キャットフードの成分:ケイ素(Silicon)
ケイ素(珪素)とは
ケイ素(シリコン:Silion)は原子番号14の元素で、半導体部品の製品として有名な物質です。単体のケイ素は合成樹脂の「シリコーン」と混同されやすいですが、ケイ素の場合は元素単体なので別物となります。
また、ケイ素については安全性に関するデータは十分ではないため、日本やアメリカでも食品やペットフードの摂取基準は定められていませんが、小麦やシリアル、玄米などの穀物に多く、また水道水にも含まれています。
栄養素としての必要性についてもはっきりとは分かっていませんが、ケイ素の機能性を利用したキャットフードやサプリメントも販売されています。
猫の必須栄養素ではない
ケイ素はミネラルの一つですが、猫にとって必須栄養素ではありません。このためキャットフードでも最低基準や上限値の設定はなく、配合してもしなくてもいいものとして位置づけられています。
猫の体内におけるケイ素の効果と働き
水素を発生させて悪玉活性酸素を体外へ排出する
キャットフードやサプリメントに配合されるケイ素の効果として挙げられるのが、腸内で穏やかに水素を発生させ、生成された水素が悪玉活性酸素(フリーラジカル)と反応することで水として体外へ排出されるという効果です。
水素は酸化ストレスを誘発したり細胞にダメージを与える悪玉活性酸素(フリーラジカル)をいち早く体外に排出することで、体の酸化ストレスを軽減し、腸内環境を良い状態に保ち、免疫力を正常に維持します。
たとえばマルカンが販売する「ザ・パーフェクトワン」は大阪大学産業科学研究所の研究グループが開発、特許を取得したレナシスプラス(ケイ素食品剤)を配合し、腸内環境や免疫の維持に配慮したキャットフードとして販売しています。
アトピー性皮膚炎、糖尿病、外耳炎等が治る例が多数!
引用元:大阪大学 産業科学研究所 |体内で多量の水素が発生し、酸化ストレスを低減するシリコン製剤
このシリコン製剤を含有するサプリメントを犬や猫等に与えたところ、アトピー性皮膚炎、糖尿病、外耳炎等が治るという治療例が多数観測されました。例えば図1では、10年間使用していたステロイドを中止し、45日間シリコン製剤を与えたところ、アトピー性皮膚炎が完治し、かゆみがなくなり脱毛していた背中部が増毛しました。
大阪大学産業科学研究所の研究グループが開発したケイ素(シリコン)製剤を含んだサプリメントを犬や猫に与え、水素による酸化ストレスを軽減した結果、アトピー性皮膚炎や糖尿病、外耳炎などが治ったという効果が報告されています。
慢性腎臓病の猫への飲料療法にも利用されている
宮崎県のさがら動物病院では、慢性腎不全の猫に対して補助療法としてナノバブル水素水とケイ素水を利用し、従来の治療法と比較して健康寿命の延長と、体重やBUN値の変化に明らかな違いを見出すことができたと報告しています。
ナノバブル水素水とケイ素水を投与した猫には体重変化が少なく、むしろ体重が増加した猫もいたとのこと。
この動画では、ケイ素により、細胞内のミトコンドリアの活性化と抗酸化作用により、エネルギーの産生と組織の若返り反応が起こったと考察しています。
またケイ素を配合したサプリメントを慢性腎不全の猫に投与した結果、数値が改善したという口コミも見られており、その効果が期待されています。
ケイ素が犬の「シリカ結石」の誘発因子となる?
