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バーミーズ(burmese)の誕生・起源
バーミーズの起源――「黄金の猫」の物語
バーミーズの誕生・起源は、東南アジアのビルマ(現ミャンマー)の地から始まります。
バーミーズの黄金の毛並みと深い瞳は神聖な存在の象徴であり、豊穣や幸福をもたらすとされていたため、「寺院の守護猫」として崇められていたといわれています。
その後、アメリカ人の医師ジョセフ・トンプソンはビルマを訪れた際、一匹の美しい猫に心を奪われました。その猫は特徴的な茶色の毛色と愛らしい性格を持ち、「ウォン・マウ」と名付けられました。トンプソン博士はこの魅力的な猫の血統を維持し、さらにその特徴を際立たせたいと考え、ウォン・マウをアメリカへ連れ帰ります。
アメリカに戻った博士はウォン・マウの特徴的な毛色と丸みを帯びた体型を強調するため、当時、近しい特徴を持つシャム猫との交配計画を開始しました。
最初の交配では、シャム猫の影響でポイントカラーを持つ子猫が多く生まれましたが、トンプソン博士はこれらを除外し、理想的な単一色の茶色い被毛を持つ個体を選び続けました。その努力の結果、濃いチョコレートブラウンのような色合いで柔らかい光沢を放つ美しい被毛「セーブル」が完成しました。
一方で、新しい猫種を認めてもらうための道のりは平坦ではありませんでした。当初、バーミーズとシャム猫の見た目の違いがあまり無かったため批判を受けることもありました。しかし、トンプソン博士とその支持者たちは忍耐強く繁殖を続け、1947年、CFAにおいてバーミーズは正式な猫種として認定されます。
こうして、バーミーズはアジアの神秘的な起源と、アメリカでの品種改良を経て誕生しました。その黄金に輝く毛並みと愛らしい性格は、まさに東洋と西洋の美しき融合の結果と言えるでしょう。「黄金の猫」としての伝説を背負いながら、バーミーズは今日も多くの家庭で愛され、幸せをもたらす存在として輝き続けています。
ヨーロピアンバーミーズとの違いは?
バーミーズはアメリカで繁殖が進められた猫種であるため、「アメリカンバーミーズ」とも呼ばれます。
一方、1950年頃にアメリカンバーミーズがイギリスに輸入され、独自の繁殖によって誕生したのが「ヨーロピアンバーミーズ」です。
同じバーミーズ種であってもアメリカンは丸みを帯びた体型、ヨーロピアンはスリムな体型で、性格も異なるのが特徴です。
バーミーズの性格

社交的で愛情深い
バーミーズは非常に社交的で愛情深い性格を持ちます。家族と一緒に過ごす時間を何よりも大切にし、常に飼い主のそばに寄り添う姿が見られるため、「犬のような猫」とも称されるほど従順で人懐っこい性格です。
好奇心旺盛で活発
バーミーズは好奇心旺盛で活発な一面も持っています。遊び好きでエネルギッシュなため、動くおもちゃやなゲームに興味を示し、飼い主と一緒に楽しむことが得意です。
また知的で学習能力が高いので、簡単なしつけやトリックを覚えることも期待できます。
穏やかで落ち着きがある
一方で、穏やかで落ち着いた性格も持ち合わせています。他のペットや子どもとも比較的仲良くできるため、多頭飼いでの生活にも適しています。
ただし、孤独を苦手とするため、長時間の留守番や孤立した環境はストレスを引き起こす可能性があります。
バーミーズの毛色・模様

基本的に単色が多い
バーミーズの毛色は基本的に単色で、根元から先端まで均一に色づいています。被毛は触れるとシルクのように柔らかく、わずかな光の反射でも美しく輝きます。
チョコレートやセーブルなどの茶色系を基本に、ブルーやシャンパンなどの毛色もありますが、とくに人気の毛色はセーブルです。
模様はほとんどない
子猫では、稀に成長過程で薄い縞模様が見られることがありますが、成猫になるにつれて消えることがほとんどです。
バーミーズの顔・体型

全体的に丸みを帯びている
バーミーズの顔は、全体的に丸みを帯びています。とくに以下の特徴が際立っています。
頭 | 丸い形状で、顎から頭頂部にかけて滑らかなカーブがある |
目 | 大きくて丸みがあり、色はゴールドまたはアンバー |
鼻 | 短めで、わずかに丸みのあるストップ(鼻筋のカーブ)がある |
耳 | 中くらいの大きさで、先端がやや丸い |
体型の特徴
バーミーズの体型はコビータイプに分類されます。
コンパクトながらもしなやかで、しっかりした骨格や引き締まった筋肉を持っているため、見た目以上に重量感があります。
バーミーズの飼い方・飼いやすさ

