードの規制がされていますが、日本も含め、世界的にペットフードの栄養基準として採用されているのは、アメリカの米国飼料検査官協会(AAFCO)が作成した成分基準です。
州政府は適正な流通を確保するために、米国飼料検査官協会(AAFCO)が作成したモデル法令を基に、州法により市販されるペットフードの規制を行っています。
日本でキャットフードもしくはドッグフードを「総合栄養食」として販売するには、公正競争規約によって定められているAAFCOの基準をクリアしている必要があります。
アメリカ産キャットフードの懸念点について
アメリカでは広大な国土を生かして農業や畜産業も盛んとなっていますが、効率的かつ利益を重視した生産を追求した結果、食材の安全性が問われることがあります。
たとえば、遺伝子組換え、作物への農薬の使用、家畜動物への肥育剤(ホルモン剤)投与などが行われており、その規制もゆるいです。ヨーロッパのように使用や輸入自体を禁止している国とは、食事への安全性の意識が異なります。
アメリカの動物愛護の意識と法律
アメリカは動物愛護・動物福祉に関する法律が多い
動物愛護に関する法律も多く、ペット(コンパニオンアニマル)を家族やパートナーとして扱う国民が多く、アメリカでは獣医師になるために大学で8年勉強する必要があり、また獣医学部の入学もひときわ難しいということで、人と同じレベルの医療や責任が求められる仕事として認識されています。
アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)
ASPCAとは、ヘンリー・バーグによって1866年に設立されたアメリカ動物虐待防止協会(The American Society for the Prevention of Cruelty to Animals)という団体で、ロシアで馬車馬への虐待を目の当たりにした際に心を痛めたヘンリー・バーグが自国で創設しました。
先にイギリスで設立された動物虐待防止協会(SPCA)の頭に「A」を付けて「ASPCA」という団体名になりました。
アメリカは、児童虐待よりも動物虐待への防止運動が先に行われたため、動物・自動虐待防止の2本柱で活動する団体が多いことも特徴として挙げられます。
動物福祉法(AWA)
動物福祉法(AWA:Animal Welfare Act)は、1966年に制定された法律で、動物を取扱うブリーダー等の動物商、展示業者、研究機関等の事業者の守るべき決まりと禁止事項、ライセンス制度、また、米国農務省(USDA)の動物・植物検疫サービス(Animal and Plant Health Inspection Service:APHIS)の役割についても定められています。
動物に対して人道的な取扱いを行うことを規定したものですが、その対象は、ペット、研究、検査、展示(動物園、サーカスなど)など幅広い動物に適用されますが、家畜は対象外とされています。
動物福祉規則(Animal Welfare Regulation)
動物福祉規則は、動物を取扱う事業者のライセンス取得、登録などの具体的な手続きや記録等の義務を始め、動物の飼養(空間、設備、温度等)等の基準を定めています。
※小売ペット業者は飼養基準について規制の範囲外ですが、他のブリーダー等の業者、展示業者、研究機関へ販売などを行う小売ペット業者は規制対象となります。
<2019年11月 PACT法発効>動物虐待が全米対象の連邦犯罪に
2019年11月、特定の状況下での極度の動物虐待を連邦犯罪とする動物虐待・拷問防止法(PACT)法案にトランプ大統領が署名し、法律が発効されました。
動物虐待や拷問が連邦法となるのはアメリカ初のことで、この法令により、国家レベルで動物虐待や拷問が重罪として罰されるようになります。最長7年の懲役と罰金が科せられます。
まとめ
- 複数の法律や機関によって事業者が監視・指導される
- 動物愛護に関する連邦法や州法などの規制が多くある
- AAFCO(米国飼料検査官協会)は世界的なペットフードの栄養基準を定めている