これまでの研究で、我々は鹿児島県においてシリカ尿結石のイヌが多くみられること、及び県内の水道水中のシリカ濃度は他の地域に比べて著しく高いことを報告した[4]。シリカ結石の発生原因として、飲料水との関連性が示唆されたため、今回、国内のいくつかの地域の水道水中シリカ濃度を測定した。その結果、大分県竹田市、茨城県筑西市付近でシリカ濃度が高いことが判明した。また、シリカ結石が好発している鹿児島県霧島地方の水について高速原子衝撃質量分析(FAB-MS)を用いて解析したところ、シリカ濃度が1mM以上であるにもかかわらず、イオン状に溶解しているシリカが少なく、シリカを析出した後にみられる水の特徴と一致していた。シリカ結石予防の方法としてRO膜型浄水器は水道水中のシリカを除去できるが、家庭に普及している家庭用浄水器では、シリカが除去されないことが明らかになった。また、シリカ好発地域以外のシリカ結石症の要因について調べると、特定のフードとの関連が示唆された。
通常、犬がシリカ結石を発症することは珍しいとされていますが、鹿児島県では犬のシリカ尿結石が多発したことから、上記の論文では水道水(飲料水)に含まれるケイ素が犬のシリカ結石の発症原因と関連していると報告しています。
鹿児島県内の水道水に含まれるシリカ濃度は他の地域に比べて著しく高く、家庭用浄水器でもケイ素を除去することは難しいとのことで、犬のシリカ結石が多いのは水道水中にケイ素が豊富であるためと考えられます。
ペットフード中のケイ素が犬のシリカ結石を引き起こす
また、この論文ではシリカ結石症について、特定のフードとの関連も示唆されています。この研究は、日本ペット栄養学会の助成金を受けて実施したとのことで、結果の信頼性も高いかと思います。
引用元:原著論文 イヌにおけるシリカ結石の誘発因子と予防 表2、表3
インターネット上でシリカ結石を発症したイヌのオーナーに連絡を取り、その誘発因子について調べた。症例が保護犬で、食餌内容が不明であることが予測された2例を除き、シリカ尿結石のイヌ5頭をインターネット上で見つけることができた。この5頭についてオーナーとメール等で連絡を取り、アンケート調査を行った。その結果、シリカ結石症例の5頭中4頭が同じペットフードを食べていたことが分かった(表2)。さらに、シリカ結石を発症した時期も4頭で接近していた。残り1頭は4頭とは別のペットフードを食べていた。
インターネットで結石との関連が疑われたフードA、B、主原料としてシリカを多く含む米や玄米を多く含むフードC、及びコントロールとしてヒルズのサイエンスダイエットライトおよびロイヤルカナンミディアムライトに含まれるケイ素含有量を測定した。その結果を表3に示す。5頭中4頭のシリカ結石患者が食べてたペットフードの含有ケイ素は1280ppm、残り1頭が食べていたフードは2370ppmであった。ペットフードと人間が普段食べている食材の含有ケイ素量を比較すると、ケイ素含有量が多いとされる穀類(米、オートムギ)も150-200ppm程度であり、ほとんどのペットフードは十分すぎるケイ素を含んでいる。しかしシリカが生体に吸収されるためには溶解している必要がある。シリカの生体利用率は穀物では19%以下であるが、一方シリカが溶解した状態で存在するビールでは吸収率が100%以上となっており、このことはシリカの供給源として水道水の果たす役割が大きい可能性を示唆している。ペットフード中には大量もシリカが含まれており、単純にフード中の過剰なシリカが結石の要因とは考えにくい。今回、ネットでの調査で関与が疑われたペットフードブランドAはあまり広く流通しているものではないが、シリカ結石の発生が多く見られたことから、シリカが体内に吸収されやすい形でフード中に含まれていたと推測している。このペットフードは現在でも販売されているが、結石の発生時期は表2の期間に限定されるようである。
上記の研究結果から、単純にキャットフード中に含まれるケイ素が多いとシリカ結石になるわけでなく、水道水やペットフードブランドAのように、ケイ素が体内に吸収されやすい形で含有されているかが問題であるということが分かります。
ただ、ケイ素入りのサプリメントの中には、体内に吸収されやすい溶解した高濃度のケイ素が含有されているものもあるため、犬に安易に与えるのは避けるべきとも言っています。
この研究は犬に関する報告なので、猫に対するものではありませんが、猫がシリカ結石を発症しないとも言い切れませんので、犬と同様に与えるのは慎重になった方がいいかもしれません。
まとめ
- ケイ素は小麦やシリアル、穀類に多い栄養素
- ケイ素食品剤は腸内で水素を発生させ、悪玉活性酸素を体外へ排出する
- ケイ素が多い水道水や、吸収されやすい形のケイ素を摂り過ぎるとシリカ結石になる恐れがある(犬)