生活環境
安全でストレスがない生活を送るために、バーミーズの飼い方をきちんと把握しましょう。
バーミーズは社交的で飼い主との交流を好む猫種です。そのため、家族の動きや様子が見えるリビングなど、猫が孤独を感じにくい環境が理想的です。
またバーミーズは活発な性格であるため、留守番をしているときにも運動ができるようにキャットウォークやキャットタワーを設置するのもおすすめです。
ブラッシング
バーミーズの短毛は滑らかで光沢があるため、ブラッシングの頻度は週に1~2回程度で十分です。頻繁なブラッシングは必要ありません。春と秋の換毛期は頻度を少し増やしましょう。
食事管理
バーミーズは活発でエネルギー消費量が多い分、食欲が旺盛です。キャットフードに記載の給与量や給与回数は必ず守りましょう。
とくに高齢期は消費エネルギーが減るため、適切な食事量や栄養バランスを維持しないと肥満や糖尿病のリスクが高まります。
遊び
バーミーズは活発で遊び好きな猫種です。動くおもちゃに機敏に反応したり、動くものを追いかける遊びを好むため、レーザーポインターや猫じゃらしがおすすめです。
また、知的な刺激を与えるため問題解決型のおもちゃやトリックの練習も楽しめます。1日15~30分程度の遊ぶ時間を作ることでストレスを減らし、健康的な生活を維持できます。
初心者でも飼いやすい
飼い主への愛情の深さ、学習能力の高さ、お手入れのしやすさなどを考慮すると、バーミーズは初心者でも飼いやすい猫種といえます。
ただし、飼い主への依存心が強い子もいるため、長時間の留守番には向きません。頻繁に家を空ける場合は注意が必要です。
バーミーズのかかりやすい病気
猫種に限らず、猫は猫下部尿路疾患や肥大型心筋症、歯周病にかかりやすい傾向にあります。ここでは、これらの病気以外でバーミーズのかかりやすい病気をご紹介します。
糖尿病
バーミーズは食欲旺盛であるため肥満になりやすいこと、またホルモン調節に関連する遺伝的要因により、糖尿病の発症が高い傾向にあります。
急に水を飲む量が増えたり、おしっこの量が増えた場合は注意が必要です。
低カリウム血症
低カリウム血症とは、血中のカリウムの濃度が低下し、筋肉が正常に収縮しなくなる病気です。
低カリウム血症の症状は、主に食欲不振や筋力低下、首が下がる(首垂れ)、歩行困難などがあらわれますが、バーミーズの場合の最も特徴的な症状は骨格筋の衰弱で、全身にあらわれる場合もあれば、頸部や胸部の四肢帯の筋肉に限定される場合もあります。
バーミーズの場合、低カリウム血症の原因は、単一遺伝子座の常染色体劣性形質であると考えられています。
参考:First WNK4-Hypokalemia Animal Model Identified by Genome-Wide Association in Burmese Cats
緑内障
緑内障とは、眼圧の上昇や眼内液の排出異常によって視神経が損傷し、視力低下や失明を引き起こす疾患です。猫では初期症状が分かりにくいため、早期診断と治療が重要です。
オーストラリアの研究チームが、緑内障を発症したバーミーズを調査したところ、バーミーズの緑内障の発症は原発性であったことが分かりました。なんらかの遺伝的な要因が関係しているのではないかと推測されています。
参考:Primary glaucoma in Burmese cats
バーミーズの価格
バーミーズは日本での知名度が低く、専門のブリーダーも少ないため入手は難しいです。また国内での飼育頭数が少ないことから、健康管理や繁殖に関する情報も限られているため十分な準備と知識が必要です。
個体の血統や健康状態、年齢、性別、毛色、性格によって変動がありますが、価格は15~30万円とされています。
まとめ
- イギリスに輸入され繁殖が進んだ結果に誕生したのがヨーロピアンバーミーズ
- 社交的で愛情深く、活発である一方、穏やかさも持ち合わせている
- 毛色はほとんど単色で、模様はほとんどない
- 生活環境やお手入れの楽さを考慮すると、初心者でも飼いやすい猫種