猫疥癬症とは
猫疥癬虫(ネコショウセンコウヒゼンダニ)による人獣共通感染症
疥癬(かいせん)は無気門亜目ヒゼンダニ科のダニが寄生することで発症する皮膚感染症です。
ヒゼンダニは宿主の特異性が高いため、猫に寄生しているヒゼンダニは主に「ネコショウセンコウヒゼンダニ(猫疥癬虫)」という種類になりますが、犬や人と接触して感染した場合、イヌセンコウヒゼンダニやヒトヒゼンダニが寄生する場合もあります。
反対に、ネコショウセンコウヒゼンダニは人にもうつるため、人獣共通感染症(動物由来感染症:Zoonosis)の一つとして注意喚起されています。
耳ヒゼンダニ症(耳疥癬)はミミヒゼンダニによる耳に限定した疥癬になるため、上記とは少し別の扱いとなります。
猫疥癬の感染経路
猫疥癬は、猫のフケや糞、被毛などに混入する病原虫によって他の猫に感染するため、他の猫と多く接触する屋外猫や野良猫はヒゼンダニに寄生しやすくなります。
また免疫力の弱った猫にも感染しやすいので、子猫や老猫、猫白血病や猫エイズなどで免疫不全の猫は特に注意が必要です。
ネコショウセンコウヒゼンダニが猫に寄生してしまった場合、猫の皮膚で増殖を繰り返すため、自然治癒することはありません。このため動物病院で適切な検査と治療を受けましょう。
猫疥癬の症状
猫疥癬に感染した猫に現れる症状
- 全身に激しいかゆみ
- 紅疹
- 出血・化膿
- フケが出る
- 異臭
- 痂皮(かさぶた)
- 頭を振る
- 頭や全身を床や壁にこすりつける
疥癬は非常に強いかゆみ症状が特徴で、頭部や前足、胴周囲、胸部など全身に症状が現れます。
耳のみに症状が現れる場合、ミミヒゼンダニによる耳疥癬の可能性もあるため、動物病院で確認してもらいましょう。
猫疥癬に感染した人に現れる症状
- 紅疹(赤く小さな斑点のような発疹)
- かゆみ(掻痒感)
- 出血・化膿
- 痂皮(かさぶた)
ネコショウセンコウヒゼンダニは、猫の皮膚でしか長く生きられないので、人に寄生しても3週間ほどで回復に向かいます。
ただ免疫力・抵抗力が低い人の場合は炎症が重症化する場合もあり、自然治癒するとは限りませんので、皮膚科の受診をおすすめします。
猫の疥癬の治療方法
イベルメクチンやセラメクチンなどの抗疥癬薬
猫疥癬の治療には、抗疥癬薬・寄生虫駆除剤による投薬を行います。
猫疥癬の治療には、イベルメクチンやセラメクチン(レボリューション)などの疥癬虫薬がよく利用されます。市販でも購入できますが、寄生虫の駆除剤は薬物によっては中毒用副作用があるため注意が必要です。獣医師の指導の下、使用方法や用量を守って使用してください。
また、治療中は掻傷を防止するために回復まで一定期間、エリザベスカラーの装着を行う場合もあります。
猫の疥癬の予防方法
疥癬に感染した動物との接触を避ける
疥癬は、感染した動物のフケや被毛などから感染するので、できる予防策としては以下の方法があります。
- 完全室内飼育
- 野良猫との接触は避ける(飼い主さんも)
- 多頭飼いの場合は新人猫が疥癬に感染していないか検査する
- 多頭飼いの場合は疥癬感染猫と非感染猫のブラシを共有しない
飼い猫を完全室内飼いにするのが最も予防策として有効です。
抜けがちなのが飼い主さん自身の対策です。外で野良猫や地域猫と触れ合った時に、ネコショウセンコウヒゼンダニが付着し、帰宅後に愛猫に感染させる可能性があります。接触があった日は帰宅後すぐに服を着替えて選択する、シャワーを浴びるなど行うことで、飼い主・飼い猫の感染どちらも防ぐことができます。
まとめ
- 猫疥癬は激しいかゆみを伴う人獣共通感染症
- 感染動物のフケや被毛などから感染する
- 猫の場合は自然治癒はしない
- 感染動物との接触を避ける事が一番の予防