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一昔前まではゲテモノとして罰ゲームで食べる以外では知られていなかった昆虫食ですが、コオロギやイナゴ、ハチノコから、タガメやセミ、ゲンゴロウなど大型の昆虫まで様々な昆虫の加工食品を販売するお店が増えてきました。
また食品だけに留まらず、キャットフードでも昆虫を利用した製品が販売されてきています。ここでは新たなキャットフードの原材料候補の昆虫についてご紹介したいと思います。
昆虫食(Insect eating)について
猫が昆虫を食べて大丈夫?
まず、猫が昆虫を食べても大丈夫か不安な飼い主さんもいらっしゃいますが、基本的に問題ありません。
昆虫を食べてアレルギー反応が出てしまう猫の場合はNGですが、古くから猫は野生化でもネズミや鳥などの小動物だけでなく昆虫も捕まえて食べているので、食性から考えても虫を食べること自体は自然です。
昆虫の嗜好性は肉ほど高いわけではありませんが、タンパク質が豊富であり、また昆虫によってはエビやカニなどに近い風味が感じられることから、海産系の味が好きな猫は好むかもしれません。
ただ自宅で出た虫の場合、除草剤や殺虫剤が付着していたり、駆虫剤などを食べている可能性があるので注意しましょう。
キャットフードの昆虫
現在、食用として食べられている昆虫は1,000種類以上にのぼりますが、まだキャットフードで昆虫を使用した製品は多くありません。キャットフードに利用されている昆虫は、爬虫類のエサとして、昔から養殖されてきたコオロギやミールワームなど昆虫や、シルク産業の副産物として大量に産出されるカイコのサナギなどがあります。
- ピュリナ ビヨンド・ネイチャーズ・プロテイン(ミズアブの幼虫)
- ヨラキャットフード(乾燥昆虫)
- 貧貧(カイコのサナギ)
これから増えてくると思いますが、現状は海外のみで日本では販売していないフードや、開発中の製品を合わせても、片手で数えられるくらいしか確認できませんでした。
ちなみに昆虫キャットフードと聞くと、グロテスクな虫そのものを想像しますが、おやつ用やフリーズドライのフードでなければ、ほとんどの昆虫キャットフードは昆虫を形がなくなるまで小さくすり潰して他原材料と混ぜて成形されるので、見た目は他のフードと変わりありません。
昆虫の栄養素
動物性タンパク質やビタミン、ミネラル
昆虫に含まれる栄養素として、動物性タンパク質、ビタミンやミネラルが豊富な点は共通しています。また、昆虫の外側の固い殻はキチン質によってできていて、食物繊維と同じような働きをします。
猫には動物性タンパク質が他の動物より多く必要ですが、昆虫の血液に含まれるアミノ酸は、哺乳類の動物に含まれるアミノ酸構成と似ていることが分かっており、猫に必要なアミノ酸も多く含まれていることが予想できます。
昆虫によって成分構成は異なる
また、食用昆虫については、まだ一般的ではないため、詳しい栄養素や成分値、昆虫独自の機能性成分などははっきりとは分かっていません。
さらに栄養素は昆虫の種類によって成分構成が異なるので、たとえば、コオロギのような固い殻に覆われている虫はキチン質(食物繊維)が多いですが、幼虫のような柔らかい虫は、タンパク質や水分が多いことが予想できます。
昆虫は非常に高タンパク質であるという誤解
肉や魚などと比べて圧倒的にタンパク質が多いかと言われるとそうではなく、昆虫はほとんど乾燥されて水分がなくなって凝縮した加工品が出回っているので、タンパク質も多く見えます。
しかし、キャットフードに使用される場合は、虫だけでなく、肉や魚など他の原材料も乾燥して水分がなくなり、昆虫と同じ条件になるので、実際のところ、昆虫の方がはるかに高タンパクであるというわけではありません。
昆虫は地球環境に配慮した新しいキャットフード原料?
昆虫生産は温室効果ガスの発生が少なく済む
昆虫は、様々な栄養が含まれた優れた栄養源であり、資源の消費とメタンガスの排出を最小限に抑えられるため、地球温暖化や食糧難などの問題を解決する方法としてSDGs(持続可能な開発目標)の観点からも期待が寄せられています。
牛など家畜動物は、肉になるまでの飼育期間の間に、排泄物の発酵などでメタンガスを多く発生させることが分かっています。温室効果ガスや環境問題の観点から、どのようにメタンガスの発生を抑制するかが問われていますが、その点、昆虫は牛と同量を生産してもメタンガス発生が少なく、利用できる部位も多いことから、無駄になる部分も少なく環境にも良いと言われています。
低コストで安定供給が可能
また、昆虫は原料として地球環境やその年の気候などに左右されず、室内で少ないスペースで生産が可能なので、低コストでより多くの生産を安定的に確保することができます。
その年によって収穫量や品質にバラつきがでないことは、生産者にとっても大きなメリットです。
安全性や栄養について分かっていないことが多いのも事実
メリットが多い昆虫キャットフードですが、これまで昆虫を主食として摂取している動物は少なく、猫が昆虫フードを長期的に主食として給与したデータも確認できないため、昆虫フードによって猫に問題が出ることは確実にないと言い切ることはできません。
少量で問題がなくても大量に食べた時に影響が出る場合もあるので、これからの販売や給与実績で判断していく必要はあるかもしれません。
甲殻類アレルギーがある猫は注意
また、一部の昆虫はエビやカニなどの甲殻類と似た遺伝子を持っていて、甲殻類アレルギーを持っていると交差反応によって昆虫でもアレルギー反応が出る可能性があります。筋肉を構成するタンパク質の一つであり、エビやカニのアレルゲンである「トロポミオシン」は多くの昆虫にも含まれる成分です。このため、昆虫食品にも甲殻類のアレルギーがある人へ「原材料の昆虫はエビやカニに類似したタンパク質を有しています」などの注意喚起を行うべき旨の記載があります。
このためエビやカニにアレルギーが出る猫は、昆虫フードは避けた方がいいかもしれません。
まとめ
- 昆虫フードは今注目の新原材料(新しいタンパク源)
- 牛に比べて生産時のメタンガスの発生量が非常に少なく環境に優しい
- エビやカニなどの甲殻類アレルギーがある猫は注意