猫にとってのタバコとは
わずかな摂取でも毒となる
人間にとっても健康被害のあるタバコですが、猫にとってはさらに深刻な毒になります。猫の体は人よりもずっと小さく、代謝能力も低いため、わずかなニコチンや有害物質でも命に関わることがあります。
実際、動物病院では「ニコチン中毒」で運び込まれるケースも少なくありません。
猫は犬よりも摂取しやすい
直接的にタバコの煙を吸引するだけでなく、ソファやカーテンなどの家具に付いた有害成分も自然と吸引してしまいます。
また、猫は毛づくろいをする習性があるため、毛に付いた有害成分も舐めとってしまいます。そのため、猫は犬よりも「三次喫煙(残留喫煙)」による被害を受けやすい動物と言えます。
タバコの煙が引き起こす健康被害
紙タバコの煙に含まれる有害物質は、ニコチンやタール、一酸化炭素、ホルムアルデヒド、ベンゼンなど。これらは肺や肝臓への負担を増やすだけでなく、免疫機能を低下させ、がんや呼吸器疾患、心臓病などのリスクを高めます。
とくに以下のような症状が報告されています。
- 慢性的な咳やくしゃみ、鼻水
- 呼吸困難、ぜいぜいとした息づかい
- 食欲不振や元気の低下
- 目の充血や涙
- 嘔吐、下痢などの消化器症状
タバコの煙が猫のがんリスクを高めることが研究で判明
猫の「悪性リンパ腫」という病気は、猫のがんの中でもよく見られる病気です。研究では、タバコの煙(受動喫煙)がこの病気のリスクを高める可能性があることがわかりました。
アメリカ・マサチューセッツ州の大学病院で、悪性リンパ腫になった猫と、ほかの病気で通院した猫を比べて調べたところ、飼い主が家でタバコを吸っていた猫は、吸っていない家庭の猫よりも約2.4倍がんになるリスクが高かったという結果が出ました。
さらに、5年以上タバコの煙にさらされていた猫では、リスクが約3.2倍まで上がっていたそうです。しかも、煙にさらされる時間や量が多いほど、がんのリスクも上がっていました。
参考:Environmental tobacco smoke and risk of malignant lymphoma in pet cats
電子タバコや加熱式タバコも安全ではない
「煙が出ないから大丈夫」と思われがちな電子タバコや加熱式タバコですが、猫にとっては決して安全ではありません。
電子タバコのリキッドには、ニコチンのほかにもプロピレングリコールやグリセリンが含まれます。これらは加熱により有害化学物質を発生させ、吸引だけでなく皮膚や口腔からも吸収される危険があります。さらに、リキッドを誤って舐めたりこぼした液を舐めた場合、少量でも命を落とす恐れがあります。
加熱式タバコも「煙が少ないだけ」で、有害成分がゼロではありません。発生するエアロゾル(微細粒子)にはタールやニコチン、一酸化炭素などが含まれ、猫の肺や肝臓に負担をかけます。
ニコチン中毒の危険性
猫がタバコや吸い殻、電子タバコのリキッドを口にした場合、急性のニコチン中毒を起こす可能性があります。症状は摂取後15〜60分以内に現れることが多く、以下のような様子が見られます。
- よだれを垂らす
- 嘔吐や下痢
- 呼吸が荒くなる
- 落ち着きがなくなる、震える
- けいれん、昏睡
吸い殻や液体を少し舐めただけでも命を落とす危険性があるため、誤飲した場合はすぐに動物病院へ連絡し、できるだけ早く治療を受けることが必要です。
猫と暮らす家庭でのタバコ対策
猫の健康を守るには、「タバコをやめる」「吸わない環境」を作ることが最も効果的です。もし喫煙をやめられない場合でも、以下のような工夫で被害を最小限に抑えられます。
① 家の中では吸わない
家の中で喫煙をすると壁や家具、衣類に有害物質が付着します。換気扇の下や窓際でも、煙や粒子は部屋中に広がるため完全に防ぐことはできません。猫が暮らす家では「完全禁煙」が理想です。
② 喫煙後は手や服を洗う
ニコチンやタールは皮膚や衣服に残りやすく、猫を抱いたり撫でたりするだけで接触被害を引き起こすことがあります。喫煙後はうがい・手洗い・着替えを行いましょう。
③ 吸い殻や電子タバコのリキッドを放置しない
猫は好奇心旺盛で、においのするものを舐める傾向があります。灰皿やリキッド容器は必ず密閉・高所に保管し、猫の手が届かない場所に置くようにしましょう。
④ 空気清浄機や換気で空気を保つ
タバコの有害物質は空気中に長く留まるため、フィルター付きの空気清浄機を設置し、こまめに換気を行うことが大切です。
⑤猫の健康チェックを怠らない
喫煙環境で暮らしていた猫や、タバコ臭のある家庭で飼われている猫は、健康診断を定期的に受けることをおすすめします。とくに呼吸が荒い、咳が続く、目や鼻の炎症が見られる場合は早めに獣医師に相談しましょう。
まとめ
- 猫にとってタバコは毒で、わずかなニコチンでも中毒を起こす危険がある
- 紙タバコの煙だけでなく、電子・加熱式タバコも有害物質を含む
- 猫は被毛を舐めるため、家具や衣類に残る有害成分からも影響を受ける
- 吸い殻やリキッドの誤飲は命に関わるため、保管場所に十分注意が必要
- 猫を守るためには室内禁煙と喫煙後の手洗い・換気が最も効果的




































































































































































