猫のゴロゴロ音が人にもたらす効果
猫と暮らしているとさまざまな場面で遭遇するゴロゴロ音。子猫からシニア猫まで、年齢や性別を問わずにみられます。ゴロゴロ音を聞くとなんだか癒される…という方も多いのではないでしょうか。
ゴロゴロと喉を鳴らす仕組みについては現代においても科学的に解明されていませんが、喉頭の筋肉が収縮して声帯が震えることで発生しているといわれています。
猫は自分の体や気持ちによって、さまざまなタイミングでゴロゴロ音を出します。実は、人がそのゴロゴロ音を聞く、または触るだけであらゆる良い効果があるんです。
この記事では猫がゴロゴロと喉を鳴らす理由と、人にもたらす効果についてご紹介します。
猫がゴロゴロと喉を鳴らす理由
親子間のコミュニケーションツール
猫がゴロゴロと喉を鳴らすのは、気持ちよさそうに眠っているときや撫でたりブラッシングをしているとき、ごはんを食べているときなどリラックスの他に、お腹すいた、遊んでほしいなど甘えたい気持ちを伝えている場合もあります。
猫のゴロゴロ音は、もともとは母猫と子猫の重要なコミュニケーションツールです。
生まれたての子猫は嗅覚や視覚が発達していないので、母猫は子猫に近づくときにゴロゴロ音でコミュニケーションをとり、子猫は母猫に「自分は元気だよ」ということをゴロゴロ音で伝えています。
もともとはケガの治癒のため
ニューヨーク州立大学生物医学のクリントン・ルービン博士の研究によると、もともと肉食動物である猫は、野生での主な行動が単独であったため、ケガをしたときに外敵から攻撃をされる前になるべく早く自力で治す必要がありました。喉をゴロゴロ鳴らすことで骨と筋肉を振動させ、体を温め、血流を良くし、内臓機能を高め、骨密度を高める方法を身に付けました。
これほどまでの高い治癒力は、他の動物よりも約3倍といわれています。
猫のゴロゴロ音が人にもたらす効果
ストレス緩和や免疫力アップ
ゴロゴロ音の周波数は25Hzという低周波です。
自律神経において交感神経が優位のときは活動的に、副交感神経が優位のときは落ち着いた気持ちになりますが、20~25Hzの低周波は交感神経を抑制して副交感神経を優位にさせ、同時にリラックスや癒し効果のあるセロトニンが分泌されます。
また不安やストレスをやわらげる効果があるので、自然治癒力を高めたり、免疫力の向上が期待できます。これらは耳で聞くだけでも効果がありますが、触るとより効果が高くなるといわれています。
さまざまな神経伝達物質による幸福感
人は物事に対して「かわいい」「美しい」「癒される」というポジティブな感情が芽生えたときにオキシトシンが分泌されます。オキシトシンはペプチドホルモンの一種で幸せホルモンや愛情ホルモンともよばれ、それと同時に、気持ちを落ち着かせるセロトニンや、幸福感や快感をもたらすドーパミンなどの神経伝達物質も分泌されます。このとき、ストレスホルモンであるコルチゾールが減少します。
猫との生活においては、猫が元気で生活していること、猫を触ってぬくもりや柔らかさを感じること、猫とコミュニケーションをとること、アイコンタクトをとること、名前を呼んだら返事をしてくれることなどが挙げられるでしょう。
人の骨を強化する
猫はゴロゴロと喉を鳴らすことで、自身のケガを治癒することができると前述でご紹介しました。実は、人の骨も強化する効果があるといわれています。
人の医学界では猫のゴロゴロ音による高い治癒力に着目し、ゴロゴロ音の周波数にヒントを得て医療器が開発されました。「超音波骨折治療法」とよばれ、サッカーのベッカム選手が骨折の治療に使用し、驚異的な回復を見せたといわれています。
また、骨粗しょう症となって「骨密度が減少するリスクが高い人」を対象に行った調査で、猫のゴロゴロ音と同じ振動を与えたグループと与えてないグループの骨密度を測定したところ、与えたグループの骨密度が改善されたということが分かりました。
人の脳を活性化する
猫は何を考えているのか分からなかったり、触られるのを嫌がったり、かと思えば急に甘えん坊になったり…。「気まぐれ」「ツンデレ」という言葉がぴったりの動物ですよね。
実は、猫のこの気まぐれな行動が人の脳を活性化させる効果があるといわれています。猫の気まぐれな行動を見て「なぜそのような行動をするのか理解したい」という思考が生まれることで、人の感情や行動をコントロールする前頭前野が活性化されます。
これは、猫が言うことを聞かなかったりイタズラをしたり、いい意味で期待を裏切る行動をしたときの方が、より活性化されるといわれています。
ASMR効果
近年若い人を中心に流行しているASMR動画。正式名称は「Autonomous Sensory Meridian Response」、日本語訳で「自立感覚絶頂反応」となります。咀嚼音や効果音、自然音に分類され、聴覚や視覚への刺激によってリラックス効果やストレス解消などの効果があります。
猫のゴロゴロ音は自然音の鳥のさえずりや川のせせらぎなどと同様、聞くだけで癒される効果があるため、ASMRの自然音に分類されるのではないかともいわれています。
ゴロゴロ音は病気の可能性も
猫がゴロゴロと喉を鳴らすのはリラックスしているときだけでなく、体の不調や病気のサイン、そして死期が近いときの可能性もあります。ゴロゴロと喉を鳴らすことで自分の気持ちを落ち着かせようとしたり、体の不調や病気による痛みや苦痛を和らげようとしています。
普段より表情が強張っていたり元気がなかったりなどの様子がみられたら、すぐに病院で診てもらいましょう。
まとめ
- 猫は他の動物よりも高い治癒力を持つ
- 猫のゴロゴロ音は、リラックスだけでなく体の不調を伝えたいときにも発する
- 人のストレス緩和や骨の強化、脳の活性化などの効果がある